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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その7 前回とは違う新しい出来事

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レベル144-2 悪い人ではなさそうな気がしてきました

「まあ、こんなもんだろ」

 トオルとしてはこれ以上教える事はない。

 伝えなければならない事は全て伝えたはずだし、それ以外の事態が発生してもどうにもならない。

 妖ネズミを相手にする場合の対処方法はこれでほぼ全てであった。



 最初の期限である六ヶ月が過ぎようとしていた。

 兵士見習い達もやり方に慣れ、成果を確実に上げられるようになっていた。

 あとは日々の活動をこなしてレベルを上げ、出て来る問題点についてはその都度改善をしていくしかない。

 何か合った場合の参考にと、トオル達のやり方を綴った覚え書きを用意した。

 それを最後に渡す事にする。

 また、穴の作り方や柵の設置の仕方などをもう一度復習をしておく。

 そう何度もやる事ではないので、うろ覚えにしかなってない。

 最後の何週間かはそればかりをやる事となった。

 それで仕上げとした。



「ご苦労様です」

 出来る事は全部した、教えられる事も全部伝えた。

 それを監督であるご婦人に伝えた際の返事である。

「おかげさまで助かります」

 丁寧な言い方と態度に、何とも言えない安心感をおぼえる。

 今まで見てきた貴族女性というと、以前の奥方しか知らなかったから余計であろうか。

 落差の激しさに何度も驚いてしまう。

「おそれいります」

 こういった時にどう言って良いか分からず、そんな一言しか返せない。

「こちらも色々と任せてもらって助かりました。

 おかげで予定をちゃんと消化できました」

「あら、そうなの」

 少しばかりご婦人は驚いたようだった。

「何もしないでいても良いのかしらと思ってたのだけど。

 手伝いもしないで本当に良かったのかしら」

「いえ、お気遣いなく。

 言っては何ですが、素人があれこれ言ってくると邪魔にしかならないので」

 はっきりと言い過ぎとは思ったが、他にどう言ってよいのか分からない。

 やむなく本音を包み隠さず伝えた。

「まあ」

 これもやはり驚いたようだった。

 だが、不快感は無いようでもある。

「では、何もしないで正解だったのですね」

「大変申し訳ありませんが、その通りです」

 事実なので他に言いようもない。

「やり方についてあれこれ言われるとどうしようもないですから。

 そういった事についてはこちらに任せてもらえて助かりました」

「あらあら。

 知らないから何も言えなかっただけよ」

「それが一番です」

「でもね、あなたが私たちの子を危険な目にあわせるなら、どうしようと心配だったのよ」

 それは監督として、引率する者として当然の心配だろう。

「それについては可能な限り配慮はします。

 心配して当然でしょうし」

「でも、あなたはそこも気を遣ってくれてたんでしょ」

「ええ、まあ。

 モンスターを相手にするから当然です」

「なら、私が言わないでも大丈夫だったわね。

 ちゃんとやってくれてたのでしょうから」

「恐れ入ります」

 実際どれほど出来ていたかは分からない。

 だが、ここまで来たのだから上手くやれたと思いたかった。

「こちらも差し入れてくれるお菓子のおかげで大分助かりました。

 うちの連中にも、あれを楽しみにしてた連中がいますし」

「喜んでくれてるようで嬉しいわ。

 あれくらいしか出来なかったし」

「いえ、あれが大事なんです。

 失礼な事でありますが、ああいう形で介入してくるなら願ったりかなったりです」

 娯楽や楽しみの少ない世界である。

 ちょっとした楽しみがあるだけでもありがたい。

「それが士気にもつながりますから」

「あら、だったら今度から頑張ってみようかしら」

「お帰りになったら是非にも。

 正直に言えば、こちらに留まっていただけないかと思うくらいです」

「では、料理人として迎え入れてもらいましょうか」

「あ、いや、そういうつもりでは。

 実にありがたい話ですが」

 まさか貴族のご婦人にそんな事をさせる訳にはいかない。

「でもね、喜んでくれるなら遠慮せずにやりたいわ。

 お手伝いできる事があればしてきなさいと言われてもいたから」

「お心遣い、ありがたいです」

 ご婦人も出来た人であると思えるが、送り出した方もちゃんと分かっているようだった。

「いいのよ。

 ご厄介になるのだから、出過ぎた事はしないようにと言われてもいたし」

 本当に出来た方々のようだった。



「本当にその通りならありがたいな」

 トモノリはまだ慎重だった。

 決して警戒だけというわけではないようだったが。

 トオルもそれは同じである。

「帰って行くのが残念に思えますよ」

「ああいう人間はもういないかもしれんな」

「つかまえておきたくなりますね。

 役に立つかどうかは別として」

「冒険者らしい意見だな」

 実力がないとやっていけない世界である。

 それゆえに、どうしても才能・能力優先でものを見がちなのが冒険者だ。

 トオルはそれらにこだわりはないが、それでも地位や名誉などより何が出来るかを優先してはいる。

 役に立つかどうかというのがそのあらわれであろう。

 何の技術もない者をかまわず一団に引き込んではいるが。

 それも先々を見込んでの事ではあった。

 今できるか、今後出来るようになるかという違いだけではある。

 今までそういう事はしてないが、役に立たないと判断すれば切り捨てるつもりではいる。

 折に触れてそう言っているので、一団や近くにいる者はそれをよく知っている。

「だが、そんな君が言うのだから貴重な人材なんだろうな」

「あくまで感想に過ぎませんよ。

 ただ、得難い人材かもしれません。

 出身の家も含めて」

 本当にそう言い含めていたかは分からないが、ご婦人の言う通りであれば分をわきまえてるのは伺える。

「よしみを結んでも良いとは思います」

「考えておこう。

 しかし、それが演技であるかもしれんと疑わねばならんがな」

 権勢を持ってる者達同士、腹の探り合いになってしまうのだろう。

「慎重で良いことだと思います」

 慰めにもならないが、そう言うしかなかった。

 続きを明日の17:00に投稿予定

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