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元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。  作者: ルド
第2章:自重知らずの決闘と復活の魔王と勇者。
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風紀委員会の愚痴には問題児が関わっている。

タイトル通り風紀委員の話です。

本編からちょっと外れてますが、問題ありません。

「いいか? もうやるんじゃないぞ?」


「ああ! もちろんだ! 分かってるさ、友よ!」


「ああ! 分かってない! 全然分かってないなこの野郎っ!」


「ふ、副委員長! 落ち着いてぇ……!」


 反省文を書き終えて無事に風紀委員会室を後にする笑顔な時一。その際ちょっとした揉め事が起きそうになるが、良心的な者たちによってどうにか回避された。でなければとっくに血の雨が降っている。松井を除く風紀委員達は何事もなく済んで、ほっと胸を撫で下ろしていた。


「まったくあのクズめぇ……!」


 イライラしても手際よく作業するのはやはり几帳面な性格だからだろう。

 去っていた時一に対してブツブツ文句を言いながら、残っている書類関係の仕事をこなしていく。別に会社員とかではないので、大体が確認のサインやちょっと記載ものだが、松井は眼鏡をクイと動かし、しっかりと読んだ上でサインをしていた。


 最も読みたくないのは、破りたくなるほど嫌であったが。


「あの野郎めぇ……! なんだこの反省文は?」


 本当に反省しているのかと言いたくなる内容。思わず紙にシワシワになるほど掴んでしまったが、そこはやはり優等生である。貴重な紙だと完全に破れてしまう前にどうにか堪えて、眉間に皺を寄せプルプル震える手で、ゆっくりとサインを……


「ふ、不本意ィィィィィ……!」


 書きました。血反吐が出そうなくらい不承不承であったが。


「はぁぁぁぁぁぁ……」


 胃に穴が開きそうな気持ちで、なんとかサインを終えた。もう二度と書きたくないと切実に思ったが、多分また書くのだろうと薄っすら想像した。


「アイツも真面目にやってればモテると思うんだがな……」


 同期が用意してくれたお茶を有り難く頂戴して、ムカムカしている胃を潤す。何故か女子を不快にさせる行動ばかりする時一を思い浮かべて、その行動に対して心底不思議そうに首を傾げた。


「運動能力は高いし、勉学も意外と良い。遅刻癖は酷いものだが、それ以外は割と良い。女子受けは最悪な方向だが、男子に対しては中々のフレンドリーな性格。一部の女子からは友達としてなら良いと言われてるそうだが、あの救いようのない変態癖がなぁ……」


 なんとも残念なプロフィールだろうか。アレであの幸村と同じサポート部のメンバーとは思えない。……濃いメンツが多いから合っている気もするが。 


「固定チームを作ってないから能力成績は平凡なものだが、フォローが非常に上手く何度かトップメンバーからスカウト受けてるようだが、幸村と同じで一度も受けて入れていない」


 変態だけど何処か謎の多い男だと松井はお茶を飲みながらふと思った。


「そういえば、今日も幸村たちが騒いだようだが、アイツらも懲りないな」


 アイツらとは幸村ではなく同じ2年の連中。つまりAクラス筆頭としたプライドの塊連中だ。

 幸村たちが『四獣戦』で何をしたか、遭遇してない為に松井も正直半信半疑であったが、事情がなんであれ横取りはさすがに不味いと初めは思っていた。

 自分も鷹宮の乱入の所為で冷静さを欠いてしまった身だ。モンスター討伐に意識を集中出来なかったらそのまま衝突していたかもしれない。完全に横取りされてしまったら抗議の一つや二つしても不思議ではなかった。


 しかし、それは幸村たちが姑息な手で手柄を掠め取った場合だ。力のない奴がコソコソとハイエナのようにこちらが弱らせた敵を捕食して来た場合であるが、幸村の後輩と言う小森麻衣はいきなり飛びかかったそうだ。


 姿こそ真っ白な龍だったが、それが彼女の能力なのは何度か行われた授業の練習の際に知られていた。


 だからとは言わないが、少なくとも松井は姑息だとは思わなかった。寧ろ正面から四獣に突撃するその気合いに感心したくらいだ。


 そして、何度も見た試合で確信した。

 他の一年や幸村は分からないが、彼女は間違いなく自分たちより上であると。


「このまま続ければ明らかになってしまうぞ? 2年のトップたちじゃアイツらのチームに勝てないと」


 出来れば穏便に終わってほしいが、最初に行われた話し合いの際に思いっきり小森が上級生たちに喧嘩を売ったそうだ。内容までは知らないが、Aクラスだけでなく他のクラスも憤慨して試合手続きを申し込みに行くレベルのようだ。アイツらとしては口先だけの後輩に上級生の恐ろしさを分からせようとしただけだろうが……。


 怒らせていたのは後輩の方だったらしい。


 試合が始まってしばらくするが、大半が戦意喪失してお葬式みたいな雰囲気で学園に来ていた。試合を知らなかったクラスメイトが一瞬、ギョッとして何度も尋ねたが、殆どの人間が口を閉ざして、ある者は突然泣き出してまたある者は口を押さえてトイレに駆け込み……とても詳しく聞けるような精神状態には見えなかった。


 好奇心から試合を見学した者もいたそうだが、その者たちも口を閉ざしており知っている者は極少数に留められていた。


「余程短気な性格らしい。ストッパー役の幸村も大変だろうな」


 いったいどれほどの恐怖を植え付けられたのか、幸村が止めたのか、しばらくしてそういった者たちも減っていたが、最初に突撃して撃墜されたチームは今も心を深い傷を負っていた。


 そうして何度も惨敗されていく、いくつもの上級生チーム。四クラスが抗議した為、チームもまぁまぁいるそうだが、負けが続いている所為で周囲からの評価はあまり良くない。


 1年相手に上級生が揃いも揃って大人気ないや情けないとかは普通である。問題は何度も惨敗しているのに何度も遠慮なく挑んでいることだ。しかも毎日、休ませないように絶えず投入しているが、側から見れば何てしょうもない連中だろうか、と聞いて呆れてしまった同年代や下級生、さらには3年からも小馬鹿にするような声が聞こえ始めていた。


 これには同じ2年の自分も恥ずかしく感じてくる。

 本来ならもう止めるべきなのだ。重い腰を上げた教員側が動く前にすぐにでも。


 だが、下級生相手に負けが続いてしまい、もう引くに引けない。2年で一番プライドが高いAクラスが関わっている所為で他のクラスも退き難くなっていた。


「本当に同情するよ、彼には」


 どうせ自分には関係ない。主に生徒会やこちらでは委員長しか務めていない。一休みを終えると再び書類にサインを書き始めた。






 プルプルプルプル! プルプルプルプル!


「……出ないな」


 調べ物のついでに反省文を書き終えた時一は、ある人物に連絡を取るが通じない。


『お掛けになった電話は現在、電波の届かない時空の果てにあるか、電源が入っていないため掛かりません』


「……本当に時空の果てにでもいるのか? これホントに使えんのか? マジで?」


 通じない携帯を睨みながらため息を溢す。どうせ大した情報もないので報告してもしょうがないが。


「ていうか作った本人にも繋がらないし、どうしろってんだ」


 またため息を吐いて頭をかいて悩む。覗きは八割以上趣味であるが、頼まれていた件でもある。何の確証もなく女子に絞ってる時点でアレであるが。


「アレを宿してる奴は必ずいる筈だが……アイツらは自重を知らんのか?」


 冗談抜きで本気で探さないといけない。

 何故ならそれが彼がこの世界に来た理由なのだ。



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