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元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。  作者: ルド
第2章:自重知らずの決闘と復活の魔王と勇者。
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世界の外側は常に荒れていた。

遅れながら再開です。

不定期となりますが。

 そこはまるで宇宙のトンネル。

 有りとあらゆる世界へ繋がる『時空の境界トンネル』。



 本来であれば人が利用することなどない。異次元の空間である筈が……。


(れい)さん! そっちです! そっちに行きました!」


『――ッ!』


「ああ、見つけたッ! 逃すかよ!」


『ッ!?』


 そんな時空のトンネルで逃げ惑うソレを追う2人の人間。

 1人はスーツ系の学生服姿をして、もう1人は黒いジャケット姿のジーンズタイプ。


 敬語で話している学生服の男子の声に反応したジャケット姿の零と呼ばれる男性がソレを視界に捉える。


『ッ』


「いちいち、逃げてんじゃねぇよ!」


 時空の壁に接触しないように空間を蹴って、逃げようとするソレを追撃。

『黒色に帯びた脚』でその頭部らしき部分を蹴り飛ばした。頭部を破壊する勢いで。


「……やはり硬いか」


『ッッ!』


 しかし、普通の金属よりも強度があるソイツは、ギシギシと音を立てて振り返る。

 機械仕掛けな背中に搭載されている『魔力ミサイル』を起動。

 全弾を零と名乗る男性に照準をロック。


 一斉射したのは、その直後。

 蹴り飛ばして宙に浮いていた彼に向かって、火を噴いたミサイルが全弾迫ろうとしていた。


「させるか!」


 迫って来るミサイルに対して、零は黒槍を構っていた。

 高速で全方位に振り回すと迫るミサイルを全て叩き壊す。瞬間、一斉に爆発を起こして彼を飲み込んだが、それを見ていた学生服の男子は止まらず。


「ハァァァァァァッ!」


 燃え上がる巨大な拳でその巨体の頭部を上からブン殴った。

 全身が金属っぽいのソレは衝撃で全身をギシギシと軋ませる。感知出来てない訳ではなかったが、零に集中し過ぎて反応が遅れてしまった。


「まだだ!」


 さらに繰り出される巨大な炎拳。自分の体よりも大きい拳であるが、学生は勢いに乗って左右の拳で何度も敵の巨体を殴り続ける。時空のトンネル壁へ押し込もうとするが。


『ッ!』


 普通ならヒビどころか崩壊してもおかしくない。現に衝撃音も大きく鉄の塊であろうが、潰れてもおかしくなかったが……。


『ッ!』


「っ――」

 

 力を一杯振りかぶったソイツの頭突きを受ける。

 巨大な炎拳を除けるかのように彼を押し返した。


『ッ!』


 すかさずソイツは口から破壊の魔力を集束。

 吹き飛ばした相手に狙いを定めると相手が体勢を整える前に一気に放つ。


「まず――ッ!?」


 視界が一瞬で赤黒い光に埋め尽くされる。咄嗟に射程外に逃れようとしたが、飛ばされた反動が大きく間に合わっ―――



「【黒夜(コクヤ)】!」



 真っ黒なカーテンが赤黒い光から彼を守った。とんでもなく規格外な威力に見えたが、真っ黒なカーテンは一切寄せ付けず、カーテンの越しにいる彼を守り抜いた。


「油断するな(じん)!」


 カーテンが消滅すると中心から無傷の零が姿を現す。

 鋭い目つきで刃を注意しつつ構えていた槍をソイツに向かって砲弾のように投げた。


『ッ!』


 警戒していたソイツは歪な機械の左盾を浮かばせてガードに使う。それ自体が意思を持つかのように動くと砲弾のように飛来した黒槍を受けて弾いた。


「ッ……オレの異能も弾くか!」


『ッ!』


 いとも簡単に弾かれたのを見て、舌打ちした零が黒剣を構えて接近を試みようとする。

 しかし、接近を許さないソイツは背中の発射腔から迎撃ミサイルを発射。


「甘いわ!」


 だが、同じ戦法を二度もくらうつもりはない零も対応が早い。

 今度は能力で無闇に弾こうとはせず、避けれる物は高速で避けて自身が発生させた衝撃波でミサイルの軌道を横に逸らした。





 ―――までは良かった。



「ッ! マジかよ!?」


「れ、零さん!」


「――来るなッ!」


 焦った刃の声が聞こえたが、零の方はそれどころではない。なんとか駆け寄ろうとしている気配がしたので咄嗟に叫んだ。


「最悪だ……!」


 何せ逸らして避けたミサイルが時空の壁を破壊。

 不運なことに何処かに繋がる入口か何かだったのか、宇宙の外へ放り込むかのような強烈な引力が近くにいた零を襲う。

 逃れようとする零だが、強烈な引力が彼の行動を封じてしまい留まること許さず、徐々に穴が空いた渦の中心へ引き寄せていく。


『ッ!』


「あ、待て!」


 それを狙っていたか不明だが、一番離れていたソイツは一目散に逃げる。……いや、目的地である『とある世界』に繋がる入り口に向かって一直線に飛んでいるだけだ。


「まずい! どうすれば……!」


 すぐにでも追いたい刃だが、飲まれそうになっている零を放置など出来る筈もない。


「ッ……こうなったら……!」


「――待て、刃!」


 しかし、このまま逃す訳にはいかない。場所が場所なので危険だし温存したかった奥の手を使用しようとした刹那、引力に抵抗していた零が止めるように叫んだ。


「それは入る時と帰る時まで使うなと言った筈だ! 今使ったら帰れなくなるぞ!」


「し、しかし……!」


「オレのことは気にするなっ! 自力でなんとかする! だから……!」


 直後、渦の吸い込みが増した。

 一気に引き寄せられる零は最後の力を振り絞って叫んだ。



「大地を! 大地を守れッ! アイツらの魔力はお前にしか対処出来なっ―――がぁぁぁぁ!?」


「零さん!? 零さぁぁぁぁぁぁぁんッ!!」



 刃も必死に手を伸ばすが届く筈もない。

 抵抗も虚しく異能使いである(いずみ)(れい)は、何処とも分からない時空の外へ吸い込まれてしまった。


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