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エピローグ

「わあ、綺麗」



 比奈が舞い散る花びらを眺めながら呟く。


 四月の初め。始業式まで数日あるが、便宜上は既に高校三年生だ。

 花びらがひらひらと舞う桜並木を比奈と二人で歩いていた。



「桜を見ると、新しい一年が始まるって感じだよね」


「そうだな。入学式とかに桜に囲まれてるとそんな感じがする」



 学生にとって桜咲く季節は環境の入れ替わる時期だ。三月が別れの季節なら、四月は出会いの季節だろう。



「入学式かあ……。私達にとってはその逆だもんね」


「ああ、気が付けばもう最上学年だ」



 およそ一年後には真逆の卒業式が待っている。時の流れは早い。



「私、高校三年生って結構な節目だと思うんだ。ここで選んだ大学や大学の学科によってその人の将来も変わるだろうし、中にはそのまま就職する人だって出てくるかもしれないし」


「確かに人生の大きな分岐点のようなものか」



 勿論、彼女も俺の友人達も含まれている。……俺だってその例外じゃない。



「この一年間は大事な時期だし、嫌でも変化は訪れるんだよな。ああ、二年生の時のように気楽に日々を過ごしていたい」


「あはは……。でも変化が訪れるのは悪いことばっかじゃないよ。それに変わらないことだってあるよ。わ、私達の関係……とか……」



 言ってて恥ずかしくなったんだろう。比奈は顔を横に逸らす。顔を隠しても耳が赤いからバレバレだ。



「……そうだな。きっと変わらないよ、俺達は。というか、変えたくない」



 彼女と繋いだ手をさらにぎゅっと握る。



「私もカズ君と同意見だよ。こうして二人で同じ道を歩んでいきたいね」


「ああ、二人でどこまでも」



 俺と比奈。その繋いだ手の平以上に強く結ばれて。

 二人並んで同じ道を、同じ速度で歩いていく。

 ずっと、こうであればいいなと思う。







 ――例え、その道の先に大きな壁が立ち塞がっていたとしても。





【二年生編・完】




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