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第五十二話:放課後の告白と秘密の場所

放課後、学校の裏門近くにある、人目につかない場所。そこは、山本嘉位やまもと かい蓬田香織よもぎだ かおりにとって、二人だけの秘密の場所になりつつあった。香織は、彼の姿を見つけた瞬間、胸の中にあった不安が溶けていくのを感じた。


「蓬田さん!」


「かい」は香織に気づくと、優しい笑顔で駆け寄ってきた。香織は、彼の元へ駆け寄る。


「ごめんね、待った?」


「う、ううん、私も今来たところ…」


「かい」は、香織の顔を見て、少しだけ安心したような表情になった。そして、周りを警戒するようにキョロキョロとあたりを見回す。ここは、学校の敷地内ではあるけれど、人通りが少ない場所だ。


「ねぇ、蓬田さん。昨日の夜は、本当にごめんね。怖い思いをさせてしまって…」


「かい」は、申し訳なさそうに香織に言った。香織は、彼の優しさに心が温かくなる。


「い、いえ…大丈夫です…」香織は震える声で答えた。大丈夫ではなかったけれど、彼に心配をかけたくなかった。


「大丈夫じゃないよね…ごめん」と「かい」は香織の手を取り、優しく握りしめた。「楓のこと、怖かったでしょう?」


香織は、こくりと頷いた。楓の冷たい視線と言葉は、まだ香織の心に深く突き刺さっている。


「楓は…僕にとって、大切な家族だけど…でも、蓬田さんに対するあの態度は、絶対に許せない。ちゃんと、楓には話すつもりだ」


「かい」は、香織の手を握ったまま、真剣な表情でそう言った。彼の言葉に、香織は少しだけ安心した。彼は、自分のために、妹と向き合ってくれるのだろうか。


「僕の世界は、君にとって、まだ知らないことばかりで、そして、少し怖いものかもしれない。でも、僕が、蓬田さんを一人にはしない。どんなことがあっても、僕が守るから」


「かい」は、香織の瞳を真っ直ぐ見つめた。その瞳には、迷いはなく、ただ香織への強い想いが宿っている。


「だから、怖がらないでほしい。僕の傍にいてほしいんだ。一緒に、この困難を乗り越えてほしい」


彼の言葉は、香織の心の奥深くまで響き渡る。不安は消えない。彼の世界は、香織にとってあまりにも未知数だ。しかし、彼の言葉を聞いていると、どんな困難も乗り越えられるような気がした。


「…はい…」香織は、頷くのが精一杯だった。「…私も、山本君と一緒にいたいです…」


その言葉を聞くと、「かい」は、安堵したように香織を抱きしめた。彼の温かい腕の中で、香織は安心し、そして、彼の傍にいることの幸せを噛み締めた。


「ありがとう、蓬田さん…! 本当にありがとう…!」


「かい」は香織の髪に顔をうずめ、深く息を吸い込んだ。彼の体温が、香織の体を温める。


しばらくの間、二人は何も話さずに、ただ抱きしめ合っていた。放課後の学校の裏門。誰にも見つからない、二人だけの秘密の場所。


やがて、「かい」は香織を抱きしめる腕を緩め、香織の顔にキスをした。それは、優しくて、そして香織の心に響くような、特別なキスだった。


「ねぇ、蓬田さん…もっと、近くに…いてもいいかな…?」


「かい」の声は、どこか誘うような響きがあった。その言葉の意味を、香織は直感的に理解した。もっと近くに。それは、体の距離だけではない。心の距離、そして…


香織は何も言わずに、ただ彼のキスに応えるように、彼の背中にそっと腕を回した。それは、香織なりの、彼への同意の意思表示だった。


「かい」は、香織の意思表示を受け取ると、香織を抱き上げた。香織は、彼の首に腕を回し、しっかりと彼にしがみつく。


彼は香織を抱き上げたまま、裏門のさらに奥にある、木陰に移動した。そこは、人目から完全に隠れることができる場所だった。


「ここでなら…もう少し…二人きりで…」


「かい」の声は、少しだけ掠れていた。彼は、香織を壁に優しくもたれかけさせると、香織の体にさらに近づいた。


二人の体は、木陰で一つになろうとしていた。放課後の学校の裏門。二人の関係は、新しい段階へと進んでいく。そこには、青春の甘さだけでなく、少しだけ危険な、大人の世界の扉が開かれようとしていた。




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