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41コマ目 現最高

「ねぇ。鎌、悪いんだけどその辺にある薬の中でMPが回復できるものがあればとってきて食べさせてくれない?」


近くにいた武器に頼んで、作っていた薬を使用することを決めた。


これらはすべて店主さんに売るためのものであったのだが、こんな状況になってしまえば今更気にしてもあまり意味はないだろう。

解決することが先決だと惜しみなく薬を使用することとした。


「あっ、それは塗り薬じゃなったっけ?確かに食べさせてとは言ったけど、飲み薬以外を食べさせようとしないで!?」


自分の指示にある意味忠実な武器に苦笑しつつ、MPを回復させ安心できるような状態まで持って行く。

1つ2つではどうにもならなかったかもしれないくらいには伊奈野のMPの最大値も消費量も多いわけだが、この工業化を済ませた状態で作成された薬の数を考えると話しは変わってくる。


チリつもとばかりにじわじわとMPの量は回復するような兆しを見せる状態が続き、伊奈野もまだまだ魔導銃を使用し続けて問題がないだろうと思える状態となる。

こうなってしまえば前回とも比べ物にならないほどの量と威力の攻撃が繰り出されることになるわけで、


「どう、かな?」


魔導銃からの反動が消え、発射が終わったことを理解した伊奈野は全身から一度力を抜きその結果を眺める。

そもそもほとんどが吸収されていたため問題はないのだが、土地は大きくえぐられ跡形もなく消し飛んでいる部分も多くある。伊奈野は視ていないため分かっていないが、上位存在さんが攻撃を行なった時にできた物とも比べることはできる程度の被害となっていた。


当然、今まで武器たちがここで試していたどんな組み合わせのどんな攻撃よりも高威力。主として伊奈野を認めた武器たちは、今までも逆らう気はなかったもののここではっきりとした上下関係と言うものを理解することとなった。絶対にこの人間に逆らってはいけないと結果を見て思わされてしまったのである。

しかも武器たちにとって衝撃的だったのは、その伊奈野が持つ魔導銃が特に自壊をしていない部分。さすがにあのような攻撃をすれば武器すらも負荷がかかって壊れてしまいそうなものだが、まだまだいけるとばかりな綺麗な状態を保っているのだ。自分たちにあのような威力は耐えられないと分かっているだけに、武器としての差も伊奈野の切り札ともいえるそれから思い知らされた。

とはいえ、さすがに今回は万全な状態のままと言うわけにもいかず、それなりに伊奈野の称号などの影響もあって通常より威力は底上げされた状態で放つこととなったため、クールダウンのようなものは発生しているわけではあるが。


《スキル『フルバースト』を獲得しました》

《称号『(現)瞬間最高火力』を獲得しました》

《称号『大衆以上の格上』を獲得しました》


ここまでやったのだからスキルや称号も手に入るが、伊奈野はそんなことなど気にもせず意識を別のところへと向ける。

それはもちろん、まだ解決しているとは判断できない問題が残っているからであり、


「えぇ!?今のでまだダメなの!?」


「天使もこれでやれたんだけどなぁ。天使以上の力って何?」


舞い上がった砂やホコリなどが落ち着くと、見えてくるのは伊奈野が破壊しようと試みたはずの何かがまだ浮かんでいた。どうやらまだ今の攻撃でも破壊しきれなったらしい。

今まで様々な物を吸収し、相当な力を得ていたのだということが分かる。


とは言っても、伊奈野の出した攻撃が決して効いていないというわけではない。浮かんでいるそれも今までのように周囲から何かを吸収するといったことはなく、ただ浮かんでいるだけだった。

まるで、何かを待つかのように。


「吸収したからいったん処理中ってことなのかな?もうちょっと近くで見てみようか」


「ちょっと!?ご主人様、危ないよ!?」


黒い本が止めようとするが、伊奈野はかまわずその浮かんでいるものに近づいて行く。

元々は本であったはずのそれであるがいつの間にかその物質としての外見は失われており、不自然な空間の歪みのような球体が浮かんでいるだけ。


伊奈野が覗いてみるとどこまでも引き込まれそうな様子であり、まるで深淵でも覗いているかのようであった。


(深淵を覗く時、また深淵もこちらを…………とかそんなことはさすがにないよね?)


「今何かあげたら吸い込むかな?」


「分かんないけど、やめようよぉ」


それに興味を持った様子の伊奈野と、それを止めようとする黒い本。

こうして伊奈野が邪魔になりそうなものに興味を持つなんて珍しいが、これには当然理由がある。


「黒い本が魔法は吸収できるから、それ以外の物理的な攻撃をこれで吸い込めないかなって思ったんだけど」


「うぅ~ん。できるかもしれないけど、さっきみたいになったら大変だよ?僕じゃどうにもできないからさぁ~」


吸収と言うのは伊奈野にとって大きく武器として使えそうな要素であった。

特に、何かに巻き込まれた時などに流れ弾を受けないようにできるというのは非常に大きな要素だ。

魔法は黒い本が。物理での遠距離攻撃はこの吸収する球体のような何かが。そして近接攻撃は伊奈野の『龍落とし』で、とできれば完璧な布陣が出来上がるわけだ。


『む?もしや、片づけられたのか?』


「あっ、上位存在さん。その質問をするってことは、あんまりこっちの詳しいことは分かってない感じですカ?」


『うむ。実をいうとそうなのじゃ。とはいえ、先ほどまでよりは格段に情報を集めやすくなったんじゃがな?』


吸収がなくなったため、上位存在さんも特に苦労することなく伊奈野達に語りかけることができるようになった。解決できて安心すると同時に、上位存在さんでも苦戦するような存在を物の数秒で解決して見せた伊奈野の手札に興味もわく。

とは言っても将来見ることもあるかもしれないためここで詳しいことを根掘り葉掘り聞き出すなんて無粋なことはせず、原因の方の話を聞くことにした。


『結局、もう問題はなくなったということで良いんじゃあよな?』


「何とも言えませんね。ひとまず収まりましたけど原因らしき球体のようなものは残ってますし、それに結構な被害も出たのでまた買い直しとかしないといけませんし」


『破壊された物はどうにでもなるじゃろ。結局金で解決できるものなんじゃろ?問題はその残っているというもののようじゃな。妾も多少解析を今やっておるが、これを処理できるかは分からないんじゃ。とりあえず、手元で解析をしたいからこちらに送ってほしいのじゃ』


「構いませんけど、こことつなげている裂け目を吸い込んだりしないでしょうか?変なものに触れさせちゃうととんでもないことになりそうで怖いんですけど」


さっきまで何か吸い込ませようとしていたのに何を言っているんだという話ではあるのだが、実際それは怖いところであった。

どうでもいい物を吸収させて暴走してしまったならまだ最悪ここを捨てればいいだけではあるためどうにかできるのだが、もし裂け目の方を吸い込まれてしまう場合は完全にこの空間が断絶することになってしまう。

黒い本がまた上位存在さんの方に行って強化してもらえれば開通をさせることができるかもしれないないが、変なことが起きて戻れなくなってしまうなんてことになれば目も当てられない。


だからこそ伊奈野としてはそこまでの冒険をするつもりはなかったのだが、上位存在さんはそんな気持ちなど知ったことではないとばかりに、


『調べている限り問題はなさそうじゃし、行けるじゃろ。妾の力もさっきまでと違って全く吸収しておらんしな。それより時間が経って元に戻る方が怖いから、早めにこちらに移してしまった方が良いと思うんじゃが』


「え、えぇ~」


難色を見せる伊奈野。

幾ら上位存在さんが大丈夫だとは言っても、さすがにあのような光景を見た後では不安が残る。

このまましばらく悩み続けることになるのかと思われたわけだが、


「良いよぉ。じゃあ、そっちに送るね」


「え?黒い本!?」

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