７コマ目　サーバ対抗戦

前回、メインシナリオの関係で公式主催で行われたイベントはチーム対抗戦だった。

そこで黒チームに所属した伊奈野がいろいろとやらかしたりはしたがそれは一旦おいておき、大事なのはそのチーム対抗戦がメインシナリオで行なわれた理由。

ただチーム戦をするならわざわざメインシナリオで行なう必要などなく、ただ公式主催のイベントとするだけで十分だった。

では、なぜわざわざそんなことをしたのかと言えば、

「外の世界との戦い、ですか？」

「そうなんだよ。私たちはそれに参加する予定でねぇ」

「師匠が参加されるかどうかはともかくとして、私たちは参加するのでとりあえず情報が欲しいんです」

「そこで少し、私たちに情報をいただけないかと考えまして」

「なる、ほど？」

わざわざチーム戦を行わせたのはいくつか理由があるが、その中の１つが次のイベントにつなげるため。

それも今までの中で１番大がかりと言ってもいい、

「サーバ対抗戦か～」

サーバ対抗戦。

各国にあるサーバ同士で争いを行ない、頂点を決めるというイベントになる。確実に国家間の諸々でもめそうな気しかしないが、とりあえず重要なイベントであることは伊奈野も分かる。

ということでさらに話を聞いてみると、なんとなく伊奈野は魔女さん達の言いたいことが理解できてきて、

「とりあえず皆さんはそれの情報が欲しいけど、基本的にぶっつけ本番で大した情報も渡されずに参加させられる可能性が高い」

「はい」

「ただ、私たちに対しては説明が行なわれるから、私の体に入っておいて私の体からその説明を聞きたい、という受け取り方で良いですか？」

「はい。その通りです」

サーバ同士の戦いは、プレイヤーと英雄だけで行なわれる予定となっている。

ただ英雄に対して公式からそのイベントに関する説明はあまりなく、彼らは詳しいことが分かっていない。そのため、説明を欲しているのだ。

プレイヤーが受けることのできる運営からの詳しい説明を。

そんな英雄という部分に関しては別にしても何となく事情を伊奈野は理解したのだが、

「私もそれに関しては情報がないですし何とも言えないので、ちょっと返事は今度来た時で良いですか？」

「もちろんです」

一旦保留にする。彼女自身では判断ができないのだ。

ということで、

「瑠季ちゃん。ちょっと今度のイベントのこと聞いてもいい？」

「ああ。今度のサーバ対抗戦ですの？楽しみですわよね！！」

「え？あっ、私は今日知ったばかりだから何とも言えないんだけど………というか、何も知らないから教えてほしいなって思ってるんだけど」

「あら。そうでしたの？それは勝手に盛り上がってしまい申し訳ありませんでしたわ……ん～。とりあえず今度のイベントの説明としてはなのですが……………」

詳しく知っているだろう、使用人の瑠季へと質問してみた。

伊奈野の予想通り瑠季はいろいろと知っているようで、イベントに関する説明を大まかなものではあるが行なってくれる。

ゲーム的なシナリオの話だとか、注目すべき海外プレイヤーだとか、強いプレイヤーの多い国だとか、色々と話してもらうがなにより伊奈野が興味を惹かれたのが、

「イベントの詳しいルールとかの説明は、今度の土曜日と日曜日にありますの」

「今度の土日か～」

「まあただ、皆さん土曜の公開時間からほとんど張り付いてみることになると思われますわ。情報は早さが肝心ですし」

「……………なるほど？」

説明に関する情報。

どうやら別空間に移されて説明を個別に受けることができるらしいのだが、その説明を受けられるようになる時間が決まっているらしくその時間が混雑すると予想されていた。

（ということは逆に考えれば、その時間以外は空いている可能性が高い！？土日でも空いてるのは良い事だよね）

しかも、伊奈野にとって良いことはそれだけではなく、

「一応メモなどを取れるようにするためにイスとテーブルも用意されているらしいですわ」

「っ！そうなの！？」

「あっ、はい。そ、そうですけど、凄い食いつきですわね……………」

イスとテーブルがある。

それがなぜここまで喜ぶ情報になるのかわかるだろうか？

まあ喜んでいるのが伊奈野であるからわからないはずがないだろう。

そう。勉強できるからということである！

「ありがとう瑠季ちゃん。参考になったよ！！」

「そ、そうですの？まあそれならよかったですけど……………絶対私が重要だと思って渡した情報とは別の情報で喜んでますわよね？いったいお嬢様はどこを目指していらっしゃるのかしら……………」

瑠季は困惑しているが、伊奈野はうれしいからそれでいい。

ただとりあえず瑠季の予想通り、詳しいイベントの内容などには全く面白みを感じていない、ただその説明の会場だけが重要なのであった。

「お嬢様はイベントに出られますの？」

「ううん。出ないよ？」

「え、えぇ？」

「出た方が良いイベントなの？説明だけ聞いたらそれで良いかなって思ったんだけど」

「どういうことですの！？なんで説明だけ聞いて本番には参加しませんの！？意味が分かりませんわ！！」

瑠季は頭を抱える。

伊奈野の考えは、全く理解などできない。