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お財布にやさしい、ぶつぶつ交換

 縁日だったり、何かしらの祭りの時に出店している屋台はぼったくr……とても割高だ。


 学祭の店は生徒や保護者会が出店しているので、比較的安く設定されているとはいえ、やはり縁日価格である。

 総司と真白が手伝ったたこ焼きも六個入り三百円だが、実際の所は原価は百円もしないはずだ。


 人件費やその他の費用を足しても、三百円ならそこそこの利益が出る。他の店も同じような物だ。

 だから、こういう日は財布の中身が減っていくのを気にすることになるのだが、今日だけは違った。


「真白、こんなことして良いのか?」

「問題ない。部長さんに許可は取ったから」


 彼女は答えながら、クレープ屋で二つのクレープを受け取る。ただし、お金は払っていない。


「タダで貰うのも、もう三件目だぞ」

「うん。だからあと二回まで」

「まだ、二回あるのかよ」


 真白が行っていたのは、たこ焼き無料券と引き換えに屋台で売っている物と交換してもらうことだった。


 事前にたこ焼きと交換してもらうとは言っていたが、それもすでに三件目。総司の分と合わせれば、たこ焼き六パック分である。


 しかもまだ残り二回分もあると言うのだ。

 明らかにやりすぎな様にも思えたが、佐枝に許可を貰っていると言う以上、総司に言えることは何もなかった。


「手伝いのバイト代らしいよ」

「なるほど。労働の対価なら遠慮なく貰っておこう」


 納得した総司は彼女から、苺とチョコアイスのクレープを受け取る。

 因みに一個四百円だ。たこ焼きが三百円なので少しお得感があった。


「うまっ!」

「うん、美味しい」


 二人は一口食べ、その美味しさに頬を綻ばせる。


「総司、ちょっと分けて?」

「いいぞ。ほら」

「あむ……」


 総司がクレープを差し出すと、真白が少しかかとを浮かせ背伸びして、かぷりと齧り《かぶり》付く。


「苺も美味しい」


 彼女は咀嚼し終えると、口の端に付いたクリームをぺろりと舐めるから、妙に色っぽく見えた。


 間接キス自体気にはしないのだが、どうしてもソレを見てしまえば、総司は意識せざるを得なくなった。


「総司? こっちも欲しいの?」


 真白がクレープを首を傾げてそう聞いてくる。


「あ、ああ。一口良いか?」

「どうぞ」


 今度は総司が、目の前に出されたクレープに齧り付く。こっちのクレープはバナナとチョコの定番の味だった。


「どっちも美味いな。って、そんなに見つめてどうした?」


 味わって感想を口にしていると、真白はじっとこちらを見ていた。

 それから、自分のクレープと総司の顔に視線を行ったり来たりさせる。


「なんか、えろいね?」

「言うなよ」

「ふふふ、可愛い」


 彼女も同じことを思っていたらしい。

 話題に出さなければ、恥ずかしくなかったのだが。


 彼は微かに頬を朱色の染め、その様子に真白はからかうように笑う。


「可愛いって、お前な……!」

「総司がいつも私に、可愛いって言う時ってこんな感じだったんだ。今度からことあるごとに言ってあげよう」

「悪いことを覚えやがって」


 悪巧みを思いついた子供のようにして、真白は口角を上げ総司を見やれば、彼は苦笑しながらクレープをもぐもぐしていた。

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