ソフィの誕生日パーティー 悪夢のたこパ編
一日平均二食粉もの生活から抜け出した。
総司と真白はそう思っていた。
学祭まで残り八日。スケジュール的に余裕が見えて一旦落ち着き始めた準備だったが、どうしてか二人の目の前には、大量のたこ焼きが並んでいる。
どうしてこうなったのだろうか。
発端は今日の主役ソフィだ。
彼女が誕生日にタコパをしたいと言い出し、周囲がそれに同調したのだ。もちろん、総司と真白は反対したが、くじ引きの結果見事ソフィがタコパの権利を引き当てた。
飛角や晴音たちも、二人がずっと粉ものを食べていたことを知っていたが、大学生の良くない所が出た。
悪ノリと言うやつである。
「誕生日に好きなものが食べられるって幸せよね!」
主犯者はお誕生日席に座り、はしゃいでいる。
たこ焼きを頬張ったり、自らたこ焼きを焼いたりと楽しいそうだ。
彼女もここ数日、粉ものばかり食べていたはずだが飽きることなく、むしろ大いに喜んでいる。
関西人より、粉ものを愛する少女ソフィ。もう二十歳なので、少女ではないが。
そして、彼女のように他のメンバーもたこ焼きを美味しそうに食していたが、総司と真白だけは違った。
「おかしい。これはおかしい」
「たこ焼き……食べなくちゃ……たこ焼き、うふふ⁉」
二人は一口も手を付けていない。
総司はまだ正気を保てているが、真白に至ってはすでに精神崩壊を起こしかけていた。
このままでは、たこ焼きがトラウマになりそうだ。
「しゃーないなぁ。ほな、僕が広島焼き作ったるわ」
総司と真白の方に近づいてきた関西弁の男が、ニカッと笑いながら腕まくりしながら言う。
「お前、喧嘩売ってるのか?」
「馬竜ぅ?」
たこ焼きに限らず、粉ものは食べ飽きたというのにこの煽りようである。
殺意が沸いた二人は彼を睨みつけた。
「はっはっはっ、冗談や、冗談! ウーバーシーツ頼んでるから、そっち食べや」
「明石焼きとか来たら、ここで殺戮が起きるぞ?」
「そんなことになったら、大阪湾に沈めるから。いや、明石海峡大橋から突き落とす」
「もう、鳴門海峡の渦潮に落とそうぜ」
二人して、飛角の始末方法を画策する。
真白はスマホで「死体 完全 処理」で調べているほどだ。
「心配せんでもええがな!? ちゃんと、イカ焼きとか頼んだから」
「それはそれで微妙に腹が立つが、まぁいいか。イカ焼き好きだし」
「イカ焼きなら許す」
タコの反対はイカとでも考えたのだろうか。
それとも縁日の代表的な食べ物としての関連性を見出したのだろうが、粉もの以外なら正直なんでもいい。
粉もの以外なら。
二人はイカ焼きが配達されるのを待った。まさか、アレが届くとも知らずに。
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