表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/28

通学の一コマ

「総司、おはよ。学校に行こう」


 真白が総司の部屋に入ってくる。

 大学に行く日は、こうして彼女が迎えに来てくれるのが日常だ。


「もうそんな時間か。大学爆発されねぇかな」


 今朝の五時過ぎまでゲームをしていた総司は、大学がある方角を向いて不謹慎な事を言い出す。


「朝ごはんにおにぎりを作ってきたから、歩きながら食べる? それとも大学で食べる?」


 彼女はリュックサックからタッパを取り出す。

 昼や夜は総司も作ったりするが、朝は彼がだらしないので基本的には真白が世話をしてくれる。


 彼は真白に感謝しながら、大学までの道すがらに食べて行くことを選び、彼女に世話――ほぼ介護をされて大学へ行く準備を整えて部屋を出た。


「悪いな。おにぎり出してもらっていいか?」

「はい」

「さんきゅな」


 歩いて通学できるほどの距離なので、急がなくていいのはありがたい。

 隣を歩いている真白からおにぎりを貰う。


「美味しい?」

「真白のごはんが不味いわけない」


 一口齧った総司に真白は、彼の顔を覗き込むようにして聞いて来る。

 彼女が作ってくれた料理が不味かったことなど一度もなく、新しい料理を披露してくれる度驚くぐらいだ。


 日本食から洋食、中華辺りの基本はレパートリーにあるらしく、総司が食べたいとと思ったものは何でも作ってくれる。


 今朝はシンプルにおにぎりを作ってきてくれたが、時間がある時は朝にも関わらず、四皿ほど食卓に並ぶこともあって、本当に感謝しかない。


 恋愛において男の胃袋を掴めとはよく言われているが、おそらく自分は彼女には洗脳か支配されていると総司は思っていた。


「総司がそう言ってくれるなら、今度の学祭も心配ない」

「ん? 真白、学祭で何かするのか?」


 二人が通う大学の学祭は十一月の中旬くらいに行われるが、総司と真白が籍を置くクラスでは出し物を行わない。


 厳密には展示物を少し飾るだけで、やることがほとんどないだけだ。それもやる気のある者たちが適当にやって終わりなので、すっかり学祭の事が頭の中から抜けていた。


「私はソフィのダンスサークルを手伝うつもり」

「あーなんかそんなこと言ってたな。で、何やるんだ?」

「ステージでダンスをする方は関係ないけど、粉もの&甘味処的な屋台をするからそっちに少し顔を出すつもり」

「欲張りすぎだろ、ダンスサークル! せめて、粉ものでご飯系にするか、甘味処の甘いもの系に絞れなかったのか」


 粉ものと甘味を取り扱う屋台など見たことがない。

 あって、クレープ屋くらいだろうか。最近のクレープ屋はツナコーンなどのご飯系もラインナップに並んでいることがある。


 その路線なら納得できたが、総司はダンスサークルはえらく節操のない集団だなと苦笑してしまう。


「だいぶ揉めたみたい。粉もの派代表の部長と甘味処派代表の副部長が、ラップでディスり合いしたらしいよ」

「せめてダンスでバトルしろよ…………」

「だから、ソフィが割って入ってダンスバトルにしたけど、結果三日三晩踊ったらしい」

「日本昔話か! 現代日本で三日三晩踊るやついねぇだろ。で、どっちもやるところを見るに、決着が付かなかったんだな」

「ソフィが話を盛ってるだけだと思うけど。結局は途中でお互いに認め合ったみたい」

「まるで昭和の少年誌の漫画だな」

「でも、出来は結構良さそう。試食したけどすごく美味しかった」

「そうか。ま、美味けりゃなんでもいいか」


 学祭の出し物など、食品衛生法を守るのと、不味くなければそれでいいだろう。


 甘いものを求める客と、がっつりの食事を求める客を両取り出来ると思えば、それほど悪くはないかもしれない。


「総司も来る?」

「あそこ、女子ばっかりだろ? 居心地が悪そうだな」


 ダンスサークルは女子の比率が七割と、チアガール部や運動部系の女子サークル以外では最も高い。

 

 女子が苦手ではないが、馴染めるか不安だ。

 と言っても、学祭で出し物を手伝う彼女と過ごせることになるので断るつもりはないが。


「大丈夫。男子が少ないからこそ、手伝ってくれるならありがたがられると思う」

「まぁそれなら」

「ん。ソフィに総司も参加するって伝えて置く」

「参加するとはいえ、俺は何をしたらいいんだ? 荷物運びなら、全然頭使わなくていいんだが」

「それもだけど、総司には私とたこ焼きを作る係をして欲しい」

「たこ焼きだけでいいのか?」

「大丈夫、他の粉ものは実家がお好み焼き屋さんの子がいるから。その子、中心にお好み焼きともんじゃ焼き、広島焼きを作ってもらうらしい」


 屋台のメニューが多彩過ぎることに総司はもう突っ込まない。当日はカオスになりそうだが、与えられた役目を果たすことだけを考えることにした。


「今度練習するか」

「しばらく、晩御飯は粉ものになりそう」

「勘弁してくれ」


 粉ものは好きだが、ずっと続くのは辛すぎる。

 ただ、学祭は彼女と回ることだけと考えていたが、こうして出し物のために頑張るのも良い思い出になるだろう。


 今までは受け身な学祭を過ごして来たので、こういったイベントは学生らしくて悪くないと総司は思い始めた。

いつも、評価やブックマークをありがとうございます。


ここで、本日はお知らせがございます。

数日前の後書きで、本作品の前日譚を投稿するとお知らせをさせて頂きましたが、色々と悩んだ結果、ゼロベース(なんか頭良さそうな単語)で考えることにしました。

 

簡単に説明しますと、前日譚と言うよりは別作品に近いものとし、主人公たちが高校生だったらというIFの話です。

現状、大学生と言う設定を活かせていないので、作品の舞台設定を高校にします。


正直、新作でいいじゃん。と思いましたが、私がこの本作の登場人物を気に入っているので、基本的に流用します。

本作も書きたいところまで書けていたりするので、そちらの方に労力を注ぐことにし、こちらは投稿頻度が落ちると思いますが、完結まではしっかりと書き上げますので、今後ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ