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交際報告 彼女の家族編その3 結婚はまだ早いです

「総司の好きな所はまず、いつも気遣ってくれるとこ。私が変な事を言っても、ちゃんと付き合ってくれるから」

「他には? 他にもあるんじゃない?」


 ここぞとばかりに、娘から引き出そうとする星七はとても楽しそうである。

 それもそのはず、自分の娘に初めて彼氏が出来たのだ。

 同じ女性として、母親として娘と恋愛の話をすることは彼女の一つの夢でもあった。


「他には、カッコイイところ。海に行って、知らない人に声を掛けられても、守ってくれたし」

「へぇ」


 にまにました顔で、星七は総司を見やる。

 その総司はそんなこともあったなと思い出していた。

 去年も今年も海へ行ったが、やはりどこでも人目を引いてしまう彼女は、声を掛けられることが多かった。


 海に限ったことではなく特に肌を露出するような場所では、ナンパされる回数は格段に上がる。


 その度に総司が追い払ったりしていた。元々スポーツもしていたし、簡単に護身術を習っていたこともあって、総司は物怖じすることなく彼女を守る場面があった。


 そんな風に堂々と自分を守ってくれる総司に彼女は好意を抱いたのだ。


「良いわね~。女の子を守れる男の子はカッコイイもの。パパも昔は男らしかったのだけど、最近は随分と大人しくなっちゃたから。真白が羨ましいわ」

「僕ももう四十三歳だから。昔みたいにはいかないよ。ま、君が困っていたらもちろん守るけどね?」

「うふふ、もうパパったら」

「お父さん、私は?」


 急にいちゃつき始めた夫婦。

 真白は私も家族だけど守ってくれないのかと抗議するが、


「真白には総司君がいるじゃない(か)」


 と、一蹴されてしまう。


 一方の総司は苦笑すると同時に真白を任されている、自分は信頼されているということに責任感と嬉しさが込み上げてきた。


「じゃ、もう総司と結婚する」

「おいおい、交際の報告じゃなくて結婚の報告になっちまうぞ」


 隣に座っている総司の腕を取りいきなりそう宣言する。

 こういうのは恥ずかしがらずにするのだから、総司には彼女が恥ずかしがるポイントが分からない。


「良いんじゃない? 総司君のご両親にはいきなりの結婚報告になっちゃうけど」

「お前、あまりそんなことを言うと真白、本当に結婚しかねないよ」

「だから、良いんじゃないかしら。したいときにすればいいのよ。大学卒業まで二年半あるし、卒業したらすぐに就職でしょ? 割と結婚するタイミングを失うかもしれないもの。ずるずる交際するくらいなら、早い内に結婚するべきね。私達がそうだったように」

「それはそうなんだけど。親としてね、向こうのご両親の事もあるから」


 星七はあっけらかんと言い放ち、母親としてそれでいいのかと思わせられるが、一応はそれなりに理由はあるらしい。

 止める係である吾妻もはっきりと駄目だとは言えていなかった。


「で、総司君はどうするのかしら?」

「総司?」

「あ、ははは……ふ、二人でしっかりと話し合います……」


 女性陣二人から食い気味に問われて、たじたじになる総司。

 真白が本気で結婚する気であれば、この場で結婚宣言をしたかもしれないが、流石にこの状況ではイエスと答えられるわけがない。


 告白した時はグダグダしたので、プロポーズ、結婚宣言をグダらせるのは男として、情けないというのもあった。


「あら、残念。昔から息子が欲しかったのだけどね」


 星七が残念そうが演技ではなさそうに見える。

 

まさか本気だったのかと総司は今後、言葉を選ばないと彼女に流されて結婚する未来もあるかもしれないなと警戒する。

 そうなったらそうなったで、真白の事は本気で好きなので別に構わないのだが。


「ゼク〇ィ…………」


 真白は真白で、またゼ〇シィと呟いていた。そんなに読みたいのなら、今度買ってあげようかと少しだけ考える。


「さ、もうここでずっと話してても時間がもったいないし、そろそろ二人はデートにでも行って来たらどうかな? 今日はそっちがメインなんだろう?」

「そうね。まだまだ、聞きたいことは山ほどあるけど、長く話をしたらデートの時間が無くなっちゃうもの。気にせずいってらっしゃいな」


 吾妻と星七は、この後の予定を気にしてくれているようだ。

 総司的には、デートも交際の挨拶もメインイベントなのだが、すでに交際を認めてくれているので、気持ち的にはデートに傾きつつあるのも確かだった。


 それは真白も同じようで、そろそろデートに行こうと促してくる。

 総司は簡単にお礼の言葉を述べて彼女と一緒に玄関へ向かった。


「それじゃあ、娘の事をこれからもよろしく頼んだよ」


 家を出る際に、総司はそんな言葉を吾妻から掛けて貰った。


「はい! 任せ下さい」

「総司……!」


 彼がはっきりとそう答えると真白が腕を絡めて来る。


「うふふ、甘い青春ね。また、今度ご飯でも食べにいらっしゃい」

「ええ、近いうちに必ず伺いますので」

「真白はあちらのご両親に失礼のないように。それとちゃんと総司君を捕まえておくのよ」

「任せて」


 言って、彼女は絡めていた腕にぐっと力を込めてくる。


「うん。よろしい。それから総司君、真白は変わったところがあるから、迷惑をかけるかもしれないけど、親の私が言うのもなんだけどね、めちゃくちゃ良い物件だから。何より自慢の娘なのでよろしくお願いします」


 星七は、丁寧に頭を下げる。

 彼女はあまり色々な事を気にしない性格だが、今ばかりは娘を思う気持ちが強く出ていた。


「もちろんです。俺の方こそ真白には色々と世話になってるので、これからもよろしくお願いします」

「なら、良かったわ。ねぇ、パパ?」

「そうだね、僕も安心できるよ」


 彼の自信満々の回答を訊いた夫婦は、とてもにこやかに笑う。

 交際報告が本当に成功に終わった瞬間だった。


「では、そろそろ出かけてきます」

「行ってきます」


 真白が二人に小さく手を振る。


「車には気を付けるんだよ」

「行ってらっしゃい!」


 二人は星七と吾妻に見送られ、組んでいた腕を一度解くと、今度は指と指を絡める恋人繋ぎで、ハロウィンデートへと繰り出した。

こんにちわ。はじめまして作者です。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

と、言っても別に作品が終わるわけではありません。

お知らせ的なものがございます。単刀直入に申し上げますと、本作品の前日譚を書いていこうと考えております。


この作品は二人のお付き合いから始まるのですが、作中でそれまでの事を触れようにも長くなりますし、読みづらくなると思いますので、別作品と言う形で投稿していくつもりでございます。

もし、よろしければそちらも読んでいただければと思います。

投稿はおそらく、近日中になりますので確定次第また後書きで告知させていただきます。

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