邪教のターゲット
アイリスとシェルがソファーに座って、肩を寄せあっている。幼い頃からこうしていたのだろうと。簡単に想像できる光景だ。
「大丈夫だよ、シェル。あの人は誰にでも軽いノリでするんだろう」
怒り心頭なシェルを、アイリスが抑えている。
相手は公爵子息で、もう一度殴り掛かったら問題になると、アイリスは心配なのだ。
「ひどいな、俺はそんな軽い男じゃ・・」
言いかけて、シェルに睨まれたグイントが口を閉じる。
「さっきはビックリしただけで、僕は可愛いお嫁さんをもらうつもりだから。第一、シェイドラ公子は血統を繋ぐ立場の人だし、あまり怒らないで」
「遊びでするなんて、最低よ。だめ、怒りが収まらない。殴りたい」
グイントをもう一度殴ろうとするシェルを、アイリスは身体をはって止める。
その様子を当事者のグイントとギルモンドが楽しそうに見ている。
「じゃれているようにしか見えないな」
「ああ、可愛いな」
その会話が聞こえたのだろう、シェルが立ちあがり、しがみ付くアイリスを引き摺ってでも殴りに行こうとする。
「だめ、シェル。相手は公爵子息と王太子、殴っちゃダメ」
いつの間にか、殴る相手が増えている。
「殿下たちはお帰りください。シェルの体調も回復したようですからご心配には及びません」
アイリスが目配せすれば、ギルモンドがグイントを連れて帰って行く。
サロンを出る時に、グイントが何か言いたそうに振り返ったが、アイリスは首を横に振る。
この復讐の協力者の二人だ、多少の行き過ぎた行動は目をつぶろう、とアイリスは思うのだが、シェルはそうではないらしい。
翌日、シェルは熱を出して学院を休んだ。
久しぶりの一人での登校。
アイリスは、屋敷で待っているシェルに街で土産を買って帰ろうと思った。
授業が終わり、帰宅途中に街の繁華街で馬車を降りる。
馴染の本屋に向かっていると、学院の制服を着た令嬢の後ろを怪しげな男達が、付いていっているのとすれ違った。
「手を潰してしまえ」
男達の会話が耳に入ったアイリスは振り返り、令嬢の手を取って引っ張ると男達と令嬢の間に割って入る。
驚いた令嬢が悲鳴をあげるのと、男達が襲いかかるのは同時だった。
最初の一撃を避けて、アイリスは令嬢を庇う。
「走れるか?逃げるんだ」
アイリスが令嬢に声をかけ、令嬢が首を縦に振って走ろうとした時、男達の後ろから、騎士が飛び出して来て男達を捕縛した。
騎士達は密かにユーラニア伯爵夫人をマークしていて、夫人と協会で接触のあった男を尾行していたのだ。
そして襲われたのは、アリア・ハインツシュレフ男爵令嬢。
エシェル・ユーラニアが母親に名前を告げた一人だった。
邪教の信徒がユーラニア伯爵夫人の依頼を受けて、ハインツシュレフ男爵令嬢が音楽祭に出られないように動いていたのだった。
もしかしたら生け贄を捧げた儀式で、願いが叶うように信徒達が動いているのかもしれない。
そうやって、願いが叶うのだ。
投稿が少し遅れてしまいました。
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