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第186話 乱入者

「な、何が!?」


私の回りを固めていた聖騎士団の側近が、突然体を爆発させた魔物の爆風にたじろぎながら声を上げました。


「やはり……!」


私が想像した最悪の事態。それは、魔族が魔物を戦力としてではなく、攻撃兵器として使うという事でした。私の目の前で爆発した『虐げられた者』の男。あれと同じように魔物を改造していないと想像出来なかった私の落ち度ですが、今更悔やんでももう手遅れでした。


一匹の魔物が爆発しただけで、周囲の魔物や聖騎士に甚大な被害がでています。地面は大きなクレーターが出来上がり、辺りには爆発に巻き込まれた魔物や騎士の人体が散乱しているのです。辛うじて無事だった騎士はいますが、回復魔法が尽きた今の状態では長く持たないでしょう。


「フ、フレア様……」

「足を止めてはなりません! 敵との交戦は最低限で良い! この場から離脱することを優先しなさい!」

「りょ、了解しました!」


非情なようですが、こうなっては少しでも被害を抑えるために負傷者を見捨てるほかありませんでした。まだ生きている聖騎士が縋るような目でこちらを見ながら弱々しく手を伸ばしますが、私は心を鬼にしてそれを無視しました。私を先頭にした聖騎士団は一斉に回頭を始め、取り囲まれた壁の中から抜け出すように動き出したのです。


そうこうしている間も周囲では次々と魔物が爆発を続け、敵味方問わず被害が拡大していきました。一体何人が生き残れるか想像もできず、私は歯を食いしばりながら馬の尻に鞭を入れたのです。


――ラクス視点


「へえ。あの状態からあれだけの人数を逃がすなんて……流石ね。聖女だなんだと持ち上げられるだけはあるわ」


そう言って、私はかつて顔を合わせたことがあるフレアを思い浮かべた。さっさと勝負をつけるため、敵と同じように使える魔力を使い切っての、文字通りの包囲殲滅だったのに。敵の聖騎士団は半数以上が包囲から逃げ出していた。でも全員が五体満足ってことはなさそう。多かれ少なかれ負傷しているし、仲間を見捨てて自分だけ逃げたという精神的なショックで士気はがた落ち。こっちは魔物をほとんどうしなったけど、魔族の兵は健在。士気でも数でも勝っているし、負ける要素はなくなった。後は一気に勝負をつけるだけね。


「後は生き残りを嬲り殺しに――!?」


突然、鼻先を掠めた剣を慌てて躱し、私は背後へ大きく逃れた。まさか飛行魔法を使っている私に斬りかかってくる奴がいるなんて、まさかあのラピスかと一瞬恐怖しかけたけど、私は目の前で剣を構えた相手を見て安心した。まさか、コイツがこんな真似まで出来るようになってたなんてね。


「誰かと思えば聖女さまじゃないの。いったい、いつの間に飛行魔法を使えるようになったのかしら?」

「……修行の成果です。そんな事より、あなたがこの軍を率いている大将ですね? その首、取らせてもらいます」

「久しぶりだって言うのに挨拶もなし? 随分焦ってるみたいね。ま、軍が壊滅寸前じゃ焦りたくもなるか」

「黙れ!」


殺気と共に繰り出された剣を今度は余裕を持って躱す。落ち着いて対処すれば、この女の剣にやられる私じゃない。確かに、以前デイトナを相手にしてた時とは比べものにならないほど強くなってるけど、それでも私に敵う腕じゃない。さっきの奇襲と今の攻撃が躱されたことでそれはフレアもわかっているはず。なのに遮二無二剣を繰り出すって事は、コイツは私を倒す事で戦況の打開をしようとしてるって事よね。


「大将が倒れれば軍は瓦解するかも知れない。で、あんたにそれができるのかしら?」

「できる出来ないではなく、やるんです!」

「話にならないわね!」


段々と鋭さを増していくフレアの剣。私は舌打ちしながら距離を取ろうと回避に努める。この女、こっちの動きに順応するのが思った以上に早い。このまま接近戦を続けていれば、いずれこいつの剣が私を捉えるようになる。


「それは面白くないわね」


ちいさな火球や氷の矢をいくつも生み出し、それを一気に解き放つ。以前ラピスには通用しなかった手だけど、この女なら問題無い。あの女ほど異常な回避技術などないだろうし、為す術もなくまともに喰らうだけよね。ほぼ全周囲から放たれたそれをフレアは避けようともせず、無謀にもこちらに斬りかかってきた。


「諦めて特攻かしら!? でも、そんなに世の中甘く無いわよ!」


被弾覚悟で私に一太刀浴びせようとでも考えているんだろうけど、私の魔法はそんな威力じゃない。一発当たれば人間の体なんて一瞬でズタボロにできる。決死の覚悟で形勢逆転を狙った哀れな聖女様の無様な姿を見ようとした私だったけど、次の瞬間肩に激しい痛みが襲った。


「な!? なんで無事なのよ!」

「私にも奥の手ぐらいあります!」

「あぐう!?」


なんでまともに魔法を喰らったはずのコイツが無事なのよ!? そんな混乱から立ち直る暇も与えるつもりはないんだろう。肩を貫いたフレアの剣は即座に引き抜かれ、続けざまに私に振り下ろされた。咄嗟にガードしようとした右腕の手首から先が切り落とされる。間髪を入れずに剣が振り上げられ、私の首下目がけて振り下ろされる。


殺られる! ――そう思った瞬間、今度はフレアが何者かによって吹き飛ばされた。


「ぐ……。あ、あなたは!」


驚愕するフレアの目の前。私とフレアのすぐ近くには、邪悪な笑みを浮かべるフレア――いや、フレアと同じ顔の女、メリアが居た。

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