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冥道めいはかく怪奇を祓いし①

 ◇◇◇


「皆さん、こんばんは。冥道めいと申します。皆寝静まったこの時間、同行者の方々とひとときを共有し、深い話題や興味深いことを共に探求していきましょう」


 冥道めいも同じ時間帯に配信を開始していた。彼女は雑談を交えつつもマンション内のエレベーターを操作し、開いた扉の先を確認してはドア閉ボタンを押して撤退、同じ操作を繰り返していた。


 ここで幽幻ゆうなや宵闇よいちの配信を同時に視聴していたリスナーは気付く。冥道めいもまた工場階を攻略しようとしている、と。その証拠に冥道めいが押す行き先ボタンは幽幻ゆうなが押したのと同じだった。


「さて、わたくしがVdolとして活動し始めてそれなりに経ちましたし、何のためなのかを語るとしましょう。単刀直入に申しますと、富や名声のためではありませんし、同行者の皆様を笑顔にするためでもございません」


 突然のカミングアウトにリスナーは騒然となった。冥道めいを非難する声も少なからず書き込まれたが、しかし同行者と呼ばれた冥道めいのフォロワー達はまずは理由を聞こうと冷静な反応だった。


 そんなコメント欄を確認した後、冥道めいはタブレットを通じてある操作をした。それは現実世界でもアニメ風三次元モデルのVdolとして活動するための映像フィルターを外すというもの。すなわち、生配信内の映像は以降完全実写となる。


「わたくしの目的、そしてわたくしの存在理由は唯一つ。ある怪奇を解決するためです。そのために全国各地の怪奇を調査してきましたが、ようやく分かりました。こここそがわたくしの終着点なんだ、と」


 そして現実世界の冥道めいの姿が明らかになった。


 それはリスナー一同を大変に驚かせた。何故なら、彼女の姿はまさにVdolとしての冥道めいそのままだったからだ。まるでこのリアル冥道めいをアニメ風にモデル化したのがVdolとしての冥道めいの姿だった、と言わんばかりに。


 大量のコメントが書き込まれていくのを傍目で確認しつつ、いよいよ冥道めいは到着したフロアに降り立った。そこは映画でしか見ることのないような未来を思わせる内装をした工場だった。そして左右に広がる生産ラインを目の当たりにし、リスナー達は息を呑む。


「さて、では参りましょう」


 冥道めいは躊躇なく進んでいく。ヒト型ロボット、いわゆるヒューマノイド製造工場の中を。


 ◇◇◇


「これではまるで怪奇現象というより、少年漫画やハリウッド映画の一幕だと言い表す他ありませんよね」


 冥道めいが侵入してすぐに彼女に襲いかかったのは、警備ロボットだった。この国では決して見ないような重火器で武装した警備ロボットは、しかし冥道めいの障害にはならなかった。冥道めいが手のひらから発した電撃のような攻撃を受けてどれも沈黙したから。


 冥道めい曰く、これは霊界に取り巻く霊力と呼ばれるエネルギーを用いた霊撃の一種なのだ、と。幽幻ゆうながコラボ配信で披露した霊撃の弾丸と同じであり、冥道めいの動力源もバッテリーやSF作品で登場する未来技術でもなく、霊力なのだと彼女は明かした。


 警備ロボットが役に立たなかったためか、次に冥道めいに差し向けられたのは人型のロボット兵士だった。ロボット兵士達はレーザーガン(これも冥道めいは霊撃の一種だと説明)で攻撃を仕掛けてきて、それを冥道めいは太もものベルトに収めていた筒を取り出すと、レーザーソードを抜剣、レーザー攻撃を弾き返した。


「ビーム◯ーベル? ライ◯セイバー? 参考にはしたのでしょうが、動力はあくまでも霊力ですよ。この技術を現世に持ち込んだら産業革命が起こるでしょうね」


 戦うヴィクトリアンメイドはあまりにも現実離れしていて、リスナーは映画を見ている気分に苛まれる。しかしカメラワークは最悪の一言。何しろ冥道めいの後方で飛んでいるドローンからの映像のため、監視カメラを覗いているみたいなのだ。


 ロボット兵士達を殲滅し終えた冥道めいは先に進む。途中で扉が閉まっていようとロックを解除して簡単に突破、通路上に配置されたトラップ装置も多彩な攻撃を駆使して一蹴する。霊撃のちょっとした応用だ、で終始冥道めいはごまかす。


 そして辿り着いたのは、アクションゲームならボスが出現しそうな広々とした空間だった。製造機器や部品、製品の在庫も置かれておらず、障害物は何もない。入口とは反対側に出口があるだけなので、冥道めいは疾走して突破を試みる。


 不意に、彼女の周りに何かが落ちてきた。

 否、三体の刺客が冥道めいを包囲したのだ。


「……やはり来ましたか」


 彼女達は冥道めいだった。より正確には同じイラストレーターが描いた類似キャラを現実世界に現出させた、だろうか。同一人物だと説明されても頷けるし、姉妹だと紹介されてもほとんどの人は不思議に思わないだろう。


 そのうちの一体、冥道めいの真正面に立ちふさがった個体が手のひらを冥道めいに向ける。彼女の手のひらの作りは冥道めいと同一で、淡く光る様子も冥道めいが行う霊撃の溜め動作と同じだった。


「警告。それ以上の侵入を試みるのであれば実力をもって排除します」

「拒否します。わたくしはこの先に進まなければいけない」


 短いやり取りを終えて戦闘が始まった。

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