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45・おっさんは驚きを隠せない

 四人はこれからしばらく鎧の完成を待ちながら村周辺の巡回をする事になる。


 北の村は冬には鳥魚(バードフィッシュ)という稼ぎがあるが、雪の無い時期には氷風狼(ブリザードウルフ)も北上し、猪や鹿の楽園が出現する。


 それらは食料ともなるが、何より農業の天敵なので巡回は欠かせない。


 しかし大きな問題は、都市の様に消費人口が居ない事もあって狩猟よりも駆除が主となるので報酬は少ない事だ。

 開拓地の様に国からの支援が手厚い訳でもないのでこの時期に有力な冒険者が居るなどあり得なかった。


 そんな環境で過ごす召喚者に期待が集まらない訳もなく、大型魔物の相手をするのはキョーコやコータの役割になった。


 ふたりも手に入れた武器を気兼ねなく振るえる環境に満足して討伐を行う。


 キャリーは戦輪の制御をさらに高めてキョーコやコータの支援にまわった。


 この中で魔力の一番低いエミリーだが、彼女の知識と経験は誰にも負けず、斥候や索敵は彼女の役割となる。


 そんな、おっさん抜きでも強力なパーティとしておっさんの帰りを待っているのだった。



 さて、旅立ったおっさんは、ウルホと共に北を目指して街道とは言えない様な獣道を進んでいた。


 道中、確かにウルホが男である事を確認したおっさんではあるが、それでも加齢臭漂う自分とのあまりの差に戸惑う事しきり。

 男同士なので水浴びなどの裸の付き合いもあるが、意識せざるを得ないおっさんだった。


「さすがに魔弓使いだ。ただ魔力が多いだけではなく、我らすら成し得ない遠見や喝破すらやってのけるとは」


 ウルホも魔弓使いであり、キョーコやエミリー並に魔力や熱感知を使える。

 射程も500m程に達している。

 その優秀さには感心するしかないが、距離が近い。服を着ると男と思えない容姿に香りはおっさんにとって毒以外の何物でもなかった。


 途中、ウサギやシカを狩りながら10日ほど道なき道を歩んでたどり着いた先は、ファンタジーに登場するエルフとは違い、一見すれば森の開けた場所に村を構える普通の人達に見えた。


「彼が召喚者、それも我らが望む魔弓使いだ!」


 村に着くとウルホが村人に対しておっさんを紹介する。

 集まる村人は皆、同じ様な草木色の服を身に着け、どこか軍服にも見える。色のせいで森に溶け込み、意識しないと人が居ることに気付かないほどだった。


 ウルホが身に着けた衣装はいわば外行き用。そのため、森や草原には溶け込まない赤や蒼があしらわれていると教えられた。


「南へ向う際に魔物と間違われては困るからね」


 そんな説明に納得するおっさん。


 テンプレでありそうな村長への紹介云々は省略されていると感じたおっさん。それほどまでに周りには若者しか存在しない。


「ここは若者ばかりの郷なのか?」


 おっさんがウルホに問うと彼はキョトンとした顔を見せる。


「?いや。ちゃんと老若男女が居ますよ?」


 そう言われて改めて見回したおっさんには、確かに小さな子供、まだ幼さが残る背格好や顔だちの者は認識できたが、それ以外は良くて30代、頑張って上に見積もっても自身と大差ない者ばかりだと思ったおっさん。


「そうだろうか。俺と変わらんくらいの歳と見積もれる者が何とか見受けられる程度なんだが?」


 そう返すおっさん。


「ちなみに私は90だよ。おかげで長老などやっていてね」


 ウルホのカミングアウトに驚くしかない。おっさんは(こんな綺麗すぎるジジイが居てたまるか!)と叫びたくなったが、何とか思いとどまることが出来た。


 そして怖くなったおっさんがひとりの美人、いや美魔女へと視線を向ける。


「ちなみに、あの人は?」


 すると、ウルホはその人物を呼ぶではないか。


「ミカ!ちょっと来てくれ」


 ミカと言うからには女性なのだろうと推測したおっさん。


「なんです?ウルホ」


 落ち着いた感じの美魔女を見やるおっさんへと視線を向けたウルホが


「ミカ、先ほど説明した魔弓使いが君に興味を持っているよ」


 言われたミカが苦笑いしながらおっさんを見る


「そう言う冗談はやめてください。100を超えた年寄り、それも男を捕まえて何をしようと言う気です?」


 もはや言葉も出ないおっさん。良くて40代の女優と言った容姿の人物が、まさかの男、それも100などと言われ、その通りに受け取る事など出来ようはずもない。


「キミオも驚いていたというから、召喚者の感覚とはこうなのでしょうね。我ら森人は西方人の30程度の容姿で100を超えるのですよ。もう生い先20年ほどの老いぼれですよ、ふふふ」


 そんな事を言うミカは、おっさんからすればとても魅力的である。


 おっさんがそんなミカに見惚れている所へ別の人物が近付いて来た。もはやこの郷での顔面偏差値インフレは天井知らずである。ハイパーインフレ状態で美女しかいない。近づいてきた人物も、さわやかイケメンと言った風情だが、どう見ても若い某劇団の人気スターにしか見えなかった。


「長、そちらが魔弓使いの方ですか?」


 この声は透き通っており、もしかすると本当に女性かも知れないと思えるモノだったが、おっさんにはまるで判断がつかない。


「ヘタか。随分疑り深い様だけど、間違いなく魔弓使いですよ。それも私など足元にも及ばないほどの」


 ウルホがおっさんに代わってその人物へと答える。


「確かに、ギルドが誇張するとは思えませんが大山猫(タマ)縞大猫(キジトラ)をひと矢で仕留めたなど、私には信じられません。それではまるで伝説のキミオではないですか」


 ヘタと呼ばれた人物がキッとおっさんを睨む。絶世の美女から睨まれるのもご褒美だと受け止めるおっさんの態度にさらに思うところがあったらしく、すかさずウルホへと問いかける


「もし本当だというのであれば、影熊(ステルス)も狩れるでしょう。どうです?是非ともその姿をお見せ願えませんか?」


 どこか挑むような視線を向けるヘタ。おっさんは少々困り顔でウルホを見る。


「それは面白いかもしれないですね。どうですか?ダイキ」


 性別に加えて年齢まで聞いたというのに、おっさんにはウルホが魅惑的に見える。とても色っぽい問いかけに思えてならなかったが、内容を冷静に理解してみれば高難易度の狩猟依頼に思えた。


「それはどの様な魔物だ?」


 おっさんがそう問えば、さわやかイケメンのヘタが解説してくれる。


「我らの術を使ってもほぼ捉えることが出来ない熊です。気配も姿も捉えられない。しかし、多くの痕跡から生息している事だけは分かっているのです」


 おっさんは少し考え、なかなか面白そうだと思った。おっさんのサーモグラフや魔力感知で本当に捉えられないのか試したくなった。


「それは面白そうだ」


 そういうおっさんに対し、ヘタは挑むような顔をして宣言した。


「もし見つけることが出来たなら、長が孫、このヘタが血を受け継いであげましょう。ひと矢で見事倒したならば、郷を出てあなたの妻となっても構わない!」


 まさかのさわやかイケメンが女性だったことに驚きを隠せないおっさんだった。 


 

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