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この度、公爵家の令嬢の婚約者となりました。しかし、噂では性格が悪く、十歳も年上です。  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
九章

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0.prologue2.少年たちのその後2.



「しばらく学園へくるな、か」


 友人からの手紙を読み、ジャレッドは思わず苦笑した。

 前々から登校を控えるように言われていたが、ついにくるなとはっきり言われるようになったらしい。

 ジャレッドもラウレンツも、あと一年は学生をしなければならないのだが、宮廷魔術師になることにより近づこうとする生徒があまりにもおおく、混乱を起こしたことは一度や二度ではなかった。

 学園側に迷惑をかけないため自主的に休みを取っていたのだが、


「まさか向こうから来るなと言われるとは思わなかった。ま、もともと真面目に通っていなかったけどさ」


 来るなと言われると、寂しく感じてしまう。

 もともとジャレッドは特待生だったので、学園よりも魔術師協会からの依頼を受けて魔物討伐ばかりを行なっていた。だが、学友が増えたことや、オリヴィエと一緒に過ごすことを理由に依頼を減らし、王都に止まる時間を増やしたのだが、最近では時間を持て余している。

 ありがたいことに、ここ二ヶ月は問題もなく平穏の一言。少々、婚姻のことで頭を悩ませることはあるが、至って平和だった。


「そういえばラウレンツはベルタと婚約したんだよな」


 先日行われた友人たちの婚約パーティーを思い出し、頰を緩ませる。

 ヘリング家に仕えるバルトラム家の双子の姉ベルタ・バルトラムとラウレンツが婚約したため、ジャレッドを含め近しい友人知人が招待された。


 以前よりベルタがラウレンツを慕っていたことは知っていたが、まさか婚約するとは思っておらず驚いたのはいうまでもない。友人の母が婚約を決めたようで、最初こそラウレンツは困惑していたのだが、長年そばにいてくれた少女を受け入れるのに時間はかからなかった。


 あとで聞けば、彼も少女のことを憎からず思っていたようだ。

 新たな宮廷魔術師となるラウレンツにも婚姻の声は多い。婚約パーティーを取り行ったのは周囲に対する牽制もあったのだろう。


 その席で、ジャレッドははじめてラウレンツの両親に会った。色々と巻き込んでしまったことから謝罪したものの、良い意味で変化した息子とのことを感謝されもした。伯爵夫人は息子が危険に関わることに複雑でではあるらしいが、息子を誇りに思っていることにはかわらず、ジャレッドにこれからも仲良くして欲しいと深々と頭を下げたのが今も印象深く覚えている。


 ラウレンツはただ宮廷魔術師になるだけではない。反逆事件を解決し、王子の命を救ったこと、宮廷魔術師二人の弟子であることを含め、有望株なのだ。

 少々実力に不安があるとされていたが、ラウレンツ本人がそれを認めており、力不足を感じていた。そこでジャレッドの師匠であるアルメイダに訓練を願い出たのだ。


 ジャレッドを巻き込み行われた短期集中型訓練は、死ぬほどの目に遭ったものの少年たちの実力を大いに伸ばし、実力の底上げを成功させた。もちろん、まだその実力を披露する場面はないものの、本人が満足する形になったのは付き合ったジャレッドからしても喜ばしい。


「結局、ルザー以外は宮廷魔術師か。王宮も魔術師協会も諦めていないみたいだけど、どうなることやら」


 ジャレッドの兄貴分であるルザー・フィッシャー。彼は宮廷魔術師に推薦されていたものの、父親との関係を優先し、子爵家を継ぎ宮廷魔術師を辞退することを正式に伝えられていた。だが、王宮も魔術師協会も、現宮廷魔術師に匹敵するかそれ以上の実力を持つルザーを放っておくことはできなかった。

 フィリップ子爵を王宮に招いた上で相談し、子爵家を伯爵家にすることを決定したのだ。これには子爵も大いに驚いただろう。


 手続きに時間がかかるためすぐにルザーが宮廷魔術師になることはないだろうが、王宮は彼を逃す気はないはずだ。

 結局、宮廷魔術師の席次が四席埋まることとなった。

 いずれルザー・フィリップスと名を改めた青年が宮廷魔術師になる日は近いのかもしれない。

 そんな彼は、先日、長年隣にいてくれた少女ミアと結婚している。結婚式は小さな教会で質素に挙げられたが、実にいい式だった。


 ジャレッドとオリヴィエをはじめ、親しくなったラウレンツ、プファイル、ジドック・ロッコ伯爵。アルウェイ公爵家、ヘリング伯爵家、ダウム男爵家と錚々たる顔ぶれだった。

 息子の知り合いの錚々たる面子に、子爵はもちろんルザーの母も、他参列者も大いに驚いていた。


「みんながみんな、自分の道を進んでいる。じゃあ、俺は? 宮廷魔術師になって終わりじゃないだろ?」


 今までも考えていなかったわけではないが、最近になって自分の将来のことをより考えるようになった。

 やはり一番はオリヴィエとの関係だ。友人が結婚、婚約式ををあげたように、自分たちもなにか形にするべきだと思わないでもない。


 婚約者となり、理由があって一種に暮らしているものの、婚約者らしいことはあまりない。

 今の関係が心地いいと思いながらも、ぬるま湯のような関係に甘んじていていいのかと自問自答を繰り返す。


「うん。やっぱり大切なことを言っておくべきだ。俺のためにも、オリヴィエさまとのこれからのためにも」


 家に決められたからではない、自分の意思で彼女と一緒にるのだとしっかり伝えよう。



 そして――ジャレッド・マーフィーは大きな決断を下したのだった。





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