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この度、公爵家の令嬢の婚約者となりました。しかし、噂では性格が悪く、十歳も年上です。  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
八章

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44.黒幕の登場4.



「そう慌てるでない。魔術師の戦いとは優雅であるべきだ」

「笑わせるな。戦いが優雅なわけがないだろ」

「愚かな。自らの技術を十全使い、相手との技量を高め合う、それこそ魔術師の戦いというものだ」

「なるほど、だからあんたは高みの見物で、すべてレナードに任せていたのか?」


 戦いを優雅と言うが、彼の息子が行ってきたことは決して優雅とは言えない。誘拐、洗脳、監禁、誘導、そして国家反逆。なにひとつとして気品のかけらも見えない行動だった。


「そう受け取ってくれても構わない。私としては下準備をやらせたにすぎないがね」

「教えてくれよ、あんたなにがしたくて反逆なんてしようとしたんだ?」


 レナードに問いても返答はなかった。だからこそ、本当の黒幕に聞きたかった。

 老人は静かに目を瞑り、頷く。


「難しい質問だな。君に答えるとするならば、魔術師のためだ」

「出たよ、また魔術師のためだとかよくわからないことを理由にしやがって」


 悪党なら悪党なりの矜持があってもらいたかったが、いささか拍子抜けしたのは言うまでもない。あやふやな理由でこれだけのことを起こしたのだ。怒りすら湧いてくる。


「若いな。そうすぐに結論づけるな。聞きたまえ。君の勧誘はまだ終わっていない。私の話を聞き、納得したのなら同志となって協力してほしい」

「はっ――納得させれるものならしてみやがれ」

「ならば語ろう。私は憂いている。魔術師という優れた人間たちが、非魔術師という進化し損ねた人間たちにいいように扱われていることが我慢ならないのだよ」


 ルーカスの行動理由は実に傲慢のものだった。


「魔術師だから優遇される? そんなことは当たり前だ。それ以前に、なぜ非魔術師に我々が優遇してもらわなければならない。そこが間違っているというのだ! 優れた人間が優遇されることは至極当然のことではないか!」


 ジャレッドには魔術師だから優れているという考えはない。理解もできないし、したくもない。

 実際、魔術師として優れている人間は優遇されるし、ジャレッド自身も学園や魔法協会から優遇されていた。だが、魔術師だから当然だと思ったことはない。


 努力したのだ。優遇されたかったわけではなく、特別視してほしかったわけでもない。自分自身のためにジャレッドは努力し続けた。その結果を評価されたのだ。

 ルーカスのいうことは違う。魔術師だから無条件に優れていると認めろという暴論を掲げているのだ。魔術師はそうでない人たちよりも優れているのが極自然だと信じて疑っていないのだ。


「この国は、いいや、この現代社会が間違っている。まるで非魔術師が支配者気取りだ。魔術師がいなければ国の戦力を整えられない弱者の分際であるにも関わらず、その自覚もなく、愚かにも私たちを上から押さえつけようとしている。君にはそれが我慢できるのかっ?」


 唾を飛ばし訴えかけるルーカスの言葉に、ジャレッドは微塵も共感できなかった。


「気にもならないね」

「……なんと愚かな。いっそ哀れにさえ思う。君はそれだけの才能に恵まれておりながら、なぜそうも非魔術師に味方する? この間違った世界を受け入れる? 君は間違っている、ジャレッド・マーフィー!」


 血走った瞳を見開き、老人は己の意思をジャレッドに認めさせようとなおも訴え続ける。


「私も君も支配する側の人間だ。力を持つ強者には弱者を導く義務がある。なにも非魔術師たちを弱者として踏み潰せなどと言うつもりは毛頭ない。私はただ、強き者が弱き物を導く義務を果たそうとしているのだよ!」

「あんた傲慢だよ。人間に強いも弱いもない。もしも、強弱があるとしたらそれはきっと心の在り方だ」


 例えば、母親のために自分がどれだけ犠牲になろうとも守ってみせると決意した女性のように。


 例えば、娘にどれだけ恨まれようとも愛しい家族を守ると信念を貫き続けた父親のように。

「ルーカス・ギャラガー。あんたがどうしてそんな考えに至ったのか知らないし、興味もない。だけどはっきりと言えることがひとつだけある」

「聞こうではないか、言ってみるがいい若造」

「あんたは間違っている」

「ふ、ふははははははははっ、そうか、間違っているか。私がこれだけ訴えてもなお、私を否定するというのか。ならば君はもう修正が効かないほど、非魔術師に、いや、オリヴィエ・アルウェイに骨抜きにされてしまったようだ!」


 馬鹿にするというよりも心底哀れんでルーカスは笑う。哀れな人間の末路が目の前に転がっていると言わんばかりに、失望した瞳をジャレッドに向けた。


「残念だが君を同志に迎えることはできないようだ。君は魔術師なのかもしれないが、そのあり方は魔術師ではない」

「俺は魔術師だ。この身が果てるまで変わらない。ただし、あんたと一緒じゃないことがわかって心底嬉しいね」

「もうよい。君の言動は痛々しい。魔術師を魔術師と思わない君を殺し、私は王宮へ攻め入ろう。愚かな宮廷魔術師をも殺し、王の首を刈り取り掲げてみせよう!」

「させるかよっ、このクソじじぃ! あんたのつまらない野望はここで終わらせてやる。優雅な魔術とやらを見せてみやがれ!」


 もう言葉は必要ない。ジャレッドは理解したのだ。どれだけ言葉を重ねても、ルーカス・ギャラガーを理解できないと。彼を言葉で止めることなどはじめから無理であったのだと。

 戦わなければ解決できないことであることははじめからわかっていたが、残念に思う。だが、止めなければならない。敵をここで見逃せない。


「あんたを倒すよ、ルーカス・ギャラガー」

「かかってこい、ジャレッド・マーフィー! 真の魔術師の戦い方をみせてやろう!」




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