第07話 キミは何人目だ?
「うん、優秀」
宣言通りに五分以内――四分十九秒で到着した救急車。急いで駆けつけた救急隊員の担架にハイ=ルミナを乗せて、どさくさにまぎれて一緒に救急車に乗り込んだ。妹、として。
隊員の一人が仮面をとろうとしたからヴォワはそれを止めた。怪訝な顔をされたがそれはしようがない、ヴォワは無視しようと決めた。
それよりも気になる点がある。
ハイ=ルミナから視える色がふえているのだ。
そしてどれもが美術館から視えた色とは違う。
(ハイ=ルミナ。キミはハイ=ルミナではないと視るがいったい何人の別人格を抱えているのだ?)
その問いは彼女の目が覚めたら最初に繰り出そう、そう思いながらヴォワは救急車の中で腰を降ろした。
「――で、異常なしとして放り出されたわけだが」
「だから言ったでしょう? 大丈夫だって」
病院に到着してから小一時間。色々な検査を受けたもののこれと言った異常は見つからず呼吸も正常に戻ったために入院は回避。その日の内に「帰っていいよ」と言われた。
そして現在は病院近くのファミレスで三人揃って軽い夕食をとっている最中だ。
「悪いが大丈夫そうには視えないね。特に頭が」
「バカにしてる? してるわよね? してるって言いなさい」
「なぜに」
フォークを突きつけられたのでナイフで応戦。ハンバーグを切った時についたソースと肉汁がフォークの方に移ってしまいハイ=ルミナはそれをぺろりとなめとった。
「あ、おいしい。ハンバーグもよかったかな、よかったよね、よし頼もう」
「キミ、それで四品目だが?」
「まだまだ入るわよ。ハイの胃は大きいから」
「わたしは見ているだけでお腹いっぱいです」
ここに他に人がいなかったならゲップの一つでも出していただろう、そう思うエアラリス。
「あら、食べられる時に食べなさいな。明日死んだらどうするの? て言うか食べなさい。食べるって言いなさい」
「どうして」
二人のやりとりを尻目にヴォワは切り取ったハンバーグを一口咀嚼。ヴォワはレアが大好きだ。そう頼んだから肉汁と一緒に血が滴っていた。
「ふむ、獣になったみたいだ」
「あら、肉食なの? 野菜も食べなきゃ大きくなれないわよ? もやしよけてないで食べなさい。口開けて。ほらアーん。アーんしなさい」
「あいにく会ったばかりの女に口の中を任せる気はない」
「ではわたしが! わたしがゼヒ!」
「やめろ変態。そして声が大きい」
他のお客さんの好奇な目がこちらに向いている。三人ともそんな目には慣れっこだったから無視したけれど店員さんにはにらまれてしまった。そっちには申しわけないと思う。
「さて、ごちそうさま」
日本式に手を合わせて、ヴォワ。
「ごちそうさまです」
エアラリスもヴォワにならう。というか元々エアラリスからヴォワにうつった習慣なのだが。
「あ、待って。ハイはまだ食べるから」
「……言っておくが料金出してあげないからね?」
「大丈夫よ。ハイは儲けているから。三人分出してあげる。ありがとうは? ありがとうって言いなさい」
「強要する言葉ではないだろうそれは。だが、まあ、ありがとう」
「ありがとうございます」
ヴォワもヴォワでそれなりに収入があるのだけれど、内緒にしておいた。節約、大事。
「では、ハイ、キミは食べながら話が出来るタイプみたいだから聞くが、キミは何人目だ?」




