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第92話 黄泉返り③

久しぶりの投稿

 とにかく、感情の制御も含めて。なにもかもが自由の利かない状態であった夜光(やこう)はその提案を無理にでも受けるしかなかった。片方は日本の冥府に在籍する最上の裁判官。


 片方は、これまで組織にて指名手配レベルだった、最上の『素材』。不老だが半分不死。夜光を使ってきた『元相棒』の野望に必要なそれで、無理強いにして精製された紅霊石(こうりょうせき)そのものと言っていい。


 使い捨てでしかない、異形種の己が敵うわけがないので、頷くしかなかった。その直後、閻魔の術により異形種としての『原型』にさせられたのだ。忌み嫌うそれであれ、怨霊以上に神のかけらを取り込んでしまったからには。慣れるまでは維持しろと。



『しばらくは、罪人をこちらへ送迎する『手前』の仕事をしてもらう。術のみでするなよ? 不知火(しらぬい)に少し教われ。最終的な方法は任せる』

『いくで〜?』



 そして、無理矢理に引きずられた異空間こそが。現在柘榴(ざくろ)との意識をも共有している『狭間』。管轄は冥府であれど、現世とも繋がりの深いそれ。


 何もない、何も存在しないと思っていたその空間。


 しかしながら、これまで受けてきた怨嗟や押し込まれた神の欠片。それらの感情が合わさったせいか、今までにない感情が夜光の中に溢れてきていた。



「……休みどころ」

『お? ええもん浮かんだか?』

「考えもしなかったが……魂を導く手順をすればいいのだろうか」

『そんなとこや。ワレぇも少し手伝うわ。どーせなら、貴石とかを食いもんにすんのはどーや? 石の子らを導くのも手や』

「……あれが作り出した子らか」

『せやな。ワレは居続けるが、あいつらは違う』



 基礎基本は不知火に教わったが、ほかは夜光がそれまで見聞きした喫茶店や市場を模したものを作り出していくことに成功。


 陸翔(りくと)らを導くに至るまで、夜光は如何にこれまでの奪い合いが愚かであったことを痛感して、石の使い方を学んできたことで狭間の管理人としての生き方も見出せたのだ。



「私の贖罪だけでなく、これからの生き方を学べたのだよ。このうちにある菅公の善行の魂。合わさった『夜光』の異形種の私は……この生き方を嬉しく思っているのだ。柘榴(ざくろ)くんとの出会いも母君からの依頼でもあったが……我々の生き方をまた変えてくれた」

「そう……なの? おじいちゃんだけじゃなくて?」

「不知火殿もだよ。きちんとした生き方を嬉しく思っているかもしれない」

「おじいちゃん、はね?」

「君も妹君を得た以外、多く得ただろう?」

「……そだね」



 友もだが、最愛となるパートナーも手にしたのだ。(いずる)の出会いは、誘拐事件から通じていたかもしれないが。もしかしたら、紅霊石(こうりょうせき)の導きだったかもしれない。素材の母以上の石の素材に、血が導いたか否か。


 もしくは本能かもしれない……それはいっそ奇跡的なものなのか。夜光も同じだろうが、柘榴という少女の軸が来たことで多くの事象が変化を起こした。


 狭間の喫茶店事態ももともとの休み所として、再びスタートすることが……振り出しの一歩が変わったのだと。



「さて。二番弟子の門出だ。とびっきりのスタートをしようではないか」

「やっぱり、マスターのお手製オムライス食べてみたい。お母さんにも出したんでしょー?」

「おやおや、忘れていたかと思ったよ。私のでいいのかい?」

「マスターのがいいの。まだ食べてないもん」

「そうだね。私らしく振る舞おう」



 トイプードルもどきのマスターが振る舞うオムライス。親子ともども、あのとびっきり真っ赤で美味なものをお好みのようだった。喫茶店への空間に戻ってから、夜光は柘榴に教えたのと同じ方法で創り出す。


 柘榴は最初に陸翔が振る舞った以上に、とびきりの笑顔で食べていた。かつてここに来た母以上に、もっともっと輝かんばかりの笑顔で。


またどこかで

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