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第65話 後悔はない、今は

お待たせ致しましたー

 侑馬(ゆうま)は妻がいるらしい、『あの世』とやらに到着したようだ。ようやく会えた娘と再会出来、妻が大丈夫だと言っていた通りの結果で『別れ』が完了したのだ。


 人でなくなったのは柘榴(ざくろ)も同じ。己以上の力の持ち主となったが、いい方向で侑馬を送り出してくれたのだ。最後の食事が、義母と同じものだったのは意外だけれど。それが魔法から出来た飲み物だとは思わず。幽閉されていた今日までまともに食事を摂らないでいたのに、すぐ口にすることが出来た。優しい甘味とのど越しの良さに、魂そのものが洗われる感覚が心地良過ぎて。


 不知火(しらぬい)が告げてくれた、柘榴の相手かもという青年の能力で送迎された場所は。既に、準備をしてくれていたのか妻が泣きながら手を広げていたのだ。服装は特殊なものだったが、あの幻影を生み出せるのだから何か助けがあったのだろう。側には、異様に体格の良過ぎる大男が控えていた。



『……どうやら、最期の役目は終えたか』

「あなた、この方は今の私の上司。……閻魔大王様なの」

「……妻が、お世話になっております」



 風格で予想してはいたが、改めて礼を告げるのに霊体の形が整ってから頭を垂れた。閻魔は気にしてないのか、桃世(ももよ)が抱きとめてくれたのも咎めなかった。



「辛い役目……あり、がとう」

「……君こそ。役目を押しつけたと同じだ。俺こそ、ごめん」



 完全に死したのに、泣くことはもう不可能なはずが。形が保っているお陰で、妻といっしょに涙を流すことが出来た。閻魔大王以外にも、鬼やら異形の存在が多くいたけれど。共感してくれているのか、皆哀しみの感情を涙以外の行為で伝えてくれる。先に殺されてから、ここで妻が築いてくれた関係などのお陰もあるのだろう。


 なら、と侑馬は刹那の間に浮かんだ決意を、閻魔に進言することにした。拒否されたとしても、残してきた娘のためにはこの場を使うしかない。


 どれだけ、現実世界に影響があるかわからないが。あの異空間に伝わるのなら、この魂が砕けたとしても。『刻牙(こくが)』の中心核が抱く野望が、こちら側で把握出来ているのは少ない。不知火は抜き取ったとしても、まだ柘榴には伝えていないことを予測して。


 閻魔大王に包み隠さず話すことを決めたのだ。



『……あれは、望んでも無謀でしかない『願い』のために。利用し尽くしていたのか』

「……はい。俺は改造され、知識と血を搾取され続けてきました。その流れで得た能力で、今お伝えした情報も娘の今も。可能な限り掴むことが出来たのです」

『そうか。浄玻璃の鏡で得られない情報がこれで揃った。この情報を鏡に繋いだことで、夜光(やこう)……菅公(かんこう)へリンクすることも可能だ。しかし、柘榴を通じて連中に繋がることもある。秘密裏に、リンクは執行していくぞ』



 そのために、と。閻魔大王は侑馬に指を向けると。魂に痺れのようなものを感じ取れ、形態が幽体でなくなった。意識が落ち着くと、服装から変わっていたのだ。



「……これ、は?」



 桃世、と同じようなものに変化していた。少し動きにくいが慣れていけば問題ない範囲。もしやこれは、と妻の方に振り返ると。



「まずは、研修よ? 獄卒見習いから、私の仕事のサポートとしていば……柘榴を助けられると思うわ」

「! 役に、立てるの……か?」



 罪を犯しても、清算する結果がこれであれば。おまけに、しばらくでも妻と居れるのであれば喜んで受け入れよう。形は不格好でも、侑馬は膝をついて閻魔大王に忠誠を誓ったのだった。


次回はまた明日〜

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