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第48話 いきなりラスボス(?)のご登場

お待たせ致しましたー

 なにがなんだか、頭の中がカオスと化していた。柘榴(ざくろ)は次々に店に侵入してきた面々の中でも、一番に驚いた出来事が目の前で起きているのだ。


 外見は、紅霊石(こうりょうせき)と同じ光沢と色をした独特の髪型の男性だが。年齢がどうも、先祖とやらにしては若々し過ぎる。口調も個性的で、先に夜光(やこう)に突撃してきた工作員とは似ているが。彼は、不知火(しらぬい)は本当に柘榴の祖先だと言うのか。しかも、伝説と称される紅霊石の本体。『流れ人』とも呼称がある異種族の始祖。


 通常なら馬鹿馬鹿しいと思うところだが、登場から柘榴が無意識に精製した大量の紅霊石を瞬時に消失。かつ、夜光とは古い知り合いならば、多少は信用は出来るにしても。



(急展開過ぎる、生きてるとかは聞いてたけど……なんでいきなり??)



 こんなにも早く邂逅する機会があるとは思わなくて、頭の整理が追い付かない。混乱しまくっている柘榴の横にいた(いずる)からは、落ち着けと頭ぽんぽんと撫でられたが。



「……俺も相当混乱してるが。ありゃ、ガチだ。冷静に気配探ったら、解放してる部分だけでもお前と共通点が多過ぎる」

「……わかる、の?」

「ああ」



 若くても、魔法がかなり使えるので何か情報を得たのか。柘榴にはまだ不慣れなので無理もない。あちらを見れば、不知火は夜光と楽しげになにかを談笑していた。



「ははは。相変わらず、悠久の流れで昼寝をしておられたか?」

「いやな~? ワレぇが長くここに居たら面倒やし? けんど、あんだけの爆発もんの解放されたら無視出来んじゃろ?? んで、来てみたらこんなだし。なんなん、あっちの嬢ちゃん」



 不知火はどうやら、工作員だという女性も気になっているようだ。本性をバラされたのもあるが、結局彼女の方は何も解決していない。今は、夜光から少し距離を置いて何故か正座して縮こまっている。周りには、既に浅葱(あさぎ)らが一時確保のために囲っていた。



「ガチで信じられんわ……なんでなん? こんな展開、あのバカボスに知られたらここ襲撃確定やない!? 嫌や、うちはマスターはんの配下なりたいねん……」

「……何故、夜光殿にそこまで執着するのだろうか? この敵意の無さだと本当のようだが」

「ええ。探査をかけても同じです。本気で、夜光殿の下で働きたいようですね……」

「面倒だが、確保してもいいと本人言っているし……端末で上には報告いれておくかい?」

「そうしましょう……」

「あーい。マスターはんのためになるんなら、遠慮なくどぞ~~」

「「気が抜ける……」」



 聞こえる範囲の会話を聞いていても、本当に彼女は犯罪者なのか信じられないくらい和やかだ。罪は認めていても、我欲のために何でも従う。それだけを見れば、彼女のこれまで仕出かしてきた事態は深刻なものなのは理解できるが。あれでは、テストの補習を受けるだけの赤点常習者とよく似ていた。



「……なんなん? ザクロっち、あのねーちゃん怖くね?」



 呉羽(くれは)は少し落ち着いたのかこちらには来たが、腕では無理に陸翔(りくと)の右腕にしがみついたまま本人を引きずっている状態。陸翔はまだ混乱中なのか、いつも以上に肌が青白かった。目は虚ろで全然焦点が合っていない。



「あ、うん。なんでか、わかんないけど……とりあえず、味方??」

「なのかな~? あっちのチャラい感じの兄さん……マジでザクロっちのご先祖様?? めっちゃ若くない?? チート過ぎて怖~~」

「まあ、うん。陸翔、離さない?」

「ん? あ、ごっめーん!!」



 自覚無しで引き摺っていたらしく、呉羽が慌てて開放しても陸翔は完全に気を失っていた。おそらくだが、幾らか気に懸け始めた少女の変貌ぶりと体型が整った柔らかさがダイレクトに伝わったのだろう。生前で妻子持ちだったのなら、女性との関係はきちんと持っている。なら、久々の感触に感情の許容範囲を超えたのか。割と初心だなと感心してしまう。



「とにかく、あの野郎は……ガチで、柘榴の先祖とやらだ。術の精度がめちゃくちゃなのに、『クリア過ぎる』。単純な動作で、あそこまで精密に処理出来んのは相当な手練れだ」



 非常に悔しそうな表情をしているが、あれだけの魔法技術を見せつけられたのだから無理もない。まだまだ素人の域の柘榴ですらそう思うくらい不知火は異色過ぎた。今は夜光と浅葱らのところに居て、何か魔法を使おうとしていた。



「とりゃえず、ワレぇがこいつを保護したる」



 と言うなり、指を鳴らした。あたり一帯、鋭い音が響くが空気が揺れたような感なくを覚えた以外に何もない。あれだけの所作でいったいどんな魔法を施したのか。夜光が浅葱らに大丈夫たと伝えてから、進行は早かった。貫だけは残る指示を出して、浅葱と駿(すぐる)は工作員の身体を縄でぐるぐる巻きにすれば、残った切れ目を通って出て行った。無事か心配だが、誰も声をかけないから大丈夫なようで。


 不知火は、ふいに柘榴へと振り返ってから人懐こい笑顔になってこちらに移動してくる。



「な、なにか……?」



 真正面に立つと、貫より背の高い男性に見下ろされて少し怯んだ。不知火は笑顔のまま柘榴の手を取り、包み込んでからさらに口角を緩めて。



「おじーちゃんって、呼んでもらえん?」

「「「は??」」」

「やて、いちおー先祖やし? そんくらいええやん? ワレぇのこと、なんでも教えたるから~~」



 まためちゃくちゃな要求をするが、この事態収束のたあめにはそうするしかない。貫らに目配せしても、諦めろと言う視線を寄越してきただけだった。







次回はまた明日〜

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