88 魔法科学×魔法好きクォーターエルフ=実験・実害?
食事の後は、エレオノーレさんが考察した魔法科学の実験だ。
「早速魔力を補填してみるわよ!」
ワクワクとウキウキを足して二乗したくらいのイイ笑顔で、剣をテーブルに乗せると、早速魔石部分に触れる。
満面の笑顔のエレオノーレさんは眩しいぐらいに輝いて見えた。
「そのままの魔力で良いのか、属性に合わせた魔力が良いのか、そもそも補充出来ないのかわかんないけど、とりあえずそのまま入れてみるわね」
実験結果を記録する様に、と俺に紙の束を手渡してきた。
大人しく受け取って日付、場所、時間、等を明記して実験結果をメモしていく。
高校の科学部時代を思い出すわぁ。
美術部との兼部で大変だったんだよなぁ……。
過去の部活遍歴を思い出していたら、エレオノーレさんの弾んだ声で現実に引き戻された。
「じゃあいくわよ」と勢いよく魔力を放出し始める。
キラキラと光の粒が溢れたーーーと同時に剣が発火した。
……と、言うより魔法剣が発動した、と言う方が正しいのかな?
慌てて剣を持ち上げて引き離したが、木製のテーブルだったので、ハッキリと剣の形に焦げていた。
【鑑定】で確認すると残りの使用可能回数が六になっていた。
結果を告げるとエレオノーレさんは困った素振りも見せず、成程成程、と頷くだけだった。
「ぎゃーっ!オレのアレクサンダーが〜っ!!」
オーランドが悲鳴を上げながら頭を抱えて、簡易魔法剣を見つめて泣いている。
アレクサンダーってもしかしなくても簡易魔法剣の名前か?
剣の名前っていうより人の名前じゃね?それ。
魔石に触れて火を消すと、「じゃあ次は火属性の魔力ね?」とジャックに剣を持たせて、属性を付けた魔力を気軽に流し込んだ。
結果は、再度魔法剣の発動。
なんとなくさっきより炎が大きい。
結果とは別に『火属性の方が大きな炎を出せる?』とメモを取った。
やっぱりと言うかなんと言うか、使用可能回数は減った。
オーランドは正に気絶寸前。
息も絶え絶え。
そっとジャックが後ろから脇の下に腕を入れて、支えてやっている。
「……ハッ!返せぇっ!オレのアレクサンダーを返せ〜っ!」
放心から復活すると、ジャックの腕の中で泣き叫びながら、腕を振り回し始めてしまった。
それを見て、流石に気まずくなったのか、エレオノーレさんからそっと剣が返された。
スンスン鼻を啜りながら剣を抱き締めるその姿は、いじめられた子供そのものだった。
これ以上の実験はムリかなーという、諦めムードになったが、ヤンスさんが俺の肩を激しく叩いて衝撃の一言を放つ。
「キリトちゃん、アレの魔法の補填方法【鑑定】出来ねぇの?」
「「「それだ!」」」
皆んなでヤンスさんを指さした。
魔法の込め方を知りたいと、強く意識しながら【鑑定】をしてみる。
(ついでにこの魔石の作り方もわかったりしないかなー?)
そんな事を考えていると、お馴染みのウィンドウが現れた。
汎用簡易魔法シリーズ用魔石
魔石に向かって封じ込めたい魔法を放つ事で
使用回数の補填が可能。使用回数が残ってい
る状態で次の魔法を入れてしまうと摩耗し易
い。できるだけ使い切ってからの補填が望ま
しい。
現在入っている魔法と違う魔法を込めたい場
合は一度全て使い切る必要がある。
魔石の色が濁り、発動した魔法の威力にムラ
が出始めたら替え時。
規定のサイズにカットした魔石に汎用簡易魔
法陣と発動ワードを刻み込んで作成する。
魔石の属性や耐久値はそもそもの魔物の強さ
に依存する。
無事、補填の仕方が判った。
説明の横には封じ込める魔法陣と、発動ワードの書く場所等が画像で載っていて、できる出来ないは別として、せっかくだから書き写しておいた。
あまり複雑な模様は無いけど、幾何学的な模様が沢山あり、見本無しには絶対書けない魔法陣だ。
コンパスや定規を使って漏れの無い様にきっちり確認する。
確認が終わると、すぐにエレオノーレさんがその紙を奪い取り、夢中で見始めてしまった。
オーランドには補填方法をきっちり説明して、実験の了承をもらったが、ここで問題が発生した。
エレオノーレさんが魔法陣に夢中で、どんなに声を掛けても全く動いてくれない。
肩を掴んで揺すってもびくともしないってなんなんだ。
仕方なく、俺が魔石に向かって火炎を(控えめに)放つと、魔石の中に吸い込まれる様にして火が消えていく。
【鑑定】して確認すれば、一度の魔法で使用可能回数が十回になっている。
たった一度で満タンになるという、とても便利な仕様であるらしい。
というか、ほとんど使い切ってから補填しないと魔石が摩耗するってスマホのバッテリーかよ。
「キリトォ……ッ!!信じてたぜぇっ!!」
「え?!ちょっと!なんで勝手にやっちゃうのよ!!」
オーランドは狂喜乱舞して、簡易魔法剣ことアレクサンダーを抱きしめて踊っているし、魔法の発動に気付いて顔を上げたエレオノーレさんは、自分がチャージしたかったのだと地団駄を踏む。
俺はエレオノーレさんにめちゃくちゃ怒られて(理不尽!)、オーランドは魔法剣を使ってこいと蹴り出されてしまった。
「喜んでー!」と、何処ぞの居酒屋みたいな掛け声で飛び出していくオーランドを見送ったヤンスさんが「別に敵を倒さなくても素振りでも、試運転とかでもよかったんじゃねえ?」とエレオノーレさんに聞こえない様に呟いていた。
ダヨネー……。
長かったエレオノーレさんのお説教(という名の八つ当たり)が終わり、オーランドを待つ間に、折角作り方も分かった事だし、オオイワトカゲの魔石でカットにチャレンジしてみようとエレオノーレさんに提案した。
決して意識を逸らさせようとかそういう思惑は無い。
……ちょっぴりしか。
エレオノーレさんに『魔石に魔法陣を刻む方法』を知らないかと聞くと色々知っていた様で、めちゃくちゃ早口で、色々説明し始めた。
しかしながら、専門用語が大量に飛び交いまくっててさっぱり分からないので、丸々ぶん投げてお願いした。
それに気を良くしたのか、鼻歌を歌いながら、変わった色の羊皮紙にキラキラと不規則に色が変わる不思議なインクで、俺の描いた魔法陣を写していく。
なんか昔従姉妹があんな色のペン持ってたな。
ラメが入ってて、色がまだらになるやつ。
確か星座の名前とかが付いてた気がする。
エレオノーレさんが魔法陣を作ってる間に、俺は魔石をカットする事にした。
オオイワトカゲの魔石自体はゴツゴツとしたオレンジっぽい透明の石だ。
野球ボールより一回り小さいかな?くらいの大きさで、琥珀とかそんな感じの色合い、小さな石がくっついて球体っぽくなってる感じだ。
翻って、汎用簡易魔法シリーズ専用魔石は、500円玉くらいの大きさで、片方が平らで、片方がドームの様な形。
多分オオイワトカゲの魔石を綺麗に真球にして、真っ二つに割れれば、形はほぼ完成じゃないかな?
サイズの微調整は必須だろうね。
さて、どうやって真球にするか……。
いつも俺不運を読んでくださってありがとうございます。
ブックマーク、評価、とっても嬉しいです!
これからも励みに頑張っていきます♪
途中で出てくるキラキラインクのペンは、サクラクレパスのティアラって言うラメ入りカラーペンの限定シリーズだったはずです。
星座の名前が付いていて、自分の星座のペンを買うのが流行っていた記憶があります。
もう20年以上前の話なのでうろ覚えですが……(笑)
先日ずっと使っていたiPhone8のホームボタンが壊れてしまいました。
俺不運のプロットから本文、設定資料に各種設定まで全てがその中に入っているのに……。
新しいスマホに変えましたが、何故か内容が引き継がれず、手作業で写しています。
更新に影響が出ない様に頑張りますが、もしかしたら落としてしまうかもしれません。
あらかじめご了承下さい。




