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85 お宝の仕分けと魔法剣

 出てきた物を【アイテムボックス】にとりあえず突っ込んで、安全地帯まで移動した。

 詳しい説明は後でするから安全地帯まで移動しよう、と伝え、探索魔法のマップにピンを刺して(やったら出来たよ。ほんと便利だね)真っ直ぐにナビすると、皆から変な目で見られた。

 俺の探索魔法について詳しく知っているのはヤンスさんだけだから仕方ない。

 ……のだけどなんでヤンスさんもそんな目で俺を見るんだ?

 「魔法でちょっと……」と誤魔化して、ガンガン進んだ。


 もう、流石に色々伏せて説明するのが難しいので、オーランドに確認してから、デイジーに俺が【鑑定】出来る事を伝えた。

 デイジーは「なんとなくそうなんじゃないかなって思ってました」とため息一つで簡単に信用してくれた。

 依頼主とか、ギルドとかにバレない様にしましょうね、と他のメンバーを見ながら言っていたので、バレバレだったのかもしれない。


 さて、大前提の共有ができた事で、改めてマジックアイテムの説明に入る。

 【アイテムボックス】から一つずつ取り出してざっくり説明しながら並べていく。


 まず、三階層で出た物が……

 ・睡眠防止(弱)のポーション

 ・麻痺防止の指輪

 ・毒耐性(弱)の手袋


 次に、四階層で出た物が……

 ・洗浄の魔法書

 ・浄化の魔法書

 ・回復の魔法書

 ・汎用簡易魔法シリーズ用魔石 赤(8/10)

 ・汎用簡易魔法剣製造アタッチメント


 合計八点だ。


 睡眠防止のポーションは、先に飲んでおくと眠りにくくなるっていう効果の微妙なポーションで、相手が睡眠の魔法や、睡眠毒を使用する事がわかっている時くらいしか、使えなさそうだ。

 このポーションと、隠し部屋から出てきた物以外は、比較的普通のマジックアイテムっぽい。

 普通のマジックアイテムっていうのがなんなのかはよくわからないけどね。


 麻痺防止の指輪は、シンプルな銀のリングの内側に緑の魔石が嵌め込まれた物だった。

 麻痺に掛からない訳ではなく、効果を軽くする、程度の様だが、無いよりは遥かに良い。

 これに関しては、満場一致で、一番危険なヤンスさんが使用する事になった。

 毒耐性の手袋は、オーランドかジャックに着けてもらいたかったのだが、サイズが小さく、またデザインが無骨であった為、協議の結果俺が着ける事となった。

 こう、なんというか、小学校低学年男子の読む、転がる音の月刊雑誌のキャラクターが着けている手袋感があって、厨二感溢れていて、うん、とても恥ずかしい。

 いや、着けるよ?着けるけどさ……ねぇ?


 魔法書は某ゲームの様に、読んだら消えたりする訳ではなく、単純に参考書みたいな、知識が書いてあるだけの本なので、魔法が使えるメンバーで時間がある時に読んでいこうと思う。

 正直、マジックアイテムか、と言われたら微妙な気がするが、こちらではマジックアイテムに分類されるらしい。

 目をギラギラさせたエレオノーレさんが、「私!私が一番に読むんだからね!」と本を胸に抱いて離さなかった。

 早速、読み始めようとするエレオノーレさんから、ジャックが鮮やかに本を取り上げて、「本、話、終わってから」と優しく嗜めていた。

 なんだ?アレが男の包容力とか、甲斐性とかいうやつなのか?

 ……真似できる気がしない。


 で、最後にヤバめな物、二つ。

 汎用簡易魔法シリーズ用魔石 赤 と 汎用簡易魔法剣製造アタッチメントだ。

 こいつらは、名前からして厄介事の臭いがプンプンする。

 でも、ものすごく有用なんだよ。

 なんてったって、普通の剣に使えるし、魔力のない人でも使用できるっていうんだから。

 しかも触って発動ワードを言うだけで良いとかいう、とても簡単で、簡易的な動作だけ。

 取り付けには魔力がいるけど、そんなの魔力のある人間がやれば済む事だし、魔法が使える人間が一人増えるだけで、やれる事が大幅に増えるんだから。

 正直、ハンターであれば、特に剣士であれば、どれだけお金を出してでも、欲すると思う。


 改めて確認したところ、『汎用簡易魔法シリーズ用魔石 赤(8/10)』の『8/10』は魔法を使用できる回数らしい。

 つまり全十回使用できる内、既に二回は使用されているのだろう。

 誰が使ったか、は、判らないが。


 とにかく、変な呪いとかも無く、魔力無しでも使用できる為、一度オーランドの予備の剣に取り付けてみる事になった。


「大事に扱ってくれよ〜」

「予備なんだからいいでしょ!最悪ダメになったなら私のお金で買ってあげるわよ」


 半泣きになりながら、未練がましく剣を掴んだまま離さないオーランドから、早く実験したいエレオノーレさんが剣を奪い取る。

 ほら早く、と押し付ける様に手渡された剣に「オレの……オレのぉ……」と手を伸ばすオーランド。

 エレオノーレさんの視線に押される様に、アタッチメントにちょろっと魔力を通すと、噛み合わせ部分がシャっと音を立てて広がって外れた。

 剣の鍔の上から、挟む様に合わせると、シュッと縮んでピッタリ引っ付いてしまった。

 接続部分が少し変形していて、元の剣と一体化した様になっている。

 少し振ってみてもガタつきなども無く、念の為【鑑定】しても特におかしな異変は起きていなかった。

 視界の端に涙目のオーランドが見えたが、見なかったことにする。

 その横のエレオノーレさんの視線の方が怖かった、とだけ記しておこう。


 そっと魔石を填めると、ほんの少しの抵抗とカチッと嵌った感触の後、ブゥゥン、と古いパソコンが起動する様な音がして、一瞬だけピカピカと光った。

 これまた、振ったり押したりしても全く外れる様子は見られない。

 こちらも特におかしな異変は起きておらず、「見習い鍛冶師の剣(秀作)」が、「簡易魔法剣(火炎)」に変わっていた程度だ。

 簡易魔法剣にしようとしているのだから、変化してもらわないと困る所だよな。

 無事に変化してくれて良かった。

 魔石や、アタッチメントの取り外しには、魔力が必要なので、戦闘中にすぐ切り替えたり出来ない様なのだけど、簡単に外れたりしないのは助かる。


 取り付けが終わった剣を渡すと、オーランドにもぎ取る様にして奪い取られ、あちこち細々と確認している。

 刃の先端部分なんか誰も触ってないぞ!

 点検が終わったのか、皆から少し離れて剣を構える。

 二度、三度、重心を確かめる様に素振りをすると、目をキラキラさせて戻ってきた。


「おい!コレすげぇよ!鍔に重量が乗って使い心地が変わるかと思ったけど、今までと全然変わらずに使える!コイツ自体に重さが無いんじゃないか?!」


 お気に入りの合体ロボに、カスタムアイテムつけられた時の弟みたいな反応だった。

 さっきまでの悲壮感、どこ行ったよ。


「発動ワードは『炎よ』だってさ。魔石にちょっとでも良いから触れながら発動ワードを唱える事で、剣が火を纏うらしい」

「わかった!」


 反復横跳びレベルにしゅぱっとさっきの場所に戻って、オーランドが「炎よ!」と唱えると、本当にアタッチメントから炎が出てきて、剣に纏わり付いた。

 竜を探すRPGの炎の剣を思い起こさせるソレは、確かに「魔法剣」だった。


「マジで出やがった……」

「わははははははっ!」

「何それそんなマジックアイテムなんて聞いた事も見た事も無いわ何をどうしたらそんなぶっ壊れ性能になる訳?しかもブツブツブツ」


 まるで剣自体が燃えている様に見えるそれに、ドン引きするヤンスさんと、大声で笑いながら剣を見つめるオーランド、小声の超早口でずっと何かを喋っているエレオノーレさんは怖いのでそっと視線を逸らしておいた。

 マジックアイテムの仕分けが終わった後、食事を作り始めたジャックとデイジーの二人も、ポカンと口を開けて見ていた。


 何度か素振りをしても消えず、もう一度魔石に触れると静かに消えて、表示が『7/10』に変わっていた。

 魔力無しでも魔法剣が使用できる事に、大はしゃぎするオーランド。

 詳しく調べたいと騒ぐエレオノーレさん。

 それを抑えるジャックさん。

 動揺した様に、料理を作り、折角切った野菜をひっくり返すデイジー。

 そして俺は、ヤンスさんに首根っこを掴まれて、説明を求められていた。


「キリトちゃん、あれ、何?」

「な、何と言われても、見たまんま、剣を魔法剣にする為のマジックアイテム、なのでは……?」


 冷たい汗が噴き出てきて、膝や肘がガクガクする。

 なんだろう、今までで一番、ヤンスさんから圧を感じる。


「あれ、今後も出てくると思う?」

「こ、ここで出てくるかは分かりませんがっ、『シリーズ』や『汎用』って明記されていましたし、可能性は、あります」


 低く、抑えられた声音からは、感情が窺えない。

 俯いているのでヤンスさんの表情が見えない分、余計に怖い。

 吃りつつ、可能性がある、だけ答えるとーー


「だよなーーーー?!」


 ヤンスさんが満面の笑みで言い放つ。


「へ?」

「いや、さっき説明聞いてた時から絶対そうだと思ってた!どう考えてもあるよな?!あるよなっ?!こんな便利な物、絶対高く売れるじゃん?はーっどうしよ?!これ、もう一個でも出てきたら大儲けじゃね?!」


 ポカンとした俺を置き去りに、超絶早口でめちゃくちゃ嬉しそうに、だーっと語るヤンスさん。

 さっきまでの威圧感とかは、興奮を抑えていたから?


 オーランド、エレオノーレさん、ヤンスさんの興奮は食事の時間になっても治らず、折角デイジー達が作ってくれたご飯だったのに、味わう余裕もなく終わってしまった。

 食事が終わった時には、もう深夜を回っていたので今日はこのまま休む事になった。

 三人の天幕の中からは、長い間ボソボソくすくす、声が響いてきていて、ちょっと怖かった。


 いつも『俺不運』を読んでくださってありがとうございます。

 いいねやブックマーク、評価本当に嬉しいです!

 ありがとうございます!


 今回キリが悪く、少し長くなってしまいました。

 二つに分けた方が良かったかもしれないな、とも思いますが、何かご意見などございましたら是非お聞かせください。



 以下は、忘れない為の覚書です。

 基本的には皆んなで分け合うスタイルの『飛竜の庇護』達です。

 あんまり活躍してないマジックアイテム達ですね。

 パッシブ効果の物も多いので、今後もあまり説明には出てこないかもしれません。


配分後の各自のマジックアイテム(覚書)


オーランド

・物理防御(腕輪)

・汎用簡易魔法シリーズ用魔石 赤

・汎用簡易魔法剣製造アタッチメント


ジャック

・物理防御(腕輪)

・治療のバングル


エレオノーレ

・魔力上昇の3点セット


ヤンス

・風のカフス(身体能力を上げる、移動や体捌きのサポート、弱いウィンドカッター)

・解毒のアンクレット

・麻痺防止の指輪


デイジー

・祈りの指輪

・身守りの髪飾り


霧斗

・体力回復の指輪

・身代わりの腕輪

・睡眠防止(弱)のポーション

・毒耐性(弱)の手袋


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