表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/262

61 孤児院からのクエスト依頼

「ところで、奥様がご病気だとうかがったのですけれど……」


 エレオノーレさんが遠慮がちに問い掛けると院長先生は渋い顔になった。


「ええ、薬さえあれば治るのですが、材料となる素材を手に入れる事が大変に難しく、出来上がった薬も一般的には販売されていないのです」


 満月の夜に一時間だけ咲く花の蜜と、新月の晩に実をつける薬草。

 この二つがあればすぐにでも薬を作れるらしい。

 普通に販売されていない薬の作り方ってわかっているものなのか?

 この院長先生は一体何者なのだろう?


「寄付で頂いたお金で申し訳ないが報酬はお支払い致します、どうか、どうか採集してきてはいただけませんでしょうか?」


 疲れの滲んだ落ち窪んだ目でこちらを見つめる院長先生にオーランドが言い放つ。


「金なんて要らないよ!その金はこの孤児院を立て直すのに使ってくれ!」


 だよなぁ。

 オーランドならそう言うと思ってた。

 ハッ!こんな時に飛び出てくる人が!と振り返るとヤンスさんは面白くなさそうに横を向いていた。

 俺の視線に気がつくと口パクで「空気くらい読むわバーカ」と言われた。

 ひでぇ!


「代わりに暫くここに滞在させてもらってもいいだろうか?あとオレたちの拠点に出来そうな物件に心当たりはないか?」


 これこれこういう感じなんだが、と簡単に物件の条件を並べ立てていく。

 そこでぶっこむか?!

 帝都でも無いって言われた事がよっぽどショックだったのだろうけどお金が無い無いって言ってた人に物件の事を聞くなんて……


「お引き受け下さるのならどれだけ滞在頂いても構いません。ただ、大変申し訳ないのですが、私には物件に心当たりはありません」


 だよねー


「ですが……」


 ですが?!これはもしかして?!


「街道の向こうの森は、自分達で切り拓いた分は地税だけで自分の土地にできるらしいのです。いっその事一から作るのも良いのではないでしょうか?」

「「「「「「!」」」」」」


 申し訳無さそうに院長先生は言うが、コレはアリなんじゃない?チラリとみんなを見ると同じ事を考えていたようだ。

 一瞬で皆の意見がまとまった。

 オーランドは院長先生と固く握手した。


 翌日からは、薬の素材を集める為の情報収集と、拠点の為の情報収集を始めた。

 デイジーは孤児院のお手伝いをしつつ、採取する花と薬草の勉強をする。

 俺もスケッチをとらせてもらう為に図鑑を見せてもらったが、とても素晴らしいボタニカルアートの植物図鑑だった。


 他の皆は街に行き、院長先生が言っていた事が本当か、申請に必要な書類や掛かる金額などを調べて、申請を出していた。

 許可が下りれば森を切り拓いていくそうだ。

 ヤンスさんは途中でちょろっと抜け出して腕の良い大工さん達の情報を集めていた。


 三日後には許可も下りて、みんなで森に向かう。

 最低限欲しいと思われる範囲を杭と縄で囲って横槍を防ぐらしい。

 俺も手伝おうと森に入り、ヤンスさんに言われるがまま、他の人に見えないエリアをウォーターカッターである程度カットしたら、追い出されてしまった。

 あとは役に立たないから孤児院を手伝ってこいとのことだ。

 俺の扱いが雑すぎる。


 拠点予定地は北門からも孤児院からも大体十分程度の距離でそんなに遠くない。

 間に大きな街道が通っているので子供が横断するのは難しい。

 なにかあったら危ないので歩道橋でも作ってみようかな?

 でも街道の上を通すから申請とか必要かもなぁ……後でヤンスさんに確認してみよう。

 横断のタイミングをはかりながらつらつらと考える。

 階段だと荷物を運ぶ時大変だからゆるやかな坂道で登れる様にしてしまおう。


 孤児院に着くと、ずっと気になっていた雨漏りする場所を土魔法で修繕する。

 脚立を借りて、シミの出来ている天井に触れるとヒビが入っているのがわかった。

 ヒビが入っているところだけで無く、その周辺も雨水で傷んでいるだろうから、半径一メートル程のレンガを硬化レンガに変質させて、その隙間を漆喰の様な素材で埋める。

 手を当てた所からジワジワと変わっていくのが良くわかる。


 脚立を持ってきてくれた子供に他の雨漏りの箇所を教えてもらいながら少しずつ修繕していく。

 子供部屋や寝室など連れて行かれれば他の子供たちの目にもつく。


「にいちゃんすげえな!おれもそのまほう、つかえるようになりたい!」

「ねぇねぇ、教えてよー」


 やり方を教えてくれとあまりに大量に押し寄せたので、院長先生に相談したらその日の夕食後には魔法教室が開かれる事になった。

 びっくりするくらい素早い段取りだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ