表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/262

49 ホームを探して

 本日は快晴。

 皆でギルドに拠点の相談と、帝都方面のクエストがないか調べにいく。

 案の定、拠点に適した建物は無かった。

 大きすぎるか、小さすぎるかの二択だった。

 しかも大きい方は賃貸しかダメで、三年後には返さなくてはならないのだとか。

 不在にしている間の賃貸だそう。


 無いと嘆いても仕方ないので、帝都に向かう依頼を探す事にした。

 期待が膨らみまくっていたオーランド、エレオノーレさん、ヤンスさんの三人は、ベッコベコに凹んでいる。

 使い物にならない三人を放置して、俺とジャック、デイジーで掲示板を確認する。


 幸い、近日中に帝都に向けて出発する商人の護衛依頼があった。

 ジャックが太鼓判を押してくれたので、リーリエを避けて、別の受付嬢に詳しく訊いてみる。

 なのに、何故だかリーリエが出てきて説明を代わってしまった。

 二人ですぐに距離を取ると、ジャックが前に出てくれた。

 ありがたや。


「あーん、そんなに逃げなくてもいいのにぃ」


 至極残念そうに、色っぽい溜息を吐くと、色々詳しく説明してくれた。

 アルスフィアットから、鉱石や精製したインゴット、こちらで作成した武器を、帝都に住むドワーフ達に届けて、替わりに帝都の武器を購入して帰る予定なのだとか。

 不定期に、極稀に行う取引なので、専属の護衛はいないのだそう。

 取引先での滞在期間が長い為、片道だけの護衛という珍しい形態で、報酬は護衛にしては低めだ。

 しかし、帰りの依頼を出した時にも請け負えば、帰りは割り増しで、優先的に雇ってくれるそう。

 これに関しては、俺たちにとっても都合が良い。

 良い拠点が見つかれば、そのまま居着くかもしれないからな。


 簡潔に説明をして、オーランド達に了承を得ると、クエストを受ける手続きを行う。

 リーリエは「はやく帰って来てねー」などと言いながら手を振って見送る。


 どうか、帝都に良い物件があります様に。

 明日、商人さん達にギルドから連絡をして、後日詳しい説明と顔合わせがある。

 そこで出発の日取りや、商隊規模の擦り合わせを行う……予定だった。


 バァンっ!


 乱暴に開かれた扉が、大きな音を立てる。

 三十代くらいの身なりの良い男性が飛び込んできた。


「リーリエ!まだ決まらないのかよ!」



 ーーー依頼主当人が来なければ。




 依頼主はエーミール。

 武器商人の三代目で、次期商会長のお坊っちゃんだ。

 ちなみにリーリエの幼なじみだそう。

 歳は三十二歳。

 ススキ色に近い、くすんだ金髪を短く刈り込んで、顎髭をちょこっとだけ生やしている。

 正直似合っていない。

 むしろ、キチンと剃り落として、スッキリさせた方が清潔感が出て、おば様方あたりに大人気になりそうだ。


 彼は、今回初めて一人で商談を任されて、ヤル気に満ち溢れているらしい。

 今までは、ベテランの商会員が付けられていたそうなのだが、父親である商会長からやっとお許しが出たらしい。

 メンバー選抜から、商材、日程、交渉など全てを任されたそうだ。

 良くも悪くも丁度良いからと、ギルドの会議室を借りて、そのまま摺り合わせを行う事になった。


「よろしくな!」


 リーリエに「今決まった」と教えられた彼、にっこにこと笑み崩れるエーミールさんには、正直不安しかない。

 同じ様に感じたのだろう。

 ヤンスさんが、厳しい顔で、あれこれ質問している。

 元々、お目付役のベテラン商会員が居る間に、ほとんどの業務はこなした事があるらしい。

 質問には淀みなく答えていて、少しホッとした。

 次々に、確認事項が埋まっていく。

 契約料金の交渉はヤンスさん相手に一歩も引かず、依頼書通りになり、少しだけエーミールさんを見直してしまった。

 流石商人だ。


 エーミールさんは、質問にすらすら答えられた事に気を良くしたのか、酒を持っていければなぁ、と愚痴を溢す。

 こちらで作られた、帝都では珍しい酒で、ドワーフ達の機嫌を取りたいらしい。

 ただ、酒は瓶に入っていて、とても割れ易い。

 途中がたつく道があるので、馬車では樽とかでなくては、持っていけないそうだ。

 樽は重くて、場所を取る上に、街から持ち出す際にも、持ち込む際にも、関税が掛かるのだとか。

 同じ量の酒瓶は、関税が掛からないという不思議。


「あの、だったら俺が持ちましょうか?【アイテムボックス】があるので割らずに持っていけますよ?」

「本当かいっ?!」

「ちょちょちょっ!ちょーーーっと待った!」


 ガタッと席を立ち上がり、身を乗り出すエーミールさんと俺の間に、慌ててヤンスさんが飛び込んだ。

 そこからはまた、アイテム運搬を含めたほとんど決まっていた、報酬の見直し交渉が始まり、ヤンスさんが頑張った。

 擦ったもんだがありつつ、料金を最初の額に抑える代わりに、必ずベテラン商会員を一人入れろ、とゴリ押したようだ。

 とはいえ、別途で運搬料は戴く(俺個人が運搬契約をする形、だそうだ。何が変わってくるのか俺には分からないけど)

 荷物を預かるだけなのに、大銀貨三枚(約三十万円)はふっかけすぎだと思う。

 そして俺は、交渉事の時には安易に口を開くな、と口酸っぱく叱られた。

 ごめんなさい。

 いつも「俺不運」を読んでくださってありがとうございます!

 評価、ブックマーク、いいね本当に嬉しいです。

 ありがとうございます!


 帝都編スタートです。


 リーリエお姉さん再びで、書いていてとても楽しかったです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ここまで来ると主人公の呪いに思考鈍化も含まれていそう。警戒心ゼロで初対面の相手にアイテムボックスのスキル持ちだって自らバラすってヤンス達の注意をガン無視してることになる。仲間意識が無自覚にな…
[一言] 主人公のうっかりが続くようであれば読むのを辞めるでしょう。 だいたい、仲間が心配して公言するなって助言してるのに口を滑らせてスキルの件を話すのは人としてどうかと。 成人してるとか社会に揉…
[気になる点] うーん、これはヤンスさんが怒るのもやむ無し!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ