43 いいわけ
「ちょぉっと、これ、どういうことなのぉ?!」
「だから裏に案内させたんだよ」
鑑定士だけでなく、リーリエさんも悲鳴を上げる。
「絶対違う石が混じってるって思ってたのにこれ全部蛍石だなんて!」
座り込んで頭を抱えている。
他の石もあれば出して欲しいとの事だったので、幾つかの皮袋を追加で出していく。
全てチェックし終わった鑑定士のおじさんが、鋭い眼で俺とデイジーを交互に睨む。
「どっちだ?」
これを仕分けしたのはどちらだ、と言い直して袋を持ち上げる。
「素人には蛍石と紫水晶の見分けが難しい。だがしかし、これは完璧に仕分けされている。うちの見習い達ですら難しいものまで、だ」
ともすれば、激怒しているとでもとれそうな程の静かな圧を感じる。
そんなおじさんの迫力に、デイジーは涙目で首をブンブンと横に振る。
消去法で俺だと判断したおじさんはこちらを見る。
チラッとオーランドを見ると小さく横に首を振る。
【鑑定】の事は言うな、という事らしい。
だよなぁ……言えないよねー。
「鑑定の勉強をしているんだ。方法については聞かないでほしい」
俺の気まずげな雰囲気で、何を誤解したのかおじさんは急に同情的な表情になり、こんなに幼いのにこれだけの知識と【アイテムボックス】持ってたら、そりゃあ色々あったんだろうなぁ、なんてぐずぐず鼻を啜り始める。
何か誤解がある、と伝えても、良いんだ解っているから、と訳の分からない返しをされる始末だ。
リーリエさんはハンカチをぐっしょぐしょにして、こっちを食い入る様に眺めている。
そのハンカチ意味があるのだろうか?
あと、無駄に目をギラギラにさせているのはなんでだ?
どうすんのこの状況。
なんとか納品を済ませてギルドを出る。
評価はなんと最高レベルだった。
ギルドのドアが閉まった途端に、オーランドとヤンスさん、エレオノーレさんが堪えきれない様に爆笑し始める。
「キリトの悲しそうな演技の上手いこと上手いことっ!ウフフッあっはっはっはっ!だめ、わ、わら、笑いが、とまんなっフフフフフッ」
「絶対悪い奴等に小さい頃からアレコレやらされてたって誤解したよなあれ!ハハハハッ!」
「フクククッ流石キリトちゃんっ!罪なックフッ男だねぇっあっはっはっはっはっ」
笑い転げる三人を冷たい目で見て、他人のフリをする事にした。
顔が少しだけ笑っているジャックとデイジーに、レジーナの店に行こうと誘うとすんなり移動し始めた。
三人はまだ笑っている。
バチが当たれば良いのに!
ーーーカコーンッ!
どこから飛んできたのか、お盆が当たった。
勿論、俺の頭に。
三人は更に笑い出した。
呼吸困難になりそうなくらいだ。
はいはいそうですか!俺が不運な事なんてとっくに知ってますー!フンだ!
お盆は向かいの食堂から飛んできた様だった。
どうやら夫婦喧嘩中らしく、フォークにナイフにコップなんかが飛び交っている。
何が理由かなんて知りたくないし、巻き込まれたくないので、そっと店の前にお盆を置いた。
きっと後で拾いに来てくれるよ。
待っててあげてな、とお盆に心の中で声を掛けると今度こそオリハルコンに向かう。
道中、過去に辛いことは本当になかったのか?大丈夫なのか?とデイジーに質問攻めに遭った。
心配してくれるのはデイジーだけだよありがとう。
ええ子や……デイジー。
いつも読んでくださってありがとうございます!
評価や、ブックマークがめちゃくちゃ増えていてビビりまくりつつ喜んでおります。
本当にありがとうございます!
次回は久しぶりのあの娘が出てきます。
ちょっと甘酸っぱく出来たら良いのですが、いかんせん自信がありません。
頑張りますので金曜日も霧斗達を是非よろしくお願いします。




