39 農村マヨネーズ
さて、農村で一泊する事に伴い、朝採れ卵を沢山頂いたので、植物油とお酢を使ってマヨネーズを作ってみることにした。
サルモネラ菌が怖いのでクリーン魔法で丸洗いしてから使ったよ。
詳しい分量なんて知らないから、味見をしながらの手探りだ。
勿論、混ぜたのはジャックです。
電動ミキサーなんてものは無いからね。
俺は、油を少しずつ入れる担当と、味見係をしたよ。
はじめの二回は失敗してしまった。
油を一度に入れすぎて分離してしまったり、お酢を入れすぎてすごく酸っぱくなってしまったが、三度目は美味しく作ることが出来た。
はじめは「卵を生で?!」という顔をしていたのに、味見させたら、オーランドが無茶苦茶気に入ってしまった。
「もう一本!もう一本だけだから!」
「さっきもその前も、前の前も同じ様に言ってただろ!もうお終いだって!」
畑で採ったばかりの胡瓜を、俺の抱えるマヨネーズの入った瓶に突っ込もうとしてくる。
体全体を使って隠そうとするも、スピードも腕力も体格も圧勝しているオーランドに為す術がない。
「オーランド、いけない」
ドタバタと暴れる俺たち二人を、ジャックはサッと捕まえて引き離す。
ジャックのクマさんブロックで事なきを得たマヨネーズは無事【アイテムボックス】に収納することが出来た。
大体の量がわかれば、あとは沢山作るだけだ。
大量に出た白身は、白い出汁巻き玉子になった。
俺が作ったんだけど、四角い卵焼き用のフライパンが無いから、端の方はスカスカになってしまったよ。
此方は、エレオノーレさんがいたく気に入り、ジャックにおねだりをしている貴重な姿が見られた。
大変に可愛らしかったが、ジャックからの視線も大変に怖かった、とだけ記しておく。
村の奥様方に味見させてくれ、と強請られてきゅうりと共に渡す。
一口食べるや否や、マヨネーズの瓶は取り上げられて、瞬く間に空になってしまった。
恐ろしく真剣な目で、作り方を教えてくれと迫られたので、追加の材料と引き替えに教えた。
お陰でしばらくはマヨネーズに困らない程度にたっぷり作れた。
綺麗に洗った新鮮な卵じゃ無いと危ないよ、と何度も繰り返し伝えておく。
生卵の危険性は奥様方も知っている様で安心した。
その後、宴と呼んでもいいくらいの規模の食事会が始まった。
俺は奥様方に囲まれて羽毛の活用について村長さんの奥さんから根掘り葉掘り聞かれたり、木工職人達に椅子やテーブルの使い心地について聞かれた。
羽毛に関しては、布団とダウンくらいしかわからない。
ちゃんちゃんこみたいにすれば子供や赤ちゃんにも着せやすいんじゃ無いだろうか?
木工職人達は、忌憚のない意見を、との事だったので希望を絵を交えて伝えておいた。
椅子は背もたれが欲しい。
折りたたみ椅子みたいな感じ。
あと、ジャックは壊れそうで座れなかった。
丈夫な素材か、大型化しないと体格の良いタンク役には厳しいかもしれない。
あとは一部を金属にするか、だね。
「テーブルは脚の高さを変えられるのは最高だけど、普通のパーティが使用するには大き過ぎるよ。便利だけど【アイテムボックス】が無ければ、運ぶだけで一苦労だと思う。軽くて丈夫な素材で、要所要所に金属で補強を入れて、簡単に解体と組み立てが出来るものにした方が売れると思う」
こんな感じで、とネジ式で組み立てれるテーブルの脚と折り畳めてコンパクトになる天板を絵に描く。
親方と作った若い職人が、食い入る様に絵を見つめてる。
「あとは逆転の発想で、馬車持ちのパーティを狙うとか?馬車に連結して、作業が出来たら便利だよね。普段はこんなふうに折り畳めて、必要な時にはパッと広げて、すぐ使える様にしてしまうとか」
キャンピングカーの要領で、馬車の後ろの部分からパタパタ開く様に机が出てくる絵を描く。
え?待って職人さん。
目が怖い。
怖いから!
もっとネタを寄越せってどうしたのーーー?!
俺が職人さんや奥様方にもみくちゃにされている間に、情報をくれたおっちゃんにはヤンスさんとオーランドが謝礼を渡してくれていた。
食事が終わった後も、なかなか寝かせてもらえず、正直、睡眠不足だ。
なんだかとっても眠いんだ、パトラッシュ……。
昨日、散々あれこれ話したのに、まだ話したそうにしているおばちゃんズと木工職人ズから、逃げる様に村を出て街に向かう。
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これからも霧斗達をよろしくお願いします。
2024.3.28 卵の扱いについてちょこっとだけ修正しました。




