34 お宝の分配とヘアアレンジ
ダンジョンの話が、一区切りついたので、改めてお宝の分配をする事にした。
まず、ロヤマル金貨を一人二十枚ずつで、残りの二百枚はパーティの財産に回す事に。
前回今回と、予想外の収入が多かったから、一人当たりの配分を控え目にしたそうだ。
とはいえ、ロヤマル金貨一枚で約百万円だから、とんでもない金額だけどね。
個人財産二千万円超えとかヤバすぎでしょ?
いったい何に使うのさ。
自分の分は、ヤンスさんが買ってきてくれた麻袋に入れて【アイテムボックス】へ。
ジャックが持ってきた木箱はそれぞれ『飛竜の庇護』、『オーランド』、『ヤンス』、『エレオノーレ』、『ジャック』、『デイジー』と名前が彫られていた。
それぞれに、ロヤマル金貨や余剰分のお金を纏めて、麻袋に入れて、詰めていた。
金額は枚数チェックして、メモを付けている。
エレオノーレさんが俺に預けた分も合わせてあるよ。
勿論、確認用のメモは二部ずつ作成して俺と各自で管理することに。
人によっては、普段あまり使わないアイテムも入れたりしている。
デイジーは、物凄く恐縮して、配分を固辞していたけど、自分の荷物買わないといけないでしょ?とエレオノーレさんに言いくるめられていた。
涙目で、プルプル震えながら金貨を受け取っていたので、「デイジーがぶつかってきたから見つかったような物だよ。ありがとう」とお礼を言うと、困った顔で「そんな事言われたら断れないじゃ無いですかぁ」とへんにゃり笑っていた。
……かわいい。
頭撫でたらダメかな?
換金しやすそうな宝石や、装飾品は、お金に困った時用に、だいたい値段が釣り合う様に、六等分に分けた。
これも箱の中に詰めていく。
とはいえ、こんだけお金があるのに、どうやって困るんだろうか?
賭け事とかかな?
換金しにくい高額な宝石や装飾品、インゴットは纏めてパーティの財産行きだ。
最後に、マジックアイテムだ。
頭に、恐らくとか、多分とか付けつつ、鑑定結果と、誰が着けた方がいいかを、口頭で述べていく。
まずは、物理防御の腕輪が二つ。
コレはオーランドとジャックにお勧めしておいた。
一定割合のダメージを軽減してくれたりするらしい。
複雑な模様の彫られた革紐で、百円玉位の鈍く光る銀色の金属が付いている。
あまり派手ではないし、革紐部分が長めに付いているから、男性でも装備しやすい。
次が、風のカフスだ。
これは身体能力を上げて、移動や体捌きのサポートをしてくれるし、魔力効率は悪いものの、魔力を込めると、前へ向かって弱いウィンドカッターが出る。
スピードで掻き回して、ヒットアンドアウェイな戦い方の、ヤンスさんこそ着けるべきだ。
渋い燻銀に、深緑の石がワンポイントで入っている。
複雑で精緻な、透かし彫りも入っていてめちゃくちゃお洒落だ。
んで、エレオノーレさんには、魔力を上げる指輪とイヤーカフス、サークレット、の三点セット。
コレは言わずもがなだ。
あとは、着けるかは任せるけど、骨折くらいまでなら治せる程度の魔法が込められたバングルだ。
ただし回数制限があり、結構重い。
ちょっと扱いにくいアイテムだ。
祈りの指輪は、デイジーに。
コレを付けて祈ると、神に祈りが届きやすくなるそうだ。
祈りの指輪は二つあったが、明らかに男物と女物のデザインだった。
あとは身守りの髪飾りだ。
何か強い攻撃を受けた時、一度だけ、軽減してくれるのだそう。
とはいえ、明らかなオーバーキルとかは守り抜けない、微妙なラインだった。
その他が、女王様のとんでも三点セットに、蝶のブローチ、体力回復の指輪と、解毒のアンクレットに、身代わりの腕輪だ。
体力回復は欲しいなって思うけど、蝶のブローチも欲しい。
そう説明して並べるとエレオノーレさんが体力回復の指輪と身代わりの腕輪、蝶のブローチを俺の前に置いた。
解毒のアンクレットは、ヤンスさんの前だ。
「え?俺もらいすぎ……」
「今キリトが説明した事が本当なら、コレで問題無いでしょ?」
「大丈夫だ!」
「イギナーシ」
「大丈夫ですっ!」
ジャックは笑顔で頷いている。
ありがとう、皆。
そして全員、自分の前にあるアイテムを身に付けていく。
オーランドとジャックは、片手じゃ装備し辛い為、お互いに結びあっていた。
エレオノーレさんは、三点セットだけ着ける様だ。
植物を模したデザインの三点セットには、それぞれに宝石の様な魔石が入っていて繊細で優美だ。
特にイヤーカフスは、耳全体に引っ掛ける様にして着けるタイプのデザインで、かなり華やかに見える。
バングルはジャックが付けていた。
成程、それはアリだな。
ヤンスさんは、カフスもアンクレットも装備済みで、体を動かして性能を試している。
俺は、ブローチを【アイテムボックス】に入れて、指輪を二つ着けたらお終いなので楽チンだ。
両手の中指に付けた。
デイジーは、髪飾りの位置に四苦八苦している。
「ねえ、デイジー。嫌じゃなければで良いんだけど、俺が髪いじっても大丈夫?」
「ええっ!?」
何を隠そう、俺は妹のヘアアレンジを何年も手伝っている。
ちょっとオツムが弱めな妹は、雑誌に書いてあるアレンジを読んだだけでは理解できないのだ。
ちゃんと写真で丁寧に解説してあっても、どうしてそうなった!って感じになる。
そして、髪をくしゃくしゃにした後で「おにぃちゃ〜ん!」と泣きついて来る。
初めから相談してくれたら良いのに、毎回自分で何とかしようとするのだ。
馬鹿な子ほど可愛い、の典型例だな。
うん。
うちの妹はオバカわいい。
「簡単なアレンジだから、多分デイジーもすぐにできる様になるよ」
痛くしたりしないから安心して、と言うと無言でこくこくと頷いていた。
了承を得たので、そっと櫛を入れて前髪とサイドを掬い取り、簡単な編み込みを行なっていく。
こめかみ辺りでマジックアイテムである髪飾りを使って留めた。
青い小鳥と四葉のクローバーのモチーフで、小麦色のデイジーの髪に良く似合う。
「はい、出来た。うん。似合ってる。可愛い」
仕上げて、前に回ってから見ると、本当によく似合っている事がわかる。
男に髪を触られる事に緊張して、真っ赤な顔でカチカチに固まっていたデイジーが泣きそうな顔でエレオノーレさんを見る。
「うん。言いたいことは解るけど本当に似合っているわ。とっても可愛いわよ」
はい。
エレオノーレさんの蕩ける様な笑顔、頂きました!
ありがとうございます!
デイジーもその言葉に照れた様に赤くなり、小さな声でありがとうございます、と返事していた。
何でかわからないけど、男どもが俺を変な目で見ていた。
見返すと、何でも無いと言うように手を振って、視線を逸らす。
なんだよ、何か問題あるなら教えてくれよ。
いつも『俺不運』を読んでくださって本当にありがとうございます。
いいねや、ブックマーク、評価大変励みにさせていただいております!ありがとうございます!
遅まきながら、いいねをいただいている事に気づいてテンションブチ上がっております。
今回はちょびっとだけ甘酸っぱいお話になってしまいました。
これからもどうぞ霧斗達ののんびりゆるい冒険をよろしくお願いします。




