19 おや?風向きがおかしいぞ。
食事をしながら俺の魔力量が多すぎる事と、魔法を使用する際の発光が無い事と、好戦的なさっきの実験の解説をさせられた。
「魔法の中で一番穏健だと言われる水の魔法であれだけの攻撃性を出せた理由を教えなさい?」
防具屋に着くなり半ば据わった目でエレオノーレさんに襟首を締め上げられた。
きゅっと締まって息が出来ない。
ジャックが困った顔でそっとエレオノーレさんの手に触れると、「ごめんなさいね」と言い添えられて離される。
ゲホゴホと息を整えた。
「ウォーターカッターは彼方の世界で宝石をカットする時水で切るっていうからそれを使用するイメージで」
「はぁ?!!なんで自称一般市民がそんな事知ってるのよ?」
実際にはちょっと違ったはずだけど、まぁイメージは大切だよね。
水を細く凄い勢いでビューッてすると切れる、と言い張る。
こちらでは技術は秘匿して独占するのが当たり前だけど、俺達の世界では技術を保護する法律があり、勝手にその技術を使えば多額の賠償責任を負わされる。
確かに秘匿される技術がないとは言わないが、そこそこに情報が溢れてて調べようと思えば結構なんでも調べられるんだよ、と。
正確性には欠くけど、人工の【鑑定】的なインターネットって存在があると説明。
器具とネットの利用料金さえ有れば誰でも使用できる、と言えば、またブチ切れられた。
理不尽だ。
エレオノーレさんは魔法についてとても詳しい自負があるらしく、悔しいのだとオーランドがこっそり教えてくれた。
だとしてもやっぱり理不尽な気がする。
「アイススピアや拘束パキンはアニメのイメージかな?水の状態変化で、アイススピアは凍らせだけだから問題ないでしょう?」
「まず氷を出せるところが問題なのよ!」
「お湯と何が違うんですか?水の温度を上げるか下げるかの問題ですよね?」
「〜〜〜ッ!」
中々上手く伝わらない様で、エレオノーレさんがさっきから怒鳴ってばかりだ。
地団駄まで踏んでる。
ストレスはお肌に悪いよ、とは流石に言えない。
ジャックに抱き抱えられて強制的に落ち着かされている。
横抱きにされて深呼吸。
ついでにジャックの胸元を嗅いでいる様に見えるのは気のせいだと思いたい。
ジャックのお膝の上から「さあ、続きをどうぞ」と言われましても……。
「拘束パキンは出力の制御が難しくて、まだ拘束には使用できない。例えばアリの討伐とかみたいなうじゃっと湧いて素材回収しなくて良いなら使えそうだなぁとは思うけど」
「なんなのアンタ……なんでそんな平然とそういう事言える訳?」
だからそうやってドン引くのやめてもらって良いですか?
どうやったらそんな物騒な発想って言われても、アニメや漫画で。
アブソリュートゼロ的なアレですよ。
俺が考え出した訳じゃないんだから良いじゃない!
某RPGの宇宙の星屑を敵にピンポイントで降らせるわけでもなし!
魔法を使用する際の発光は意味がわからなかったので聞いてみると、エレオノーレさんが見せてくれた。
小さな火を灯す魔法で、指先からキラキラと魔素が光り、零れて消えていく。
「普通は魔法を使うとこうなるのよ」
エレオノーレさんの説明にみんなが同意する様に頷く。
「え?それって無駄になった魔力ですよね?」
「は?」
俺はマナーブックで読んだ知識を話した。
魔法は魔力に方向性を持たせ、発動に必要な魔力を集めて発動させる事であり、サポートとして詠唱がある。
魔法の発動手順としては
1.純粋な魔力を属性のある魔力に変換する。
2.魔力に方向性を持たせる。
3.発動に必要な魔力を集める。
4.発動。
この最初の手順で、無駄に多く魔力を変換すると、発動時に使用しなかった魔力がキラキラ零れてしまうのだそう。
例えば発動に必要な魔力量が五だとすると、最初の変換で五以上変換してしまうと発動時にキラキラして、魔力を無駄にしてしまうのだ。
「逆に変換量が足りないと発動しないのでそこを見極めるのが難しいらしいです」
「……」
エレオノーレさんがとんでもない顔をして俺を見つめる。
それを追加説明だろうと判断してアレコレ言葉を重ねていく。
話せば話す程皆が、そしてエレオノーレさんが、すごい顔になっていく。
もうどないせーっちゅうねん!(のっと関西人)




