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14 ハンターはヤクザな商売らしい


 寝込みを女性に襲われ、皆に笑われて、揶揄われながらの朝食を終え、レジーナがまた自室にこもったところで『飛竜の庇護』と俺は真面目な顔して向き合っている。

 ちなみにレジーナの親父さんは店にいる。

 店番と商品作成らしい。

 まずはゴタゴタして、遅くなっていた護衛費のお支払い。


 一人一人にお礼を言いながら小銀貨を渡していく。

 この街アルスフィアットに入る時に両替してもらったからキチンと渡せる。

 本来なら袋に入れて、パーティリーダーにまとめて渡すらしいが、そんなのは関係ない。

 お礼はできる時にきちんと面と向かってするものだ、とばあちゃんに教わった。

 みんな呆れた様に照れながら受け取ってくれた。


 そしてここからが本題。

 彼らからとっても重要な話があるそうだ。

 六人掛けテーブルの席に着いて待つ。

 うー、あー…… んー?と何か言い辛そうにもごもごしているオーランドに、多分ここでお別れで、その話だろうとあたりをつける。


「皆さん次の依頼はどうされるんですか?」


 余りにも切り出しづらそうなので助け舟を出す。

 コレで次は○○をしようと思っているからバイバイって言いやすいだろう。

 コップを握る指に力が入る。

 でも笑顔は崩さないぞ。

 こんなに良くしてくれた人達を困らせたくはない。

 俺だってハンター登録出来たし、鑑定にアイテムボックスもある。

 魔法だって使える。

 マチルダさんだって居るし、良い宿も教えてもらえた。

 頑張れば生きていける環境は整っているんだ。

 甘えるな俺。


「新しくお仕事を受けられるならここでお別れでしょうか?ありがとうございます。大変お世話になりました。おかげで一人でもなんとかやって行けそうです」


 涙声にならない様に細心の注意を払う。

 にこり、と恐らくうまく笑えたと思う。


「〜〜〜〜っ!あーーっもう!俺は難しい話なんかできん。よし、言うぞ!キリト、オレ達のパーティに入らないか?」


 急に頭をぐしゃぐしゃに掻き回してオーランドが立ち上がり、言い放つ。


 ーーーオレ達のパーティに入らないか?


 大きく心臓が跳ねる。

 聞き間違いかもしれない。

 離れるのが寂しい俺が、都合良く受け取っただけかもしれない。

 だって俺は不運だから。

 やりたいな、欲しいなって思ったものほど離れていくんだ。

 ジワリと目頭が熱くなる。


「今回のクエストだってキリトが居てくれたから達成できたし、追加報酬ももらえる。キリトさえ良ければオレ達とパーティを組んでほしい」

「そうだぜ泣き虫キリトちゃん。ここで置いて行ったら寂しくてまた泣いちゃうんじゃないの?」

「泣きませんし!泣いてませんし!泣き虫じゃないですし!」


 優しく肩を叩かれて、目を合わせたオーランドが言葉を重ねる。

 しんみりした空気をぶち壊す様にヤンスさんが揶揄ってくる。

 おかげで涙は数粒転げ落ちたくらいで引っ込んだ。


「じゃあ、私達のパーティ『飛竜の庇護』の新規メンバーで大丈夫?」

「キリト、歓迎」


 ニコニコとビューティアンドビースト夫婦が俺の手を握ってくる。

 その上にパタパタとヤンスさんとオーランドが手を乗せる。

 まるで円陣みたいだ。


「こんな俺で良ければよろしくお願いします!」

「「「おう!」」」


 勇気を振り絞って言えば待ってましたとばかりに力強い声が返ってくる。

 そうして俺はCランクパーティ『飛竜の庇護』のメンバーになった。

 早速パーティ登録しにハンターギルドに向かう。


 昨日登録してもらったFランクのハンターカードを【アイテムボックス】から取り出した。

 丁度定期入れに入るサイズだったので、入れて、腰のリール付きカラビナに取り付ける。

 コレで落とす確率はグンと減る。

 え?もう落とさないんじゃないかって?

 いやいや、甘いな。

 俺の不運を舐めてもらっては困る。

 俺はこのカラビナやリールが壊れて定期を何度も落としている。

 皆も気をつける様に。

 緊急連絡先をスマホに登録しておくのは大切だぞ。

 まぁ、そのスマホもよく壊れるし無くなるけどな。

 最終的には各種連絡先覚えちゃったよ、もう。


 こまめにあるかどうか確認しながらハンターギルドに到着。

 中々デカい建物だ。

 三階建ての石造りで、無骨な窓に鉄柵が付いている。

 看板には剣と杖と盾が交差したマークが描かれていた。

 中に入ろうとしたところで、かららん、とドアベルが軽やかに鳴り、扉が開いた。

 中からは女の子三人と男二人の五人組が出てくる。

 いや、正しくはカップル二組に女の子一人って感じで、印象悪い。

 すれ違う時に日本人の性で、少し避けて会釈をしてしまった。


 そう。

 してしまったのだ。


 それを見たそのカップル達は急に偉そうな態度に変わる。

 わざわざ俺にぶつかって去っていった。


(はあぁぁぁっ?!!!なんっだ!それ!)


 ギッと睨むものの相手は既にかなり遠くまで行っていて、そこまで追いかけて謝罪してもらう程ではないので諦める。

 後ろを歩いてた女の子だけはぺこぺこ頭を下げていたし、我慢する。

 ブスブスと燻る苛立ちは残るけどな!


「大丈夫か?アイツらわざわざぶつかって来ただろ?」

「あ、いや。まぁ大丈夫。変な奴らもいるんで……じゃない、だな」


 オーランドが心配してくれ、怪我が無いかチェックしていく。

 あ、敬語は同じパーティになったんだから、と外す様に言われタメ語にした。

 歳上だしって食い下がったらスッと伸びてきたエレオノーレさんの細い指先が頭にめり込んだ。

 「あら?誰かが私のことオバさんって言ってる気がするわぁ…」と明後日の方向を見ながらほほほって笑うんだもの……。

 あれには絶対逆らえない。


「でもな、あれはキリトが悪い。彼方の風習かもしれんが、ハンターは上下関係をはっきりさせたい奴が多いんだ。不用意に頭下げたりしたら毟られるぞ」

「うわぁ……」


 ヤンスさんにペシっと頭を叩かれた。

 後ろでエレオノーレさんもジャックもうんうん頷いている。

 そうか、後ろ盾も地位もまともにないから、強い奴が偉いってなるのか。

 そして弱い奴には何をしても良いと思ってる。

 うーん……ヤな感じ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公特有の自己評価低い補正か? 既に失われた貴重なスキルをもってることが判明してるんだから、 そりゃ誘われるだろうよ むしろこんな低ランクじゃなくて、 S級パーティとかにもスカウトされる程…
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