教会編 48話 オニ……ですか。
いつも誤字報告ありがとうございます。
しかし、この化け物がアブゾル……と思いましたが、いまいち確信を持てませんねぇ。
目の前の一つ目の化け物は一体何なんでしょう?
いくら私でも、あんな良く分からない生き物に恨まれる筋合いは……結構ありそうですが、ここでは気にしません。
どのみちアレを倒さないといけませんからねぇ。
「話は通じますか? お名前は言えますか?」
もし、魔物違いならば可哀想ですからねぇ……。殺しますけど。
それに無理と分かっていても、話くらいは聞いてあげたいですからね。
だってアレじゃないですか。もしアブゾルならば、遺言くらいは聞いてあげようと思いましてね。叶えてあげませんけど。
しかしこの化け物は私の言葉に反応しません。
「脳味噌まで魔物になってしまったのなら仕方ありませんね。人に害する魔物は駆除してしまいましょう」
分かりやすい挑発ですが、乗ってきますかね? と思っていたのですが、化け物はこちらを見ます。
アブゾルかどうかは知りませんが、どうやら私を敵として認識はしているようです。ただ、知恵はあるのでしょうか?
「あぁあああああ……。レディジアぁあああああ。ごろずぅううううう。わだじはぁああああ、がみだぁあああああ」
あ、アブゾルで確定の様です。どうやら頭は退化したみたいですけど。
アブゾルは私に殴りかかろうとしますが、いや……遅すぎますよね?
図体がデカいだけで、スピードはゼロ。本当の姿を晒して弱くなるって何かのギャグですか?
私はエレンを強く握ります。
……さっさと終わらせて、姫様達とゆっくりしましょう。
私はアブゾルの足の腱を斬りに行きます。流石の私でも10倍以上の大きさの生物を、一撃で殺しきるのには骨が折れますからね。
ガキィ!!
ん? 随分と硬いですね? ならばもう一度。
ガキィ!!
また弾かれました。
ムカつきますねぇ。
連撃で何度か斬ったのですが、傷すらつきません。
何ですかこの皮膚は?
「レティシア!! そいつはオニだ!! 皮膚がヒヒイロカネという金属で覆われた最強の魔物だ!!」
ブレインがアブゾルについて説明してくれます。
最強の魔物、オニ? ですか。
要するに、アブゾルの種族はオニですかね。それともオニに化けている?
まぁ、どっちでもいいんですが、それよりも皮膚がヒヒイロカネですか。聞いたことのない金属ですね。私でも斬ることが出来ないとなると、相当優秀な金属なのでしょうね。
まぁ、斬れないとなると、どうにか攻撃手段を考えないといけませんねぇ。
打撃ならどうでしょうか? ぶん殴ってみましょうか? と思ってエレンを左手に持ち替えたのですが、私には物理攻撃は通用しないと思ったのでしょう。アブゾルの口が開かれ、魔力球のようなものを飛ばしてきます。
先ほども言いましたが、魔法の威力……を!!?
私は魔力球を全力で弾き返します。
この魔力球は先程までと違い、魔力で構成されているというよりも、怨嗟の力? で構成されている様です。
流石に怨嗟の力で作られたものは、どうにも出来ません。
予想以上に厄介な魔物ですね。
さて、どう戦いましょうか。
オニは、私が焦ったのを見て喜んでいるのか奇声を上げています。正直うるさいですねぇ。
とはいえ、こちらの攻撃は効かない、あちらの攻撃は一撃で致命傷になりかねない……。
参りましたねぇ……。
私は後方を見ます。
「クランヌさん。避難してくれませんか? その場所にいたら死んでしまいますよ? ブレイン、筋肉、マジック。貴方がたもです」
「お前はどうするつもりだ?」
「私は本気を出します」
「わ、分かった。ここにいても邪魔になるだけだしな」
クランヌさん達は、渋々ながらも納得してくれたようで、転移魔法でどこかに消えます。話が早くて済みますねぇ。
私は再びアブゾルを見ます。
アブゾルは、両手を空にあげています。
これは……。
不味いです。
あの威力の魔力の塊が爆発すれば、エスペランサはもちろん、ここら周辺国も相当の被害が出るでしょう。
全魔力を使ってでもアレを止める必要がありますね。
「じねぇえええええ!!」
魔力の塊が私を襲います。
魔力による壁……いえ、私自身が壁になった方が被害は減らせますかね……。
しっかり腰を落として、全魔力を拳に乗せて……。
「えい!!」
私が繰り出したパンチによる衝撃波と魔力の塊がぶつかります。
むむむ……何とか抑えきれていますが、徐々に押されてますねぇ……。
このままでは不味いです。
アブゾルはさらに魔力を込めだしたみたいで、先程よりも押してくる力が強くなります。
「くっ……」
力負けしますか? まだまだ全力には程遠いのですが、私の肉体が持ちそうにありません。
私の腕は、少しずつ傷だらけになり血まみれになっていきます。私自身の魔力に身体が耐えられないようです。これ以上魔力を込めると腕が消滅してしまいますねぇ。
とはいえ、このままでは押しつぶされてしまいますからねぇ……。
右腕一本でどうにかなるのなら安いモノですか。
覚悟を決めましょう。
私は全力で魔力を右腕に集中させます。
腕は悲鳴を上げだし、感覚が無くなっていきます。
しかし、次の瞬間、誰かに魔力を操られたのか、溜め込んだ魔力が徐々に消えていきました。
アブゾルが私の魔力に干渉している?
これは想定外ですねぇ……。
こうなってしまえば、私の命を使ってアブゾルと相打ちを狙うしかないですねぇ。
まぁ、いいでしょう。
私自身は……エレンはこの世界にもういないので、未練は無いのですが……。
姫様にはレッグさんがいます。だから安心なのですが、カチュアさんとレーニスは……泣いてしまうかもしれませんねぇ……。
カチュアさん。レーニス。ごめんなさい。
私は、全魔力を込めて、アブゾルに特攻しようとしますが、左手に持ったエレンが急に光り輝きだします。
「自分を使えというのですか?」
そうですね。最期まで一緒に頑張りましょうか。
『そうだね。一緒に頑張ろう。でも最期じゃないけどね』
幻聴でしょうか? 今、エレンの声が聞こえた気が……?
『幻聴って酷いなぁ。折角レティを助けに来てあげたのに、そんな剣に私の名前をつけて自分を慰めているなんて、レティらしくもない。そんなモノが私の代わりなわけないでしょ?』
私は自分の背後に何かがいるのに気付きます。
ゆっくり振り返ると、そこには金色の羽根を背負ったエレンが浮いていました。
「え、エレン?」
『久しぶり、レティ。ようやく助けに来ることができたよ。と言っても、レティは強いから助けなんていらないかな? とも思ったけど、間に合ってよかったよ』
エレンは、あの頃と変わらない笑顔で私を撫でます。
「ど、どうして?」
涙でエレンの顔が霞みます。
『話は後、まずはこの邪魔な魔力の塊を一緒に消そうか』
「はい!!」
私の斬撃にエレンの魔力が加わったことで、アブゾルの魔力の塊を完全に消し去ることが出来ました。
漸くエレンを出せました。
実はエレンを出すことは最初っから決まっていました。本当は一戦目のアブゾル戦で神剣エレンの正体にしようかと思ったのですが、教会編を書き始めて、ラスボス戦で出そうと思いここまで引っ張りました。
ちなみにエレンの今の種族は次の話で書きます。と言ってもバレバレですが。
この話を書いてるときに、一度データがぶっ飛びました(笑)、ということで、こんな時間の更新になってしまいました。
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