教会編 17話 交渉決裂でしょう。
前国王の首で、罪を償った。
レッグさんがこう言った事で、生ゴミは何かを考えこんでいる様です。
次に何を言うか考えているのでしょうかね。
私の予想では、下らない言いがかりで、姫様達をも責めるのですかね?
「そ、そうだな。確かにファビエ国王は、自らの首で罪を償った……」
え? この生ゴミ認めてしまいましたよ?
これには、レッグさんも予想外だったようで、変な顔になっています。
「し、しかしだ……。勇者タロウは、生きていると聞いた。彼こそ、本当の罰を受けねばならぬのではないのか?」
はい? この生ゴミは、何を言っているのですか?
ウジ虫が生きていると聞いた?
「勇者タロウは、あらゆる国で罪を犯していた。それに対する罪は償わせねばならない。ワシが言いたい事がわかるか?」
全く分かりません。
逆に、生ゴミが自分の失言に気付かないというのも問題なのですが?
「つまりじゃ。偽勇者タロウの身柄をワシ……いや、教会に渡せ!!」
ウジ虫の身柄を渡せ?
もし、ウジ虫を生ゴミに渡すとどうなるのでしょうかね?
そういえば、姫様の元に抗議に来た教会のアホ共の中に「勇者様を解放しろ!!」とほざく馬鹿がいましたね。
つまりは、教会は、勇者タロウを欲している? 何の為に?
私は、レッグさんを見ます。
「何故、教会に勇者を渡す必要がある? あくまで勇者を捕らえたのは、うちの国の人間だ。つまり身柄を渡す必要はない」
「な……!!?」
生ゴミは、レッグさんがそう言った反応をすると思っていなかったらしく、驚いた表情になっている。
そもそもです。
うちの国では外にはウジ虫の生存を隠すように御触れを出していた筈です。
更に言うならば、ファビエ王国の教会関係者が、ウジ虫の生存を知っていた事が何よりおかしいのです。
姫様は、勇者は私に殺されたと、教会に説明した筈です。
復讐予約者には、ウジ虫の存在を話せないように。新しく作った魔法で制限をかけました。
「そもそも、どうしてお前がタロウが生きている事を知っている? いくら何でも、うちの国の内情を知り過ぎていないか?」
レッグさんは、剣を抜きます。
「お前の答えによっては、ここでお前を殺す」
レッグさんの殺気は本気みたいです。
確かに、話にならないのであれば、生かしておく必要はありませんが、一つだけ気になります。
「レッグさん。ここで生ゴミを殺してしまうと、この国の国民はどうなります?」
レッグさんは、私を見て驚いた顔をしています。
「あ、そうです。いっその事、これ以上苦しまないように、私の手で殺しておきましょうか?」
私がそうレッグさんに話すと、レッグさんの顔が少しだけ安心した顔になります。
「そうだよな。レティシアちゃんが、そんな優しさを持つわけがないよな。安心したよ」
そうですか……。
レッグさんには、国に帰った後、ちゃんとお話した方がよさそうですね。
「まぁ……今はそんな事はどうでも良い。魔王アブゾルが選んだ勇者など、ただの犯罪者でしかない。なぜ犯罪者をお前等に渡す必要がある?」
レッグさんがそう言い切った以上、もう生ゴミに何も言えない筈です。
生ゴミは、悔しそうに、プルプル震えています。
「マイザー王。俺はそんな話をしに来たわけじゃない。この招待状を受け取ってくれるか? と聞いている。どうする? マイザー王」
生ゴミは、この話を受ける事は出来ない筈です。
アブゾルの教えを正しいと思っている以上、間違いなく魔族と手を組むという事を、許容できると思えないです。
「魔族と同盟を結ぶ国の招待など、受けるわけがなかろう。この痴れ者が!!」
痴れ者ですか。
しかし、それはアブゾルを信じる者のみに有効な言葉です。
姫様や、クランヌさんの話では、別の国では、魔族も冒険者として活躍しているという事を聞きました。
その国が、魔族に対して、どういう接し方をしているかは分かりませんが、仮にです。仮に、その魔族が、その国の英雄だった場合、教会を取るでしょうか?
普通……という言葉が、使えるわけではありませんが、何も救わない教会と国の英雄、まともな国でしたら、どっちを取るかを間違える事は無い筈です。
「痴れ者? 何を基準にそう言っているんだ?」
生ゴミや教会の基準がアブゾルである以上、ギナを信じる(?)私達が、教会の言う事を聞く必要はありません。
「馬鹿な!! 貴様は人類の敵である魔族と「それを誰が決めたんだ?」……な?」
生ゴミは、レッグさんの冷めた声に、若干青褪めます。
「だから、魔族が敵だと誰が・・決めたんだ?」
「そ、それは……神アブゾル様が……」
その言葉を聞いたレッグさんの口角が上がります。
「神? おかしいな。俺達が信じる神ギナは『魔族は敵では無い。同じ世界で生きる仲間だ』と告げていたぞ? 魔国の城主であるクランヌ殿は魔族でありながら紳士的な態度だったぞ? そうだな。俺は冒険者をやっている時に、いろいろな国の教会に行ったが、アブゾルを信じる教会の方が暴力的な態度だったぞ?」
「な、なんだと?」
生ゴミは、更に青褪めます。
それはそうです。
信じる神が違う以上、お互いの常識は通用しません。
「まぁ、今はその話は良い。返事は後日使者を送ろう。今度は殺さないでくれ。俺達の大事な国民だ。もし、次も帰ってこないとなれば、その時は一番やりやすい方法で戦争を回避させてもらう」
「ぐぬぬ……」
私達は、悔しがる生ゴミを無視して、お城を出ます。
お城の外には、マジックが、子供を何人か連れて待っています。
「早かったな。交渉決裂か?」
「いや、当初の目的は達成したさ。まぁ、参加するとは思えんがな。帰ったら、適当な犯罪者を使者にする。それで、何かが動くだろう」
まぁ、あの生ゴミなら、参加せずに教会と共に攻め込んでくるのでしょうね。
「ところで、その子供は何ですか?」
子供達は、怯えたようにマジックの後ろに隠れます。
どの子供も、皆痩せ細って、今にも倒れそうな子供ばかりでした。
「あぁ。行き倒れてたんでな。一応、回復魔法で回復して一時的に体力を戻しているだけだ。レッグ殿。孤児院で世話をしてやれないか?」
レッグさんは、何も言わずに頷きます。
「任せておけ。リチャードにも話しておくし、資金の事は問題はない。マジック殿。子供というのは、これだけか?」
マジックは黙って頷きます。
「生きている子供はこれだけだ。王都全てを探したわけじゃないが、目の届く範囲は見て回ったつもりだ」
生きているですか。
「レティシアちゃん。もうこの国に用は無い。帰るぞ」
レッグさんは何かに焦っている様です。
もしかして……。
「あれですか? 出来ないと知りつつ、私達を襲ってきますか?」
「いや、それは無い。もしここで俺達を襲うようなら、このまま引き返して王を殺すだけだ」
なるほど……。
もし、使者である私達を襲うという事は、暗殺されても文句が言えないという事ですか……。
それならば、ここで襲ってくれた方が、都合がいいですね。
「それくらいは、あのアホな王でも気づくだろ? だから、それは無いといったんだよ。俺が早く帰りたいのは、子供らを早く安心させてやりたいだけだ」
私はレッグさんの言葉に頷き、転移魔法陣を展開させて、自分達の国に帰ります。
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