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親友が酷い目に遭わされたので全てに復讐しました。  作者: ふるか162号
番外編 勇者タロウの章

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番外編 勇者タロウ編1 俺が勇者だ

20年1月25日改稿


 俺は、無堂島むどうじま太郎。日本でしがないサラリーマンだった。


 いつも通り会社に向かっていたのだが、その日は、やけに会社に行くのが嫌な日だった。


「はぁ……。今日は会社に行く気が出ないな……。休むか……」


 俺は会社に電話して、家に向かい引き返そうとした。

 その瞬間、俺は光に包まれ、目を閉じる。


「な、なんだ!?」


 しばらくして光が止むと、俺は目を開く。


「おぉ!? 勇者様が召喚されたぞ!!」


 勇者?

 俺が勇者だと?


 そうか。これは異世界召喚だな。

 ライトノベルが好きだった俺は、一瞬で理解したね。


 まさか、俺が勇者として異世界に召喚されるとはな。



 勇者として召喚された俺は、今まで味わった事のないほどの贅沢と好待遇で歓迎された。

 現実世界(・・・・)の俺は、冴えない、モテない、金もない、無い無い尽くしだったが、この世界では美人な仲間が用意された。

 今まで、そんな思いをした事のない俺なら、それだけでも充分に満足しただったのだが、ネリー姫という、現実世界(・・・・)では、決して相手にされないような相手にでも、偉そうにできた。

 

 俺が召喚されてから数ヵ月は、魔王を倒す為に訓練ばかりしていた。

 毎日兵士に鍛えられて、最初は痛い目に遭ったが、そのうち俺の方が強くなっていった。


 今思えば、この時が一番充実していたかもしれない。


 俺の仲間は美人が多く、俺に抱かれるのをいつも喜んでいた。

 訓練で疲れた体と心をいつも癒してくれた。


 訓練が休みの時には、城のメイド達を抱く事もできた。

 中には断る者もいたが、そんな奴は殺してもいいと国王に言われていた。


 だから、俺は城の中でも好き勝手出来た。


 しかし、ネリー姫と御付きのメイドには手を出せなかった。


 レッグ=バートン。


 あの忌々しいおっさんが姫とお付きのメイドを守っていたからだ。


 ある日、ネリー姫に言われた。


「私と婚約? そうね……。貴方が魔王を倒して来たら、その時はタロウの妻として婚約しましょう。ただし、魔王を討伐するまでは、私及び、私の息がかかったメイドに指一本触れる事だけは許しません」


 生意気な事を言いやがる。

 たった一度だけ力ずつで押し倒そうとしたせいで、彼女の中の俺の評価が一気に落ちてしまった。


 仕方がない……。

 俺は、いや、俺達は魔王を倒す為に旅に出た。


 一度旅立った手前、城に戻れなかった俺達は、仲間三人と夜を過ごそうと宿に向かっていた。

 その時、一人の魔族と出会った。


 町の中に魔族だと!?

 警備兵共は何をしていた!?


 俺達は戦闘態勢に入った。


 俺達には負けはない。そう思っていた。


 戦士ソレーヌは、ここから遠く離れた国の姫だが、剣技は俺並みに強く、武闘家アルジーはとある国で開催していた武闘大会の覇者。魔導士ジゼルは魔導王と言われていた魔女だ。

 絶対負けるはずがない。


 しかし、俺達はその魔族に手も足も出なかった。


 ま、まさか……これが魔王!?

 こんなのを倒せってか?


 魔王は俺達を冷めた目で下し、去っていった。


 俺達は宿で傷を癒した後、話し合う。


「あれが魔王か?」


 俺がそう言うと、ソレーヌが表情を暗くした。


「違うのか? ソレーヌ。何か知っているのか?」

「えぇ。魔王は人型と教会の教皇が言っていました。あれは人型ではなかった。という事はあれは魔王じゃないという事よ」


 ソレーヌの言葉で俺達は黙ってしまった。

 あれ程の強さで魔王じゃないとなると、魔王の強さはどうなるんだ?


 俺達は自信を失ってしまった。


 王都で出会った魔族に敗北してから、更に数か月たった。

 俺達は、旅に出る事もなく、王都で楽しく過ごしていたが、ある日、ネリー姫から呼び出しがあった。

 俺達は渋々国王とネリー姫の元へと向かった。


 呼び出された理由もなんとなくわかる。

 ネリー姫の口から「タロウ? いつになったら魔王討伐に出かけるの?」と嫌味を言われる。

 国王も、ネリー姫には何も言えないようだ。


 それから毎日のように嫌味を言われた。

 その数日後、俺達は旅に出た。


 魔獣程度なら倒す事は可能だが、どれだけ努力をしても、あの魔族と魔王に勝てると思えなかった。

 どうするか悩みつつ、旅の途中で立ち寄った町であの女に出会った……。


 エレン。

 

 町を壁で囲まれたちんけな町だったが、あの女だけは別格だった。


 エレンはいつも小汚いチビと一緒にいた。

 俺がエレンに声をかけようとすると、チビがいつも邪魔をしてきた。


 何度、殺してやろうかと思ったか。

 しかし、俺は勇者だ。


 ムカつくとはいえ、こんな子供を殺してしまえば、俺の評判に傷がつく。そう思って殺さないでいてやった。


 しかし、エレンの事は諦めきれない。

 俺は教会に向かった。

 教会の神官なら、勇者の俺を崇めるはず。言う事を聞くはずだと思った。


 俺はその町の教会の神官長と話し、エレンを聖女に任命するように言った。

 神官長は、俺の加護を手に入れられると、喜んで話に乗ってきた。


 その二日後、エレンは聖女として俺に付いてくる事になった。

 神官長が小汚いチビにバレないようにと、早めに出発した方がいいと提案してきた。

 俺はチビ程度に何を言っているのか? と思っていたが、神官長があまりにも必死だったので従う事にした。

 

 今思えば……ここでエレンを見つけなければ良かったのだ。

 エレンに関わった時から……俺の破滅に向かい歩きだしていた。

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