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親友が酷い目に遭わされたので全てに復讐しました。  作者: ふるか162号
番外編 私とレティ様

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2話 不老 

3月29日 少し書き直しました。


 私は歩きます。

 目的地は決まっています。

 静かに、そして誰にも迷惑をかける事が無く死ねる(・・・)場所。


 その場所は、自殺者が多い事から「死に一番近い場所」と呼ばれています。

 正式な名称は『拒絶の崖』、一度下りれば、二度と上がってくる事は出来ないと呼ばれている崖です。どちらにしても、あまりいい印象の場所では無いですね。

 


 目的地に着きました。

 下の見えない崖。

 崖の下は、海になっているのか、それとも大地が続いているのか……それすらも分かりません。

 人生に終止符を打ちたい者が最期に辿り着く場所……。

 

 ここから飛び降りれば、間違いなく死ねますし、誰にも見つかる事は無い。

 そう考えて、ここまで来ました。


「レティ様のいないこの世界に価値はない。ここから飛び降りれば全てが終わる……。ネリー様、申し訳ありません。エレン様、レティ様を失ったネリー様を支えてあげてください。弱い私は、生きている事が辛いのです……。さようなら……」


 私は崖に身を投げる。

 これで、死ねる。

 もう、何も考えなくていい……。




「…………」

「……」

「?」


 どういう事でしょうか?

 いくら落ちても地面に激突する事がありません。

 それどころか、落ちている感覚すら無くなった?


「どうして? 私は……?」


 もしかして、落ちている最中に意識を無くした?

 それなら、今の意識は何でしょうか?


 私は目を開けて、周りを見ます。

 そこは、どこを見ても真っ白な空間。

 以前レティ様が話していた、アブゾルと戦った空間と似ている気がします。


「ここは? もしかして、もう死んだのでしょうか?」


 もしかして、自殺したものはここに飛ばされてくるのでしょうか?

 痛みがない分、良かったと言えばよかったんですけど、こんな空間に置いておかれても困りますね。

 そのうち意識が消えるのでしょうか?

  

「消えないよ~。第一、君は死んでないからね」

「え!?」


 この声は!? 

 どうしてあの方(・・・)がここに!?

 

「久しぶりだね、カチュアちゃん。直接話をした事は無いけど、私の事は知っているよね」


 ……サクラ様。

 レティ様と同じように、幼い少女の姿をしていますが、圧倒的な超越者……神。

 神の中でも頂点に立つ女神の王。


「はい、サクラ様がどうしてここに?」

「私がここにいる理由? カチュアちゃんに死なれたら困るからかな」


 どういう事ですか?

 神という存在から見れば、私はなんの価値もない人間。

 それなのに、死なれたら困る?


「どうして!? レティ様のいないこの世界で、私は生きる事が嫌になったのに……何故、死なせてくれないの!?」

 

 涙があふれてくる。

 無理だ……!!

 私が生きていたって、レティ様はもういない。

 感情が爆発する。


 こんな世界、もう嫌だ!!


 しかし、サクラ様は優しい笑顔を向けている。

 むしろ、こんな態度の私を怒って、滅ぼしてくれればいいのに!!


「あまり悲観的になり過ぎて感情的になっちゃダメだよ。助けた理由を知りたがっていたね。それは、カチュアちゃんが死ぬと悲しむ人達がいるからかな。それに……」


 最後の方は聞き取れなかったけど、私一人が死んで、誰が悲しむというのですか!?

 ネリー様ですか!? エレン様ですか!?

 しかし、あの二人は既に前を向いています!!

 

「それはカチュアちゃんが勝手に思い込んでいる事だね。あの二人も十分傷付いているよ。でも、その二人だけじゃない。他にも、君が死ぬ事で悲しむ子がいるんだ。だからこそ、カチュアちゃんにはもっと強くなって貰って、あの子(・・・)を守ってもらわないと困る」


 な、なにを勝手な事を!?


「嫌です!! レティ様のいない世界で生きたくありません!!」

「却下だね。君を見守っていて正解だったよ。君はあの三人の中で一番弱い。だけど、君には命ある限り、あの子(・・・)と寄り添って貰うんだから、死なれても困るんだよ」


 あの子?

 いや、今はそんな事はいい!!


「なぜ、私なんですか!?」

「ん? あの子が望んでいるからかな?」

「そもそも、あの子って誰なんですか!?」


 サクラさんは、不敵な笑みを浮かべて「君も知っている子(・・・・・・・・)だよ」と意地悪そうに言う。


 私の知っている子? も、もしかして……!!


「あ、会わせてください!! レティ様に!!」

「だーめ。そもそも、私はレティシアちゃんとは言っていないよ」


 レティ様じゃない? それなら、私に生きる意味はない。

 私は、周りを見る。服以外の持ち物がない!?


「自殺防止に刃物類は取り上げさせてもらったよ。まぁ、この空間では死んでもすぐに生き返るから、無意味なんだけどね」

「どうして、そんな意地悪をするんですか!! 私は……」


 死にたい!!

 レティ様に会いたい。

 もし、この世にいないから会えないというのならば、もう、生きていたくない!!

 でも、死なせてくれない……。

 なんで? 


 私はその場で泣き崩れてしまった。


「あーもぅ、しょうがないなぁ……」

「え?」


 私が顔を上げると、サクラ様が困った顔で笑っていた。


「本当は、目が覚めて(・・・・・)からか、カチュアちゃんがあの領域に到達してから会わせようと思っていたんだけど……、今、会ってしまうと辛くなるかもしれないけど、それでも会いたい?」


 会いたい……。

 レティ様に……。

 でも、レティ様じゃないかもしれない。

 それでも……もしかしたらレティ様かもしれない。


「もう一度言うよ。私はレティシアちゃんとは言っていないよ。それでも会いたいの?」

「……会いたいです」

「はぁ……、分かったよ」


 サクラ様が手を挙げると、光につつまれます。

 これは転移魔法?


 転移して来た先は、最小限の家具だけがある小さな部屋でした。


「こ、ここは?」

「私の自室かな。カチュアちゃん、こっちだよ」


 サクラ様に手を引かれて、隣の部屋に移動します。

 その部屋はただ広く、部屋の中央にオブジェがあるだけの部屋です。

 しかし、私はそのオブジェの中に人が入っているのが見えました。

 あ、あれは……。


 レティ様!!!!!!!


 オブジェは球体状でその中でレティ様が眠っていました。

 私はレティ様が入った球体に触れますが、レティ様には触る事が出来ません。


「さ、サクラ様!! レティ様は!?」


 サクラ様は首を横に振ります。

 も、もしかして死んでいるのですか!?

 しかし、サクラ様は再度、首を横に振ります。


「今は眠っているだけだよ。レティシアちゃんは邪神との戦いで無理をし過ぎたんだ。肉体を崩壊寸前まで酷使して、自身の作り出した異空間に無理やり入った結果、精神まで壊れ始めている……」

「じゃあ、もう目覚めないんですか?」


 も、もし目覚めないのなら、私も一生ここに……。


「そうは言っていないよ。けど、いつ目覚めるかは分からない。今だって、無理やり延命処置をしているだけで、いつ死ぬかも分からない。いや、この中にいる限り死ぬ事は無いけど、それこそ、永遠に目を覚まさないかもしれない……だからこそ、会わせる事を躊躇ったんだよ」


 永遠に!? でも、レティ様は人間。永遠には……。


「レティシアちゃんも知らなかった事だけど、レティシアちゃんは寿命で死ぬ(・・・・・)事は無いよ」

「どういう事ですか?」

「逆に聞くけど、レティシアちゃんが全く成長していない事を疑問に思わなかったかい?」

「え?」


 確かに、レティ様に出会ってから数年経つけど、出会った頃から姿が変わっていない。レティ様自身も「成長期が来ない!!」と嘆いていたし……。


「レティシアちゃんの肉体年齢は、十歳くらいで止まっている(・・・・・・)んだよ。そして、これからも成長する事も、老いる事も決してない」

「老いる事も!? どういう事ですか!?」

「レティシアちゃんは、人間の領域をとうに超えてしまっている。つまり、不老になっているんだよ。驚いた事に無自覚だから、本人も知らない。不老だからこそ、死ななければ(・・・・・・)、一生このままの姿なんだよ」


 まさか、レティ様が不老不死(・・・・)になっていたなんて……。

 不老不死?


「不老不死……、それなら、レティ様が死ぬ事は無いんじゃないですか?」

「カチュアちゃん。不老と不死は全く別物だよ。不老は言葉通り永遠に成長する事も老化する事もない。だから寿命では(・・・・)死ぬ事は無い。だけど、肉体が致死量の損傷をすれば死んでしまうんだよ。私を含めた神族も基本は不老だけだから、私も殺されたら死ぬよ。逆に不死は、死なないけど、成長と老化は(・・・・・・)止まらない(・・・・・)。ただ、死なないだけ。だけど、いつかは肉体は朽ち果てて骨となる。骨だっていつかは風化する。だけど、魂は死ねないから、永遠にその場に彷徨うだけになってしまう。この二つは共存は出来ないんだ」


 まさか、不老と不死にそんな秘密があったなんて……。

 それよりもレティ様が不老?

 それならば、いつかは目覚める?


「レティ様はいつ目覚めるんですか?」

「さっきも言ったけど、分からない。もしかしたら五分後に起きるかもしれないし、五十年経っても起きないかもしれない。いや、永遠に目覚めないかもしれない。だからこそ、レティシアちゃんを世話をするカチュアちゃんにも不老になってもらう必要があるんだよ」


 い、今何と言いましたか?

 私が不老になる!?

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