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親友が酷い目に遭わされたので全てに復讐しました。  作者: ふるか162号
番外編

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呪い子 レイチェル 後編

今回はちょっと長いです。

第三者視点、レティシア視点、ネリー視点です。



 レイチェルの中の能力(・・)は、本人の意思とは関係なく、確実に発動されていた。

『魔物を呼び寄せる能力』により、魔物はレイチェルの下へと集まろうとする。そして、その周りの人間を餌として認識するのだ。

 もしかしたら、魔物はレイチェルの事を『餌寄せ』として有効に使えるから、本能で利用しているのかもしれない。

 しかし、この町の周辺には低級魔物しかいなかった為に、町は滅びず、新人冒険者でも撃退する事が出来た。もし、大きな被害が出ていたのならば、人々は魔物の恐怖に震えていただろうが、町の人間の被害はゼロ、戦った冒険者もほぼ無傷で撃退出来た為に、そこまで問題にはならなかった。


 それから、十数年が経った。

 レイチェルは二十歳になり、今でもこの町に住み続けていた。

 レイチェル(魔物寄せ)がここにいる以上、魔物は月に一度のペースで町を、いや、レイチェルの下へと餌を求めてやってくる。そして、それを冒険者が狩る。

 ある意味、それが日常の風景の一つになり始めていた。

 デルタは、この十数年間で警備隊を発足し、狩りに来ていた冒険者と共に、この町を守り続けていた。

 そのおかげか、町は少しずつ裕福になり始め、ある意味で新人冒険者の訓練場、狩場として栄えて行った。望んでもいないとはいえ、これはレイチェルのおかげだろう。

 レイチェル自身は自分の能力を知らなかったのでこの町で幸せに生きていた。デルタと結ばれ、お腹には子供もいた。当たり前だが、デルタとの子だ。


 しかし、そんな幸せは長くは続かなかった。


 ある日、一人の男が警備隊に無銭飲食で捕まった。

 その男は研究員風の男で、酷く汚れていた。

 金を持っていなかったらしく、空腹に耐えかねて無銭飲食をしたという事であった。

 男の態度から、そのお店で掃除などをして、食べた分の働きをすれば大事にしないと、店主が言っていたので、たいして気にも留める必要がなかった。

 デルタは勿論だが、レイチェルもこの男の話は聞いていた。

 レイチェルは外出があまり好きではなかったので、接点はほぼないはずだった。


 しかし、レイチェルの幸せは、この男が原因で崩れ去ってしまった。

 その日も、いつものようにデルタは警備隊の仕事に出た。だが、その日のデルタはレイチェルが作ったお弁当を家に忘れて行ってしまったのだ。

 別に、そんな事は珍しくもないし、警備隊の妻が忘れ物を届けるなんていうのは、警備隊内では良く見る光景だった。

 しかし、その日だけはいつもと違っていた。

 無銭飲食をした男が、警備隊に世話になった事の礼を言いに来た時に、レイチェルがその場に来てしまった。

 男はレイチェルを見た瞬間、顔を青褪めさせた。

 レイチェル自身は、デルタにお弁当を届けに来ただけなので気にも留めなかったが、研究員風の男はそうじゃなかったらしい。急に顔が歪み、レイチェルを指差し怒鳴り出す。


「何故、この呪い子がここにいる!! こいつは、私の研究所を滅ぼした呪い子だ!! なぜ生きている!! 貴様のせいで何人の研究者が死んだと思っている!!」


 男がレイチェルに殴りかかろうとすると、それをデルタが止める。


「彼女は俺の妻だが、そんな言いがかりは止めて貰えないか?」

「うるさい!! 飯屋の親父が言っていたが、この町は定期的に魔物に襲われているんだろうが!!  それはこいつがいるからだ!! こいつには魔物を引き寄せる能力がある!! こいつは生きていてはいけない、『呪い子』なんだよ!!」


 普通ならば、何を馬鹿な事と一蹴されるのだが、ある警備隊の一人が「デルタさんが彼女とこの町に来た年から魔物の襲撃が始まった……」と呟く。

 それを男が逃すはずも無かった。


「今のを聞いたか!! こいつ等は、女が魔物を集め、男がそれを倒して英雄扱いされて金をむしり取るという詐欺師なんだよ!! こいつらを捕らえろ!! こいつ等が居なけりゃこの町は平和なんだよ!!」


 男は騒ぎ立てる。デルタは町の人々の目がおかしい事に気付く。


(これは、俺達を疑っている? 普通に考えれば、そんな馬鹿な話があるわけがないと思うはず。何故だ?)


「おい!! 言いがかりは止めろ!! そんな証拠がどこにある!!」


 デルタは必死に叫ぶが、警備隊の男の一人がレイチェルに向かって石を投げつけた。


「お前等のせいで俺達が危険な目に遭ってたんじゃねぇかよ!! 死ね!!」


 しかし、その石がレイチェル当たる事は無かった。何者かが石を弾いたのだ。

 それは、デルタではなく一匹の魔物だった。

 魔物の名はウルフ。この町を何度も襲って来た魔物だった。

 ウルフは、レイチェルを守るように立っていた。


(魔物が何故レイチェルを守る? あの男が言っていた事は本当の事なのか?)


 デルタは一瞬だけレイチェルを疑ってしまった。レイチェルも今の状況を飲み込めていない様だったので、その考えはすぐになくなる。

 そもそもレイチェルに出会った時、彼女はまだ七歳だった。


「お、俺の話を聞いてくれ!!」


 デルタは叫ぶ。

 デルタは思い出していた、自分が冒険者だった時に、何故あの場所に調査に出たのかを……。


 そして結論を出した。


 レイチェルは実験体だったのだと。

 許せなかった。レイチェルにではない。

 今は妻とはいえ、レイチェルにあった時の彼女はまだ七歳だったんだ。

 そんな子供をあろう事か『呪い子』と呼んだ事を。


 デルタは無意識に動いていた。この男を斬りに行くために。


 男を守ろうと警備隊がデルタに斬りかかる。


「てめぇ!! 騙してやがったんだな!!」


 今朝まで同僚だった男の目は殺意に満ちていた。

 こうなっては、もうこちらの話は聞いて貰えないだろう。

 とはいえ、罪もない同僚を斬る事は出来ない。だから、俺はレイチェルを連れて逃げる事にした。


 レイチェルは、町の人間に捕まりかけていた。

 

「俺の妻に触んじゃねぇ!!」


 不可抗力とはいえ、デルタは町の人間を斬った。殺さぬように斬ったとはいえ、妻を守る為に町の人間を斬ったのだ……。

 この行為で、町の人間の憎悪が爆発した。

 町の人間達は、この町が何故潤っていたのかをも忘れ、魔物の被害が出た事もないのに、被害妄想に襲われて、レイチェルとデルタを責めた。

 デルタはレイチェルを連れて逃げた。


(レイチェルのお腹の中には、子供がいるんだ。俺はいい!! せめてレイチェルだけでも!!)


 デルタはレイチェルを乗合馬車に乗せ、何とか町から逃がした。

 自分も一緒に逃げようとしたが、このままでは町の連中がレイチェルを捕まえてしまうと考え、その場に残った。レイチェルは自分も残ると言ったが、デルタはお腹の子をレイチェルに託した。


(少しでも、少しでもレイチェルが逃げ切れるように俺が時間稼ぎをする。レイチェルと子供を守る為にはそれしかない)


 デルタはここで死ぬ事を決意した。それと同時に絶望もした。

 十数年、一人の被害者も出さないで守り切った。不幸中の幸いか町も潤った。

 別にデルタ一人の力ではないとデルタ自身も気付いているし、その事をどうこう言うつもりもない。

 だが、十数年の絆よりも、幼い少女を実験に使うような男の、何の根拠もない言葉を信じる町の人間に絶望したのだ。


 目の前には、怒り狂った警備隊や町の人間。


「どうせ死ぬのなら、一人でも道連れにしてやるよ。俺の……俺達の子供を守る為にな!!」


 デルタと町の人間の殺し合い(・・・・)は数時間続いた。

 そして、デルタは殺され、レイチェルは指名手配された。『呪い子』レイチェルは、レティシアを生んだ後も酷い仕打ちを受け、苦しみながら生きた。

 ただ、レティシア……愛しいデルタとの子を守る為に……。


 その後、魔物の襲撃は無くなった。

 町の人々は最初こそ喜んだが、徐々に自分達の過ちに気付きだした。

 良くも悪くも、魔物襲撃により甘い汁を吸っていたこの町は、魔物襲撃が無くなる事により、廃れていった。

 人間いう生き物は、一度でも生活水準を上げてしまうともう戻れない生き物だ。この町の人間も例にもれずに、元の生活には戻れなかった。

 この町は運が良かった。周りに強力な魔物もいず、そして冒険者が集まる事により、狩りというサイクルが出来ていた。

 レイチェルからしても、ここ以上の場所は無かっただろう。それを捨てたのは町の住民だ。

 今でも町は残っている。が、以前の活気も無く、ただ、静かに衰退しているだけだった。


 一人の警備隊崩れの男が、「我々は何を間違えてしまったのか……」と呟き息絶えたそうだ。しかし、この町は静かに滅んでいく事はない。後に邪神と呼ばれる少女が、この町を滅ぼしに来るからだ……。




「その後の事は俺も良くは知らないが、その町で騒いだ研究員は、そこで殺されたらしいが、これ以上の事は俺も知らない」

「そうですか。しかし、腑に落ちませんね。何故、貴方がそこまで詳しく知っているのですか?」

「い、いや、お、俺はあくまで聞いた話であって……」

「今更隠し事(・・・)ですか? まだ、自分の立場が分かっていないのですか? それとも、何も気づかないほど(・・・・・・・・・)馬鹿だと思われているのですか?」


 私は、男の髪の毛を掴み上げます。

 最初は、情報を吐けばいいと思っていましたが、今では憎しみに変わっていますね。

 こいつが居なければ、お母さんは、私はこんな人生を歩まなくて良かったんじゃ……。こいつが全ての諸悪の根源で、こいつが全て壊したんですよね?


「ま、待ってくれ!! 俺は……、俺は悪くないんだ!! 悪いのは……」

「もういいですよ。何を聞いても、何も戻ってきませんし、今は、エレンや姫様達がいますから、私としては幸せですからね。本当はここで貴方を八つ裂きにしてやりたいですが、私は貴方とは違いますから、約束は守ってあげます」


 そう言うと、男はホッとしたような顔になります。


「最後に聞きましょうか? 貴方は何故、あのような行動に出て、今も人攫いのような事をしているのですか?」

「え? そ、それは……」

「ただの好奇心です。深い意味はありませんよ」

「俺は……」



「連れて行きなさい。後は任せます」

「「はい!!」」

「今日は気分が乗らないので、続きは明日に回します」


 私は自室に戻ります。自室ではエレンが私を待っていました。私はエレンに無言で抱きつきます。

 

「どうしたの? 何か嫌な事があった?」

「なんでもないです」


(許せなかったんだ。研究所を失った俺達よりも幸せにしているあのガキが。呪い子の分際で……人の幸せなんて、生まれてくるのも許されてなかった奴が……だから壊してやりたくなった。あの件以降、俺はレイチェルに恐怖した。だからまともな職にも就けなかったんだよ!! すべて悪いのはあの女だ!!)


 正直、あの男を殺してやりたいくらいに憎いです。今は、エレン達がいるので幸せですが、何年かかってで……お母さんに、いえ、お母さんを『呪い子』として作り上げた全てを殺し尽くしてやります。

 それがお母さんとお父さんの供養になるように……。




「そう……私も最後の仕事をしましょうか……」


 そう言って、私はその男(・・・)がいる牢へと足を運ぶ。

 とはいえ、私は無力な女だ。だから護衛二人連れ、その男の前に立ちます。


「お、おい。俺はあのチビに本当の事を教えてやったのに、なぜ釈放されない? おかしいじゃねぇかよ」

「おかしいのはあんたよ。なんで人攫いを釈放してやらなきゃいけないのよ」

「おい、口が悪いぞ。ネリー」


 私の愛しい夫が私を諌める……が、私はこいつを許さない。


「あんたは、私の可愛いレティを……あの子は良くも悪くも純粋だから、あんたが居なければきっと幸せな人生を送っていたはず。それを壊したあんたを、私が許すと思うの?」

「え? ちょ、ちょっと待てよ!!」

「待つ気なんてないわ。レティが直接手を出さないだけで、私はあんたを許さない。死より重い苦しみを与えた後、一番重い処刑方法で殺してあげるわ」

「え? い、嫌だ……た、助けてくれよ」

「では、ごきげんよう……」


 私は泣き叫ぶ男に背を向け歩き出す。

 私達が牢を出た後は、拷問官により拷問が行われるだろう。レティは体の傷を治しながら拷問をするけど、アイツには普通の拷問を受けて貰う。そして死ぬ寸前に最も重い処刑方法で消えて貰う。


 そして死んだ後は……。


「私が、彼の魂を完全に崩壊させるわ」


 この国の守護女神様も怒っている様だ。


 私達(・・)の可愛いレティを傷つけた人間を、私達は絶対に許さない……。


終わりまで書いていたら5000文字超えてしまった。

消化不良なところはありますが、レティシアの母親の話はこれで終わりです。

次は明るい内容を書きたいかな……。


もし番外編で読みたいと思う内容があれば感想に書いて下さい。もし、話に出来るようなら書きます。

後、アドバイスなどもあればぜひよろしくお願いします。

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