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雫物語~鳳凰戦型~  作者: クロプリ
騎士への道
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神話の世界へ

「うーっし! 慣れたモンだな……初めて来た時は半信半疑だったが、自信を持って来れるのは良いな」


「確かに、最初はドキドキだったもんねー……空間が裂けた時なんてアニメかと思ったけど、人って数回で慣れちゃうモンだねー」


 航太と智美が、顔を見合わせて少し笑う。


 一本のバスタードソードを背中に斜めに持ち、もう一本の剣を腰に付けた鞘に戻した男……鷹津航太は、剣士や騎士と言うには幼い顔立ちに殺気も感じない。


 航太の横に立つ神藤智美も、二本の剣を背中に背負う。


 こちらは、二本の剣を背中でクロスさせ、持ち歩いている。


 鞘の横側に押し込むと開くギミックが付いており、抜刀・納刀が容易く出来るように改造され、戦闘になってもスムーズに剣を使えるようになっていた。


 その横でアヒルのヌイグルミとキャッキャ言いながら戯れている神藤絵美は、智美と双子の女性だ。


 ショートが智美、ロングが絵美……髪型で区別するしかない程容姿は似ているが、穏やかな智美に対し、絵美は天然で明るい。


 彼女の手にも一本の矛……槍のような形状の武器が握られている。


 彼らが持つ武器……神器は、神々の命から造りだされていた。


 風の力を引き出す航太の持つエアの剣……


 防御・回復に特化した水の力を宿す智美の草薙剣と天叢雲剣……


 攻撃特化の水の力を備える絵美の天沼矛……


 各々の家に伝わってきた神の力を持つ神器達……


 先祖達が守り、奉ってきた神器は、一人の男を助ける為だった。


 鷹津一真……航太の義理の弟にして、光の神の転生した姿……


 多くの犠牲によって神話の世界から世界対戦真っ只中の日本へ逃れて来た一真は、航太の先祖に預けられた。


 転生したばかりの一真は、赤ん坊の状態で凍らされていた……一真を鷹津の家に連れて来た戦士は、今のままでは長く生きられないと告げると自害する。


 戦士と共に行動していた女性は、不思議な力で猫のヌイグルミに自らの魂を移した。


 そして……一真が18歳になった時、共に神話の世界に来て欲しいと頼まれる。


 半信半疑だったが、海辺で剣を振るだけ……そう言われて、好奇心だけで剣を振った。


 時空が歪み、異世界の扉が開いた時は驚いた……なんてモンじゃなかった事を思い出す。


 ただ……直ぐにヨトゥン兵に襲われて、そのまま流されるようにベルヘイムの遠征軍に入り……多くの思い出が、航太の頭でフラッシュバックする。


「あの時……カズちゃん、いなくなっちゃって、皆で探したね……私達を異世界の地で生活出来るようにって考えてる事なんて知らないで……」


「頼りなくて優しい幼なじみの義弟……としか思ってなかったからね。でも……世界を救う使命と、それを成す強さを持っていた……今でも忘れない。最後の戦いで見せた、あの背中を……」


 航太の背負う剣……グラムを見て、絵美と智美が思いを馳せた。


 最後の戦い……一真が因縁の相手、ロキと一騎打ちをした戦い……


 主神オーディンに変わり身したロキから放たれる容赦のない雷……ベルヘイム軍に降り注いだ雷で、多くの騎士が倒れた。


 堪え兼ねた一真は、グラムを手に禁断の翼を解放する……鳳凰天身……自らの心を引き換えに、圧倒的な力を得る。


 世界を救おうとするロキ……


 人の命……一人一人の世界を救おうとする一真……


 その戦いは、相打ちだった。


 いや……ロキの神器を弾き飛ばした瞬間、一真の心が壊れた……


 次元を超えた戦いの中……一真の心が消えていく中……航太達は必死にサポートした……が、殆ど力になれなかったと思う。


 無力……余りに無力だった。


 そして託された剣……グラム。


 航太には感じない重さが、ズッシリと背中にのしかかる。


 物理的な重さの方が遥に楽だ。


「行こうぜ! とりあえずベルヘイム国内に入って、一真の居場所とか情報収集しねーと……」


 バシャ!


「きゃっ! 冷たっ!」


 突然、水辺から女性の声が聞こえた。


 神話の世界は海と大地が逆になっている……つまり、海辺で転移すると巨大な湖の水辺に足を突っ込む事になる。


 今回、航太達は防水の靴を履いて来た。


 つまり……


 航太達は急いで反転すると、それぞれ武器を構える。


「変な奴を連れて来ちまったか? 巻き込む前に、気でも失わせて元の世界に戻すしかねぇ!」


「それで忘れてくれればイイけど……どっちにしても、神器が無いとコッチの世界には来れないから、大丈夫かな?」


 急に敵が来ても冷静に対処出来る……命懸けの戦いを繰り広げてきた為、その程度の対応力はある。


 逆に悲鳴を上げた女性は、突然剣や槍を突き付けられて尻餅をつく。


「……って航ちゃん……私、この娘を知ってるんだけど……」


「だな……俺達の事を疑ってるにしても、こんなトコまで付いて来るなんてな」


 浅い湖畔で尻餅をついた女性を呆れるように見た航太は、これからどうしようか考えていた……


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