地下に潜む男達
「やっほ~、相も変わらずせまっ苦しい所にひしめいてるね~
せめてもうちょっと広い部屋にした方が暑苦しくなくていいと思うよん」
「大きなお世話だ」
部屋に入るなりマリスが机の男に対してストレートな物言いを始める。
その言葉に一瞬周囲の男達が一瞬殺気立つも机の男は平然と返答してる。
………どうやらこの人とマリスは知り合いの様な雰囲気だね
まぁ隠してる階段に顔パス状態みたいだから当然と言えば当然だけど。
「………で、そいつらがお前が言っていた冒険者の連れか」
「そだよ~、マリスも含めて中々の美少女揃いでしょ♪」
「フン………お前は兎も角、確かに上玉揃いだな」
そう言って机の男は鋭い視線を私達に向けて来る。
フィルが反射的にむっとした顔をするも、それを意に介した様子も無く
男は視線を私に向け………
「レベル0《Systemerror》だと?
………成程、お前が最近噂の女冒険者か」
そう吐き捨てる。
………何か私えらく有名になってない?この間のグレナディーアって人と言い
そんなに目立つ存在なのかな?私って。
「フッ、何とも個性的な小娘共じゃないか
コイツが気に入るのも納得だな
………同情するぜ、コイツに関わった以上、平穏なんて
無縁な生活になるからな」
そう言って男は僅かに笑みを浮かべる。
………なんかこの人もマリスに振り回されてるみたいだね
ちょっと親近感が沸いたかも。
「酷いな~、確かにどっちも振り回してはいるけど損になる事はやってないじゃん
もうちょっと感謝して欲しいくらいだよ、あははははは」
「フン、言ってろ」
マリスの軽口を流し、男は机から降りて私達に近づく。
「どうせコイツの事だ、アンタ達は何の説明も無く
ここに連れてこられたんだろ?
なら教えてやる、ここは所謂『盗賊ギルド』の拠点の1つだ
俺を含めこいつらはそのギルド員って奴だ」
「盗賊ギルド、ですって!?」
男の言葉にフィルが思わず声を上げる。
薄々は思ってたけどやっぱりね、この人と言い周りの男達と言い
足の配置や人に対しての体幹の向け方がバイト先の追跡者にそっくりだ。
けど足の向き自体は撤退を想定してないね、どちらかと言うと
逃げより戦闘を得意とする感じだ。
「ほう?そこの小娘は兎も角、盗賊と言われて眉1つ動かさないか。
特にそこの異世界人は俺達の様な人種を見慣れてやがるな
………フン、なかなか面白いじゃないか」
男はそう言って私に視線を向け笑いかける。
「まぁね、なりは小娘だけどそれなりに修羅場は潜ってるからね
貴方達も見慣れた雰囲気だから話しやすいよ」
「………」
私も笑顔を向けてそう返す、その言葉を聞いた男の視線が殺気を籠った
物になる。それに反応して周りの男達の殺気も膨れ上がり
一斉に私に向けられる。
「………ッ、レン!?」
「マスター!?」
それを感じ取ったのかフィルとリーゼが私の前に出ようとするも
私は手で制する。
「ご丁寧なご挨拶どーも、やっぱり想像通りの人達で嬉しいよ
思ってた以上に話の分かり易そうな人だからさ」
私はそう言って不敵に笑う、周囲の男達の殺気はますます膨れ上がり
今にも飛びかからんとする気配だ。
………まぁ無理もない、この人達にとっては挑発するような
言葉のオンパレードだからね。
机の男はそのまま殺気の籠った視線を向け続ける。
けど、次の瞬間………
「フッ………あっはっはっはっは!!」
不意に豪快に笑い出し、男が発していた張りつめていた雰囲気が一気に霧散する。
いきなりの展開にフィルやリーゼ、そして殺気を放っていた周りの男達も
狼狽え始める。
「………成程な、確かにアンタならコイツが気に入る筈だ
その歳でそこまで清濁飲み込めるのはそこの馬鹿だけかと思ったら
こんな所にもいやがったとはな!!」
男はひとしきり笑った後、不敵な笑みを私に向けて
「いいだろう、気に入った
それ程の修羅場を潜ってる奴なら客として扱わなければな」
男の言葉に周りの男達も殺気を消し、お互い何もなかったように会話を始める。
………どうやら認めてくれた見たいだね。
「改めて自己紹介する、帝国盗賊ギルドのギルドマスター『ダスレ』だ
コイツが関わってる以上、アンタとも長い付き合いになりそうだ
精々末永く利用してくれ」
そう言って机の男………ダスレさんは机に戻り、私達が着た時と同じように
行儀悪く机に腰掛ける。
「先に言っとくが、俺達は帝国に認められた盗賊だ。
悪人なのは事実だが、帝国に仇なす事は基本的にはしない。
だから俺達に関わったからと言って罪に問われる事は無い
安心しな、神官様」
そう言ってダスレさんは意地の悪い笑みをフィルに向ける。
「………私は神官である前にレンの為にここにいるわ、貴方達がレンに
危害を加えない限り、私が貴方達に対して何か言う事は無いわ」
「フッ…そうかい、コイツ聞いた通りアンタも相当な変わり者だな」
「誉め言葉として受け取っておくわ」
ダスレさんの言葉にフィルはウェイトレス業で鍛えられた
極上の営業スマイルで答える。
うん…この2人はソリが合いそうにないね、お互いの職業上
仕方ないんだろうけど。
「………で、そっちが例のドラゴン娘か
流石に見るのは初めてだが………どこから見ても小娘にしか見えんな」
この人、リーゼの正体まで知ってる!?
マリスが教えたのかそれとも独自に調べたのか………
「安心しな、顧客の秘密を漏らす様な事はしない。
こう見えて信用商売だからな、折角のお得意様を手放すような真似はしないさ
それに、帝国がごたごたするのは俺達にとっても都合が悪いからな。
………尤も、冒険者に依頼と言う形で利用はさせて貰うがな」
成程、アングラな仕事だからこそ信用を優先する訳だね
けどそれを超えない範囲で利用はさせて貰うって、盗賊らしい強かさだね。
「依頼の発注はギルドを通してね
勿論受ける受けないの判断はさせて貰うけど」
「結構だ、なるべくお前さんたち向けの依頼を回すようにさせて貰うさ」
私とダスレさんはそう言いながら不敵に笑い合う
うん、思ってた通りの話の分かる人だ。
こういう人は自分に利益があるならば決して裏切ったりはしない。
信用第一としてる節もあるし、ある意味信用してもいい人物だ。
「んっふっふ~、予想した通り楽しい初邂逅になったね~
いやはや、面白い物が見れて大満足だよ」
私達のやり取りを見て終始ニコニコしていたマリスが口にする。
………まさか、これが見たいがために私達をここに連れて来たんじゃないよね?
「んじゃお互いの自己紹介も済んだところで………
ダスレのおっちゃん、依頼した件に目途がついたんだって?」
「ああ、まだ不確定な所も多いが………ある程度の目星はついた
おい、地図を持ってこい」
ダスレさんは近くの男に命令し、地図を持ってこさせる。
そう言えばマリスがここに何か依頼したんだっけ。
「とりあえず確定したのはここと………ここだな
後は3か所ほどあるだ裏取りは出来てない」
「ふむふむ………2つとも王国領内かぁ
こりゃ思ったより長旅になるねぇ」
2人で何やら話してるが内容はいまいちよく掴めない
どうやら何かの探索を依頼したっぽいんだけど………
「ちょっとマリス、少しは説明位しなさいよ
アンタが私達をここに連れてきたんでしょうに
いきなりその人と意味わからない会話始めないでよ」
説明のないマリスに業を煮やしたのかフィルが問いかける。
「おっと…ごめんごめん、そう言えば説明してなかったね」
本気で忘れてたのかマリスははっとした表情になり、私達の方へ向く。
「マリスがみんなをここに連れてきた理由、それは
ダスレのおっちゃん達に最後に勇者が目撃された場所を探して貰ったから
そこにみんなで行ってみようって思ったからなんだよ」
………はい?勇者が最後に目撃された場所?
理由を聞いてますます混乱する私、一体マリスはそんなとこに行って
何をしようって言うの?




