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魔王と勇者が死んだ後、俺が世界の主になる  作者: 我妻 ベルリ
第三章 仙船 大千郷の英雄編
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第43話 夢廻り〜メザメ〜

 魔眼『再眼(さいがん)』。


 繰り返しの修行の末身につけたノアの魔眼。本来なら何十年もかけて手に入れるものだが、ノアの素質と絶え間ない限界を超える修行の結果、齢11歳で身につけたのだった。

 その有する能力は『適応』。ノアに対しての攻撃(死に繋がる行為)は、その攻撃を目視し、()()()事で当たらなくなると言うもの。攻撃が複雑化すればする程その攻撃を見る回数は増えるが、適応さえ出来ればその攻撃は二度とノアへは当たらない。


 鋭く光る眼は魔物化したアスを見下ろす。

 アスもノアを認識し、戦闘態勢へ移行する。それと同時に、ノアが放っていた巨大な水の塊がアス諸共繁華街を包み込むように降り注ぐ。

 辺り一体に広がっていた炎は鎮火し、街全体が水没する。

 半径約100メートルを水で埋め尽くし、アスは水に叩きつけられるが、何事もなかったように水面から勢いよく飛び上がり、ノアを探す。

 逆に、落下していたノアはそのまま水の中へと体を沈める。水飛沫と共に姿を消したノアをアスは最大限警戒した。

 しかし、既にノアの間合いに入っているアスになす術は無い。

 ノアが潜った場所をアスは凝視する。

 アスがノアを見つけるよりも速く、水面が波立ったかと思えば、光線のような細い水柱が撃ち放たれ、それは水面を浮遊していたアスを捉えた。


 「ガァアアアア!!」


 魔物化した事で強靭な肉体を手にしたアスでさえ、水面から放たれる高圧の水圧砲が、いとも簡単に貫く。

 無数の貫通した傷はアスを苦しめるも、その肉体は忘れ去るかのように瞬時に回復する。

 それどころか、大量の魔力を一点に集中させ、水中に潜っているノアに向けて放つ。

 しかし、その攻撃はノアに届く事なく、その大量の水に塞がれる。


 ノアは自身が水中へ潜る事で守りと攻めを同時にこなしていた。

 自身は守りを固め、安全圏で相手の攻撃を見破る事に専念し、水中から自由自在に水魔法を放つ。

 呼吸を止めることが必須条件だが、魔力で肺を強化し、通常の倍の呼吸量で耐え凌いでいる。

 その時間3分半。その間、ノアは一方的にアスにダメージを与え続けることが出来る。


 「(アスの攻撃は魔力を一点に集中させて放つ攻撃と打撃攻撃、この二つの攻撃は既に見切った。それ以外は今のところない。なら、僕はこのまま限界まで水中から攻撃に全振りする!)」


 ノアは修行の末に詠唱を必要とせずとも魔法を放つ「無詠唱魔法」を会得していた。

 これにより、水中からの魔法を可能としていた。

 魔法使いの弱点の一つとして詠唱による魔法の特定がある。これは歴戦の猛者であればあるほどその知識と経験によって特定され、攻撃の予測、そのカウンターへと繋がる原因になる。

 しかし、無言での魔法発動であれば、ほとんどの相手は特定どころか、不意打ちを喰らうようなもの。戦場において圧倒的アドバンテージを得ることができる。

 今のノアは簡単な魔法は無詠唱で魔法を使うことができ、それ以外も詠唱短縮で発動できる。

 魔法使いで言えば既に国級(こっきゅう)(一国の総戦力と同等レベル)にまで進化していた。


 ○ ○ ○


 ノアとアスの戦闘が始まり、事前の避難を、夕源及び天護軍(てんごぐん)から指示されていた住民達は、幸いにも被害は最小限に済んでいた。

 訳もわからず始まった戦闘に避難した人々はただ困惑するしかない。

 その中には繁華街を探索していたジン、香薬、アニーナ、ボーガスの姿もあった。


 「今戦ってんのってノア…それと、アス………って事で良いんだよな?」

 「信じたくは無いがそうじゃろうな……この2つの魔力、ワシらが見間違う筈がなかろう」

 「で、でも2人とも違いすぎるよ…特にノアくんは別人みたいに鋭くて、歴戦の猛者みたいな…研ぎ澄まされた魔力だよ…?昨日まで普通だったのに……」

 

 全員が2人の変わりように驚きを隠せない。

 実際は、ノアは一年近く修行し続けていたのだが、そんな事は知る由もなかった。


 ○ ○ ○

 

 水中からの圧倒的な戦況は当然長続きはしない。

 実際にノアは短期決戦を狙ってこの戦術を編み出したわけでは無い。

 魔眼でアスの攻撃を見切る事に全神経をふった戦い方だった。よって、どれだけ多くの攻撃を引き出し、無効化するかがノアの勝利条件の鍵だった。


 戦闘開始から約3分半。

 ノアの呼吸は限界に達し、ノアはついに水中から姿を現す。

 出てきた瞬間、アスは魔力を集中させ最大威力の魔力攻撃を放つ。

 ノアは既に見切っている為攻撃は当たらないが、周辺の水は一気に蒸発する。

 激しい爆発の後、辺りの水は霧散しその場には白い水蒸気が立ち込める。

 その蒸気に姿を隠し、アスの死角から奇襲を仕掛ける。


 「水仙(すいせん)流 帝虎瀑布(ていこばくふ)!」

 「ウガァ!」


 全力で切り掛かるも簡単に腕で防がれる。

 相手と距離を取ろうと、剣を抜こうとするもーー


 「!?抜けない…!」


 アスの強固な外皮と柔軟な筋肉によって傷口を無理矢理塞がれ、剣が引き抜けない。

 思いがけない妨害により出来た隙に、アスは更に攻撃を畳み掛ける。


 「(魔力を集めて放つ攻撃は見切ってる!この至近距離でも回避できる!) 」


 そう考えるノアだが、その予想は外れる。

 ノアの『再眼(さいがん)』は、適応した技は自動で回避または防御される。

 この状況をノアは、自身と他のものを入れ替える「転身魔法」で回避しようと考えていた。

 しかし、その考えを打ち砕くように、アスは初めて見せる攻撃を放つ。


 魔物化したアスの魔法「破壊」。

 魔力自体を高熱のエネルギーへと変換し、自由自在に操る魔法。

 今までの魔力を集めて放つ攻撃とは違い、高熱のエネルギーへ変わった熱線の攻撃にノアは適応出来ていない。


 「ーッ!?」


 至近距離からの攻撃に反応出来ず、もろに攻撃を喰らってしまう。

 咄嗟に魔法盾(マジックシールド)を展開するもその威力は凄まじく、建物を軽く貫きノアを繁華街の外まで吹き飛ばした。


 ノアの魔眼。見切った攻撃は当たらないと言う強力な能力。しかし、初見の技は見切れないと言う最大の弱点を抱えている。

 

 ○ ○ ○


 ノアが前線から離脱し、アスの標的は再び住民と天護軍へと向けられる。


 「ガァアアアア!!!」


 雄叫びを上げ、熱線を放とうと魔力を込め始める。

 

 「水仙流!(おぼろ)鹿威(ししおど)し!」

 

 突如現れた剣士が、背後から斬撃を放つ。

 奇襲を仕掛けたのは、白髪の青年 (れい)丹玄(たんげん)

 間一髪でアスの熱線の方向を変え、上空に退ける事ができた。

 はるか上空で爆散する熱線を見て、丹玄は背筋が凍る。


 「あんなものをここに撃ち込まれたら…仙船は住める場所じゃなくなるな…」


 丹玄は2本の両手剣を構える。アスもそれに応えるように戦闘態勢に入る。

 激しい戦闘が始まったすぐ側でジン達は武器を持って駆けつけていた。


 「これは……なんて事に…」

 

 ボーガスは焼け焦げた繁華街を見て激しく動揺する。

 自分達が救った街はこうも簡単に戦場とかしてしまったのだ。

 そして今、目の前で魔物化し、我を忘れて暴走するアス坊と誰かが戦っている。

 これ以上アス坊を罪人にしてはいけない!


 「ワシらも加勢するぞ!」

 「オッス!師匠!ノアがこれ以上悩まなくて済むようにしなきゃな!」


 アニーナと香薬も同じようだった。

 覚悟を決め、加勢しようとした時ーー


 「ボーガス!無事でしたか!」

 「む?おお!クミと…吾妻!?な、何故ここに…」

 「説明は後です!今はアスを止めます!」


 そう言い残すと、クミが先行して走り出す。それに呼応するように他のメンバーも続く。


 ○ ○ ○


 ………あれ?

 なんで寝てるんだっけ……あ、油断して吹き飛ばされたんだ。

 怪我は……この程度なら回復魔法で自己回復出来るな。

 …誰か戦ってる?速く行かなきゃ。


 ノアは転身魔法で瓦礫と自分を入れ替え、戦場へと舞い戻る。

 そこには、戦っているクミさん達と丹玄の姿。

 そして、住民を避難させながらこれ以上被害が出ないよう軍を指揮する夕源さんと夜宵さん、飛将さんも居た。


 「ノアくん!?そ、その傷は…」

 「ああ…大丈夫ですよ、止血はしました。傷口も塞がってますし、まだまだ戦え」


 パシッ。

 

 速く行かなきゃなのに、夜宵さんが僕の腕を掴んで離さない。

 

 「…なんですか?離してください」

 「行かせない!君をここまで追い詰めたのは僕だ!君は死ぬべきじゃない!」


 そんなこと言ったって…。死ぬのなんかとっくのとうに慣れてしまって何も感じないよ。

 それに、アスを助ける為にはどの道時間が無かった。

 あの謎の人物を見つけて止めない限り、アスの魔物化は変わらない。アスの魔物化を止めるのにも、魔物化したアスを止めるのにも力がいる。その時間ができた事は不幸中の幸いだった。


 「僕が行かなきゃ……」


 夜宵さんの静止を振り解き、僕はまた戦場に足を運ぶ。

 アスを止める力があるのは僕だけだ。

 僕が行かなきゃ……。何の為の時間だったんだ。

 僕が………。


 転身魔法で瓦礫と入れ替わり、再びアスの元へと姿を現す。


 「!?ノア!!そこに居ては危ないですよ!こっちで私達と共にーー」

 「それはこっちのセリフです。クミさん達こそ速く下がっててください」

 「ッ!ほ、本当にノア…なんですか?」


 僕の魔力を見て、ようやくクミさんは驚異的な変化に気がついたようだった。

 僕はもう一度構えを取る。

 今回はさっきの熱線も見切っている。

 瓦礫の山からアスに向かって飛び降りる。


 「ガァアアアア!!!」


 熱線の攻撃。それはもう見切ってる。

 転身魔法でアスと僕の位置を入れ替える。放たれた熱線はアス自身の体を貫き、その肉体を焼いた。

 悶え苦しむアスに、更に攻撃を叩き込む。


 「第一門 魔法連射銃(マジックマシンガン)


 杖の先から連射される魔法弾は、眩い光を放って着弾と同時に炸裂する。

 

 爆煙が立ち昇り、連射を止めるとその隙を逃すまいとアスは無数の熱線を空中へばら撒き、反撃を試みる。

 まるで空に上がる花火の中に居るようだ。一気に大気が熱され、呼吸すらも喉を焼きそうな熱気によって阻まれる。

 しかし、一度見切った技は二度と届く事はない。

 攻撃とは呼べない熱線を全て避けて、ノアは杖に魔力を集める。

 目の前に迫る驚異に、アスは魔法ではなく殴る選択をとる。 

 右からの拳を水仙流の剣で受け流し、空いた隙に限界まで圧縮した魔力を放つ。


 「第五門(だいごもん)超圧砲線(オーバープレッサー)!!」

 「グァラアアアアア!!!」


 最大威力を至近距離で撃ち込まれ、遂にアスは活動を停止する。そのまま地面に倒れ、動かなくなったアスを見てノアはようやく肩を下ろした。

 

 まるで長い旅が終わったかのような………胸の奥に溜まっていた黒い霧を吐き出すように息を吐く。

 ふと上を向くと空は青みがかっている。

 夜明けが近いんだ。


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