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おとぎ話の悪役令嬢は罪滅ぼしに忙しい  作者: 石狩なべ
十章:お休みなさい 夢と希望(後編)
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十章 お休みなさい 夢と希望(後編)


 ――そっと手を伸ばした。


 ――これには、思い出が詰まっている。




「姫様のお髪の毛はほんっっとーにお綺麗です。櫛をさしても、ぎこぎこはしません。すーーーって通っていくんです! いや、これすごいんですよ! お綺麗な証拠なんですよ!」

「カリス! 姫様の前でなんて話をするの!」

「ひぇっ! ごめんなさい! 先輩!」

「うふふふ! いいのですよ! グロリア!」

「でもっ!」

「わたくし、カリスのお話が大好きなの」


 可憐な瞳がメイドに振り返った。


「カリス、もっと面白いお話を聞かせて? わたくし、カリスの声が聞きたいの」

「ええ。ええ。もちろんですとも。ふひひ! 姫様が望むのならば、カリスはいつだってどうでもいいお喋りをしますとも!」

「調子に乗らない!」

「あははは!」

「姫様、デビュタントではお綺麗なドレスを着て、お綺麗な殿方と踊りましょうね。大丈夫ですよ。姫様のために作った髪飾りはカリスが保管しているんです。カリスは自分のものをよく失くして、先輩に叱られてるんですけどね? もう、姫様のものとなったら、カリスは絶対になくさないように、見えるところに保管してますからね。大丈夫ですよ。当日はもう、カリスにお任せください! 髪が乱れたら……」


 メイドは櫛をその方に見せた。


「カリスの櫛で、ちょちょって整えてさしあげますからね!」

「ええ。その時はお願いしますね」

「お任せください!」


 グロリアがやれやれと顔を押さえ、メイドと姫は、大きな声で笑い合う。


「ふひひ!」


 楽しくて、幸せで、仕方がない。




 大切な、――わての――ターリア姫様。






「……寂しい思いをさせてしまって……本当にすみません」


「これからは一緒ですよ」


「カリスがずっとお側におります。ターリア姫様」



















「大丈夫。もう少しで会えるよ。あと、もう少し。だからさ、ね。そんな顔しないでよ。ドロシー」


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