2-13 公爵家のブレない風景
とりあえず、魚の事は一旦忘れておくとして、準備をしなくては。
なるべくこっちでオリジナルの料理は作っておいて、明日は昼過ぎに公爵家の料理人も夕方まで借りて、騎士団の調理場で頑張ろう。
お酒は明日渡さないと、今日から宴会始める奴とかいそう。
そう、騎士団長。
それは、あんたの事だよ。
他の奴らは扱きまくられて、今日明日はそういう狼藉は出来ないだろうから。
御屋敷に帰ったら、お留守番のチュールが飛びついてきた。
『お帰りー。あ、サヤからなんかいい匂いがするう』
「焼き肉よ。
お肉の試食で。
今日明日は忙しいわ。
明後日はパーティに行くから、その仕込みね」
『やった、パーティだ』
「リュール、チュールも連れていっていいよね」
「ああ、構わんぞ。
むしろ、共に戦った仲魔なのだから、連れていかんと団長自らうちまで呼びに来そうだ。
チュールは、お前の護衛でもあるのだし」
「あっはっは、あの人なら普通にやりそうだね」
『パーティ、楽しみー』
「そうそう、お菓子も作らなくっちゃね。
今まで作ってない奴にしようか」
『シュークリームも』
「あんた、本当にシュークリームが好きね。
じゃあ、フルーツを大量に仕入れたから、またフルーツ入りでも作ろうか。
あとフルーツタルトもいいな。
フルーツケーキも捨てがたいかな」
それから、ちょっとチュールの案内で『ホンカン』を捜しにいったら中庭にいた。
あれ、公爵夫人も一緒だ。
何をやってるんだろう。
そして近寄ってみたら、びっくり。
チェスしてた。
こっちの世界には地球のこういうボードゲームみたいな物が意外と溢れてる。
それらは、当然あの青い鳥の陰謀によって結果的にもたらされたものであった。
そしてチャックが一つ駒を動かした後で、手元の駒の一つを持ち上げて、机を軽く三回叩いた。
どうやら、チェックメイトという事らしい。
「あらやだ。また負けちゃった。
ねえサヤ、この子にチェスを教えてあげたんだけど、結構強いわよ」
「あんた、何をやってるのよ」
『公爵夫人からチェスを教えていただいているのであります。
結構楽しいです』
「あんたって確か脳がいっぱいあるんだよね。
普通の人間がチェスで勝てるはずがないでしょ。
まあいいんですけど。
あ、公爵夫人。
明後日の晩はパーティに行きますので」
「あらそう。どこの?」
「騎士団本部ですよ。
この間の騒動の慰労会ですね。
私の主催です」
「へえ、いいわね」
『パーティでありますか。
本官も護衛として行った方がよろしいのでしょうかと聖女サヤに確認してみます』
「あんたは駄目。
チュールだけ連れて行くから」
『それは何故でしょう』
「あんたが世界最高にフルボッコにした騎士達を私が慰労する会だからよ」
『はっはっは。
本官が出席したら、彼らがどのような反応を示すものか見られなくて残念だと聖女サヤに報告しておきます』
「あはは、あんたって本当に面白い子ねえ」
『人生は楽しい方がいいですよ。
まあ本官は人ではありませんが』
「確かにね。よく覚えておくわ」
『光栄であります』
とりあえず、今日は王宮へ連れていってあげられなかったので、今からチュールのおやつも兼ねてお菓子作りをする事にした。
今日は小豆が手に入ったので、お饅頭に挑戦。
小豆を煮て、その間にお饅頭の皮作り。
小麦粉やイスパタ(イーストパウダー)なんかの、簡単な材料で作る奴なので皮自体はすぐ出来る。
この世界にもベーキングパウダーはあるけど、これを使うと色がついてしまうと言われるので和菓子同様にイスパタを使う。
たぶん、昔ながらの材料である米の粉と山芋類の方が美味しそうだけど、今日は準備がないので。
小豆の餡が煮えるまでが大変だったが、そこは頑張った。
こういう物って馬達が食べるかもと思ったので、こいつは多めに作っておいた。
ここの厨房にはちゃんと蒸し器があるのだ。
普段は何に使っているんだろうな。
今度中華まんにでも挑戦しよう。
時間的に丁度おやつの時間になったので、チュールと一緒に味見した。
「おお、これはまた素朴な味だ。
まあすっごいシンプルな奴なんだけどね」
『これも美味しいけど、やっぱりシュークリームかな』
「そうね。
お馬さんの意見も聞いてみようか」
そして厩へ行き、連中にも食べさせてみたのだが、まあまあくらいの反響?
『甘くて美味しいっすね』
『でもちょっと小さいかな』
『僕はおやつがいただけるのなら何でも』
『わしは人参の方が好みでごわす』
『サヤー、遊んでー』
「もう、しょうがないわね。
今日は忙しいから、ちょっとだけよ」
結局、馬といっぱい遊んでしまった~。
昼中の厨房が空いた時間に、あれこれやる予定だったのにー。




