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34 小雨

「それにしても何故、ロゼッタはこんなことになったのだ?」


「私とロゼッタが客室に戻る前、この部屋から出てきたのは公爵令嬢リリアンヌの侍女フィオーレです」


「そういえば、リリアンヌは客室にユリを持っていくよう茶髪の侍女に指示していたな……」


「状況的に、この客室にユリを持ち込んだ侍女フィオーレが控えの部屋に置いてある水差しにユリの茎を浸けたあと、客室にユリの花を生けた可能性が高いですね」


 第二王子の疑問に答えれば、レナード王子は銀髪の騎士と赤髪の騎士に視線を向けた。


「アルベルト、ヴィットリオ! 公爵令嬢リリアンヌの侍女フィオーレを発見次第、拘束しろ!」


「はっ!」


「了解しました」


 二人の騎士が客室を後にしていく。その姿を見送った後、金髪碧眼の王子は握っていたロゼッタの白い手を離して立ち上がった。


「私も公爵令嬢リリアンヌのところへ行ってくる……。わざわざ控えの部屋に置かれている水差しに『ユリ毒』を混入させたということは、猫獣人であるロゼッタの命を害そうとしていたのは間違いないだろう。これがリリアンヌの指示なら私も黙ってはいられない」


「レナード王子……」


 蒼玉色の瞳に並々ならぬ決意が見て取れた。ロゼッタの命が脅かされたことで第二王子が内心、憤っているのは間違いない。


「グラウクス殿」


「なんでしょうか。レナード殿下」


「リリアンヌの侍女フィオーレが拘束されるまで多少、時間がかかるだろう。念の為、しばらくロゼッタの側についていてもらえないだろうか?」


「承知いたしました」


「ロゼッタ……。そなたを害そうとした犯人は必ず捕らえて罪を償わせる……!」


 そう告げると金髪碧眼の王子は青色のマントをひるがえして客室を後にした。第二王子が立ち去った後、黒縁眼鏡の魔術師は窓の外に視線を向けた。


「公爵令嬢リリアンヌの侍女が毒物混入の容疑者ですか……」


「水差しの周辺にユリの花粉が落ちていたこと。水差しの水にユリの茎をつけたことは犬獣人のヴィットリオさんが証言して下さってますし、侍女フィオーレに公爵令嬢リリアンヌがユリの花を持っていくよう指示していたことは、第二王子もご存じのことですから」


 正直、あの茶髪の侍女フィオーレ以外に実行犯は考えられないという状況だ。問題は公爵令嬢リリアンヌがロゼッタにユリ毒を盛ることを指示していたかだろう。第二王子も特に言及はしていなかったが、その辺りは明確にしたいに違いない。


「犯人が拘束されて速やかに事件が解決すれば良いのですが……。おや、空模様が怪しくなってきましたねぇ」


 長髪の魔術師が言った通り、空は濃い灰色雲に覆われていき小雨がパラついてきた。そして、それはやがて土砂降りの雨に変わっていった。

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