ピコハンマスターの恋 小話集6
こちらは不知火 螢様による
ピコハンマスターとヘイムダールの結婚するまでの裏話です。
のなには書けぬ純愛をお楽しみください(。-ܫ-。)ムフッ♥
人物のイメージは皆様それぞれです、ご了承ください。
(ピコハンマスターが射止めるまで1) 不知火 螢様
私たちの中心人物は「シャナ・リンスター」である。
これは、幼等科から高等科に進学するまでずっと一緒に成長してきたメンバーは少なからずいるが、誰も異論はないだろう。私たちの中心はシャナ。これはもう、骨の髄まで叩き込まれた本能と言ってもいいだろう。時折とんでもないことをしでかすという共通認識はあるものの、シャナが何をしても「まぁ、シャナだし」で全てを片づけてしまうほど、私たちはシャナを信頼している。
さて、私もそんなシャナを信頼しているクラスメイトの一人である。名前はまぁ、伏せておこう。そんなもの、知る必要のない情報である。
シャナ・リンスターはおそらくきっと、私と同類、である。
幼等科に入ってすぐにシャナが提案したのは「鬼ごっこ」。ついで「かくれんぼ」「高鬼」「影踏み鬼」など、私にとっては実に懐かしい遊びの数々だった。これだけで、シャナが同類であることは容易に想像できる。
なんてことを思いながら成長することを数年。同類以外にもシャナと私の共通点を見つけた。
私もシャナも、魔力のコントロールが驚くほど下手くそなのである。
シャナはまぁ、その尋常じゃない魔力の高さから来る影響なのかなー、と私は勝手に思っている。
シャナは黒髪黒目と、見るからに魔力が高そうであるが、その為なのかシャナの周りにはよく、へイン先生やディアス先生がさりげなーくそばにいる。後はノルディークさんとか、アルディスさんとか。きっと、いつシャナが暴走してもいいように待機してるのかなというのが私の勝手な予想だ。なので、何となくへイン先生やディアス先生には親近感が勝手に湧くのだ。
まぁ、へイン先生は担任なので親近感も何もないのだけど。
あまりにも魔法の使い方が下手なので、へイン先生やディアス先生に相談したりとかしているのに全く上達しな日々が続く。思いのほか生徒思いだったらしい先生たちが特別に特訓してくれたり、先生たちに用があったらしい専門科の人が一緒になってやっぱり特訓に付き合ってくれたりとしているのだが、一向に上達しないのだ。
あまりにもコントロールが下手すぎて落ち込んでいる私を、やはり受け持ちの生徒だから気にかけてくれているのか、へイン先生が慰めてくれた時は思わず胸がときめいたのは、秘密である。予想外の感情を持っちゃったかもしれないなんて、秘密と言ったら秘密なのである。
「多分、イメージがきちんとできていないんだ」
へイン先生にそういわれても、そもそも魔法をイメージってどうするのか、それがイメージわかないのだ。
私にとって魔法と言ったらローブをまとって杖で決まった呪文を唱えるとか、魔法のステッキを持って悪と戦う魔法少女とか、そんなんだ。
せっかく魔法のある世界に生まれたのだから魔法を使ってみたいと思うのだが、そんなイメージが邪魔をするのか私は本当に魔法はうまく使えないのだ。魔法を使おうとしても魔力が形にならず、適当に白いモヤ的な何かが生まれて消えて、それでおしまい。使えても予想以上に魔力を注ぎすぎたり、逆に足り無すぎたりと簡単に暴走する。おかげで今じゃ、授業やこの特訓の時間以外は魔法禁止と言い渡されている。
むぅ、私に足りないのはやはりステッキなのか。魔法のステッキなのか? 魔法のステッキで誰と戦うんだ!? いや、それは流石に違うだろう!?
なんて、己の思考にセルフ突っ込みをした瞬間。
「……お?」
「それは?」
「ピコハン、ですね」
「ピコハン、だね」
「……」
「……」
私は何故か、元々持っていたかのように自然な形でピコハンを握っていた。
きっと先生は「なぜピコハン?」と聞きたかったんだろうけれど、ごめんなさい、先生。私が聞きたいです。
見せてほしいという先生にピコハンを渡してみたところ、どうやらこのピコハン、私の魔力でできているらしい。つまり、私の魔法、ということだ。先生がピコハンに魔力を込めると、ピコハンはきれいさっぱり霧散した。
……まさか、セルフ突っ込みの際にピコハンを無意識にイメージした、のか!?
何はともあれ、一応初めてまともに成功した魔法ということで、先生は笑顔で褒めてくれ、頭を撫でてくれた。その笑顔を正面から見てしまった私は恐らく、耳まで真っ赤になったことだろう。顔が熱い。それに、心臓がバクバクと煩くてどうしようもなかった。
どうしたんだ、なんて先生は聞いてくるけれど、私は答えることもできずにただ固まってうつむくことしかできなかった。
「(先生、絶対自分の笑顔がどれだけの威力を持ってるか気づいてないんだ……!!)」
別に顔がいいから、というわけではないが、どうやら私は先生が好きらしい。
どこがどう、というわけではないが、先生を一目見れるだけでテンションは鰻登りだし、授業以外で話が出来ればそれだけでその日一日は幸せだ。声が聞こえれば挙動不審になり、先生の方から声をかけてくれた、なんてことになったらもう、その日の私は一日中によによと笑っていられる。(そして気持ち悪いとクラスメイトに突っ込まれる)
先生のちょっとした言動に一喜一憂するのだ。これを恋と言わずに何と言おう!
正直な話、前の人生から数えても本気で初恋なので、他の恋を知らないのだが、きっと、恋なのである。
魔法の話に戻るが、一度成功してしまうと後は慣れなのか、ピコハンはほぼ無意識に生成できるようになった。大きさも硬さも自由自在、ただしピコハンなので私のイメージがそうさせるのか音は常に「ピコン!」である。どんなに硬い岩盤を砕くときであっても「ピコン!」という全く音なのだ。
しかしそれ以外の魔法は実に下手くそなので、できるのはピコハンの生成のみ。後は精々使い魔との意思疎通程度である。
ならばせっかくなので、とピコハンの使い方を極めようとしてありとあらゆるピコハンの使い方を編み出していると、いつの間にか「ピコハンマスター」などと呼ばれていた。何故……
ついでになぜか私のへイン先生好きが周知のものになっていた。……うん、まぁ、結構あからさまだしね。
まぁ、別にいいけれど。先生にどう思われようとも私が一方的に好きなだけだし、そもそも私が学生であるうちは先生もあからさまに拒絶はできまい、という打算もあると言えばある。でも多分、先生は私の気持ちには気付いていないのだろう。万が一気付いていたとしても、思春期特有の大人への憧れかなんかだと思われていそうだ。
それからさらに数年。高等科に入ると、やはりシャナは同類だったという確信を得る。
「(佐奈ー!?)」
魔族が何故か学園に攻めてくることになった時のことである。
何故魔族が攻めてくるのか、そもそもなぜシャナが幼児になっているのか、でもまぁシャナだしいっか、きっと魔族もシャナがなんかしたんだよね、なんて納得して魔族vs学園の学生とというどう考えても不利な戦いの最中、敵の親分である魔王が刺され、そこに駆け付けたシャナからかつての私の友人である「高木佐奈」が現れたのだ。
私の居た位置からは距離はあったが、私の使い魔の特技は「遠見」なのである。だから、見間違いではないだろう。
同類だ、同類だとは思っていたけれど、よもや友人だったとは思いもしなかった。だって、性格が違うのだ。佐奈はもっと大人しい、といえば語弊があるが、あそこまで肉食女子でもなかったし、がっついてもいなかった。キスだけはやたら上手かったが。
……うん、酔っぱらった佐奈からね、何度もね、うん。おかげで多分、私もうまくなったと思うよ、エロちっす。まだ試したことはないけど!
シャナ本人に確認を取ってみたいと思っていたけれど、幼いころから空にあった緑色の何かが壊れて落ちてきたのでそれどころではなくなってしまった。直後にゴブリンが出てきてそれの殲滅したり、瓦礫の撤去に勤しんだり、へイン先生の知り合いらしいエルフに突っ込んだらよけられて、そのついでという感じで初キスを奪われて思わず泣いちゃったり、と色々あっていまだに聞けずじまいである。
その後も魔物退治やら羊退治やらスライム退治やら、ついでの王都壊滅のため復興に全力を注いだりなんてしていて、気づけば今更聞くにはちょっと、という感じである。
まぁ、私だけが一方的に知るシャナの秘密、というのもあってもいいだろう。
で、結局気付けばさらに数年。もう学園を卒業する年となった。
周囲ではちらほら結婚やら婚約する者も増えてきている。元々貴族であるから婚約者のいる生徒も多いけど、中には親の決めた婚約者を蹴って自分で選んだ人と婚約した人もいる。例えばシャンティ、とか。
……うん、シャンティがシャナのストーカーと婚約するとは本当に、思わなかった。一体シャンティに何があったのか、ちょっと詳しく話を聞きたいところだ。シャンティが口説いたのかな?
そして先日はシャナがついに結婚式を挙げた。旦那さんが現時点で三人、最低あと二人増える予定とか、流石シャナとしか言いようがない。今のシャナを見て、まさか泥酔して持ち帰った男と何もなかった女とは誰も思わないだろう。
そんなこんなで、今日は学園の卒業式なのです。一応、これでも私も貴族の娘なので卒業したら親の決めた婚約者と結婚するのだろう。割とすぐにでも。
ただ、心の中に別の人を住まわせたまま結婚するのはちょっとあれなので、見事玉砕すべくへイン先生を呼び出した。
先生的には寝耳に水かもしれませんが、よーく聞いていてくださいね。大丈夫です、先生を困らせるつもりは微塵もありません。流石に身の程はわきまえてますから。どこかの元騎士とは違います。
なんて、前置きをしてから、一つ大きく深呼吸。心臓がうるさいし、緊張と恐怖で体が小刻みに震えているのがよく分かる。
声が裏返らないように、もう一度だけ、深呼吸。
では、いざ!
「先生、私の嫁になってください!」
「なってくださいじゃなくて、嫁にしてください、だろ!」
バシン! と一部では私の相棒と呼ばれている友人にハリセンで突っ込まれた。
く、確かに彼女とは数々の突っ込みを行ってきたが、まさか私が突っ込まれる日が来ようとは……!
むぅ、テンパりすぎてその程度の間違いは許してほしい。というか、どっから出てきた、人の一世一代の告白だというのに。
チロリ、と睨めば友人はそそくさと退散していく。でも多分、まだどっかで見てるんだろうな。気配消すのうまいから、あの子。あぁ、でもおかげで緊張はいい感じに解れたかも。
そして私は改めて、口を開くのだ。
ん? 先生のこたえ? 私が遠慮なしにこれから猛アタックを開始し、数年後に私が我が子をかけてとあるエルフと尋常ではない戦いを繰り広げることとなる、ということだけ、言っておこうと思う。
それと、シャナとは思いがけずもの凄く長い付き合いになる、とも。
「先生、大好きです♪」
(ヘイン君の裏側話) by のな
ヘイン君はピコハンマスターを気にし始めたきっかけはカルストに奪われた初ちっすです。
あの泣き顔にヘイン君もクラッと来たのですよ♪
そして少し気になる生徒に…ww
猛アタック後はとっても愛しい子になっておりました。
結婚までの間はハーフエルフである自分と、自分の両親のことが重荷になりはしないかと考えて少し待ったようです。
決して猛アタックが可愛かったのでもう少し見て見たい…なんて思ってませんよ?
カルさん「あれは思ってましたよ。笑み崩れておりましたからねぇ」
シャナ 「でれでれでしゅた」
(ピコハンマスターが射止めるまで 2) BY不知火 螢様
この世界に生まれて特に困ったことはこれまではなかった。
確かに日本に比べたら不便は不便だけど、それでも特に困ったことはなかった。
――今日、このときまでは。
「……まったく縁がなかったからこんなセリフを言うことになるとは思わなかったわ……」
妊娠検査薬が、超欲しい。
来ないのだ。月のものが。
いや、覚えはある。覚えはあるのだが、そんなまさか、ねぇ、マンガみたいなことって、あるのかよ、おい、みたいな。
だって、長命種って、子供生まれにくいってのがお約束じゃないの? 違うの??
そして、この世界ではどうやって調べるの。みんなどうやって調べるの!? 人に聞くにしても誰に聞くの、母親!? 母親になんて聞けるわけないじゃないー!!
「というわけで、私の知る限り一番話しやすい人のとこに着ました。あ、三人目おめでとー」
「あ、ありがと」
シャンティは二年前に結婚して、ちょっと前に二人目を出産し終えたばかりだ。そして、三人目の妊娠も発覚した。
こんな話ができる人なんてほかに居ないのでつい頼ってしまったけれど、間違いではないと私は信じてる。うん、信じてるから、シャンティさん!
「……まぁ、話は理解したけど、そもそも、相手って誰よ。いや、あんたのことだから一人しか信じられないんだけど、その一人もちょっと信じられないっていうか」
「先生以外だったら潰してるわよ」
何を、とは言わないけど。潰してる。で、女の子に仕立て上げるの。
「……うん、最近乙女やってるからちょっと忘れかけてたけど、あんたが突込み隊の筆頭だってこと思い出したわ」
「筆頭って何。っていうか、その突込み隊ってやめてよー。何を突っ込むの。誰を突っ込むの。むしろ私たちを突っ込むの?」
「命名はシャナなんだから文句はシャナに言いなさい。で、あんた達は立派な突込み隊よ。存在そのものが突っ込みよ。なんで武器がピコハンなの。ハリセンなの。トレイやドリルなの! まともなのは精々竹刀くらいじゃないの。あの子も掛け声は立派な突っ込み隊だったけど」
「う、いや、それは……」
ピコハンの生成しかできないからです、とはとても言えない……
「まぁいいわ。まずは――」
◇
「……三ヶ月でした」
「あら、おめでと。で?」
「あ、ありがと? で?」
「で、なんでこんなことになったわけ。あんた、まだ先生とはそんな関係ではなかったはずでしょ(先生がなんかうじうじなやんでるっぽいから)」
「あー、いや、そのー……」
シャンティの指示に従って診断してもらった結果、妊娠三ヶ月でした。
何気なく下腹部をさする。ここには、私以外の命が宿っているらしい。何とも不思議な気分だ。
で、親にはまだばれたくないという私の心情を察したシャンティが一先ず色々面倒を見てくれるらしい。その代り、洗いざらいすべてはけ、ということらしい。
「えーと、その」
「なによ、とっとと吐きなさい」
「先生の寝込みを襲いに行ったら返り討ちにあいました!」
「…………」
「うあーん、その冷たい視線はやめてシャンティさん!!」
冷たい視線がグサグサ刺さる! 何に刺さってるのか分からないけど多分心的な何かに超刺さってるー!
「うぅ、次の一手をどうしようかなって悩んでたら、先生が寝ているところに侵入して、そのままコトに及ぶ……まではいかなくても、あ、覚悟はしてたよ? うん、まぁ、そんな感じで既成事実を作った風なふりをしてみたらって……シャナが」
「シャナか!」
「言い出したのでノリノリでその案に乗りました!!」
あ、やばい、このままじゃシャナのせいみたいになる、と思って慌てて付け足したが、その結果、ものすごいじと目でシャンティに見られた。
うぅ、でも自分のケツは自分で拭くものなのよ……私がやると決めたんだからシャナのせいにしちゃダメなのよ……
でもおかしいな、昔のシャンティはもっとシャナみたいで色々なことにノリノリだったんだけどな。
シャナに魔力酔いさせられた先生のことノリよく吸ってたじゃない。母になるってこういうことなの?
いまだから言うけどあの時の私はめちゃくちゃシャンティに嫉妬してたよ。よく覚えてないけどなんか涙目で小刻みに震えてたらしいよ。
……我ながら、ちょっと先生のことを好き過ぎるよね。今更どうしようもないし、どうするつもりもないけど。
「まぁいいわ。シャナの友人やってたらそれくらい感化されて当たり前だものね」
「一番シャナの影響受けてるのってシャンティだけどね」
「おだまり! で……その子、どうすんの? 産むの?」
「産むよ、もちろん。え、むしろ産む以外に選択肢なくない?」
「それはそうかもしれないけど……でもあんただって一応貴族なのよ? 貴族の未婚の娘が妊娠、出産って、外聞悪いにもほどがあるでしょう」
「別に先生との子供と外聞なんて比べる価値もないけど……まぁ、一応家にも迷惑かけそうなら最悪勘当してもらおうかな、って。兄様のところに男の子が三人いるから跡取りには困らないし、お義姉さまが家よりも格上の生まれだからこれ以上私を使って貴族同士の繋がり作らなくてもいいかな、って両親も思ってるみたいだし。それに、未婚で妊娠、出産って広まればこれ以上縁談も来ないだろうし、何より婚約者も諦めてくれるかな、って」
先生に見事玉砕したら結婚するつもりだった婚約者とは、なぜかまだ婚約が破棄できていない。
玉砕するつもりだったし、そうなったら気持ちに区切りつけて普通に結婚しようとは思う位の好意はあったので、早く別の人を見つけて幸せになってほしいのだけど、なぜか婚約破棄の話に首を縦に振ってくれないのだ。
私にそんあ執着するような価値はないはずなんだけど。
……そういえば、昔何かのきっかけで思いっきりピコハンでどついたことあったけど、それから何やら私を見る目が変わった気がする。もしやどM? 生憎私にはそんな人をいたぶって喜ぶ趣味なんてないんだけど!?
「まだ諦められてなかったの。っていうか、そこまで考えてたわけ?」
「ん? んー、まぁ、ね。それにさ」
「なによ」
「先生ってハーフエルフじゃん? だから、どう考えてもこのままじゃ私が先に行くことになるんだけど、この子が居たら、少しは私のこと思い出してくれるかなー、って。この子もエルフの血を受け継ぐわけだからそれなりに長寿だろうし」
「……あんた」
先生の本音が分からないので最近はちょっと、そんなようなことをぐるぐる考えてしまう。
先生はハーフエルフで、私では想像もできないような長い時を生きてきたんだろうし、これからも生きていくんだろう。そうなったら、私みたいに周りをうろちょろしていた一生徒のことなんて、そのうち忘れてしまうだろうと思う。
でもそこに、自分の血を引く子供が居たら、その子供を産んだ私のことも時々は思い出してくれるかなー、という下心だ。
いや、先生のことを諦めるわけではないけどさ、本当に、手応えがあるんだか無いんだかで、最近ちょっとへこみ気味なのですよ。
可能性が僅かにでもある限りは突撃し続けますが。
「おまけにさ、おまけに、先生、何も態度が変わらないんだもん……! 私はあたふたしてるのに!!」
「あんた、それが一番へこんでる原因でしょ」
「そらへこむよ! こっちは何もかも初めてで「うがー!」ってなってるのに! なんで先生あんなに普通なの!? エルフだから!? 私今度どんな顔して先生に会えばいいの!?」
「あー、エルフってなんかそのあたり人間と感覚違うしね。先生は人間よりだと思ってたけど、やっぱ違うのかな。で、あんたそんなのへイン先生に会ってないの? よく会わずに居られたわね」
「禁断症状出始めてるよー! 先生に会いたいのー!!」
「なら会いに行きなさいよ。平然を装って。っていうか、ちゃんと報告に行きなさいよ。で、で、やっぱエルフって凄いの?」
あらやだ、シャンティさん。目がキラキラしてますよ。まるで昔に戻ったみたいよ!?
「ねね、凄いの?」
「…………気づいたら、一週間たってたヨ」
「一週間!?」
「どうでもいいけど、先生、多分貴族の習慣とか事情とかそういうの一切考えてないよね」
「そうねぇ、考えてたら未婚の貴族の娘に手は出さないわね(考えられなかっただけかもしれないけど)」
「…………ま、いっか」
「あんたがいいなら、それでいいんじゃない?(もうひと押しで落ちるんじゃない? とは言わない方が楽しみは長続きするわよね)」
(緑の塔の知識は!?) by のな
あの世界での妊娠確認は問診、脈診、最後に魔法での触診ですな。
魔法での触診は胎児にも影響があるのであまりしません。
そしてピコハンマスターの脈診で起きたこと…
医師「ドスドスしております」
「ドスドス!?」
医師「いや…ズンズンしております」
「ズンズン!?」
謎の脈…。エルフのクォーターだからですかねwww
妊娠12週目以降はわかりにくくなるはずなのに
かなりはっきりしていたとお医者さんのお墨付きでした(๑ŐдŐ)b
ヘイン君がその妊娠を知った瞬間…
シャナ「なんとっ…おめでとうでしゅ~っ」
皆が寿ぐ中、ヘイン君は蒼白になって告げる。
ヘイン君「病院に行って急いで取り出してもらわないと!」
シャナ 「なんでしゅと!?」
まさかの堕胎!?
シャナの怒りに魔力がほんのり漏れ出す…
ノルさん「子供が欲しくないのですか?」
ノルさんはあくまで冷静
ヘイン君「赤ん坊は母親のお腹を破って出てくる!
すぐに取り出さないと彼女がっ」
全員でズバシッとヘイン君を叩いて突っ込んだ。
シャナの攻撃は魔力が乗っていたのでかなりの威力。三段たんこぶできました。
ディアス「お前の記憶はどうなっているんだ…」
ヘイン君「…違うのか? カルストにそう聞いて…
やはりエルフの血を引くモノだけか?」
カルさんはにこやかに微笑んでおります。ちなみに塔の知識と記憶の妊娠出産の項目は、ヘイン君の謎の恐怖で全て塗り替えられておりました。赤ん坊は腹を破って「あんぎゃー」説に…。
シャナ 「それで行くと、世の赤ん坊は怪獣のようでしゅねぇ・・」
ハーン 「そんな生まれ方されたら出産は大事だろう」
シェール「ひょっとして、結婚を渋った一番の理由は…」
ディアスは大きくため息をつき、眉間を指で挟んで首をフリフリ命じた。
ディアス「ヘイン、一から教わって来い、嫁と一緒に」
そして安心したヘイン君はお嫁様を迎え、幸せに暮らしたのでしょう♪
まさかのヘイン君の知識不足が婚期を遅れさせた原因だったとは…orz
(射止めました) by 不知火 螢様
最終話直後
「こんにちはー」
「あーちゃま!」駆け寄ってきた幼子を抱きとめ、左手で抱き上げる。右には赤子を抱っこ中
「はーい、かあさまですよー、って先生、どこで子供産ませてきたんですか!!」
「!? 違う! この子はシャンティの子だ!」
「冗談です。それくらいわかりますよ。あ、シャンティ五人目おめでとー」
「あ、ありがとう……あんたもそんな冗談を言える余裕が出来たのね」
「できてないよー。なんてったって子供まで生まれたのに「あれ、私遊ばれてる? やっぱり遊ばれてるの?」なーんて思う時期が長かったから、そんな余裕なんてありませんよー」
「……それを十分余裕があるっていうのよ(あ、へイン先生が凹んだ)」
「ちょーっとだけよー」
「だけよー!」
「あらあらイーニャちゃん、今日も可愛いね!」
「イーニャは今日も可愛いのよ~っ」
「うんうん、可愛くって良い子なイーニャちゃんは、この子とも仲良くしてくれるかなー?」
「するー!」
仲良くしてくれるかな、とイーニャの前に赤子(男の子)差し出すと、なんとイーニャはお口にちゅ、と軽くキスをした。
「あらら」
「イーニャーーーーっ!!?!?!」
「「さすがシャナ似」」
「イーニャはおかあちゃま似なのよ~っ」
「へイン! 貴様!!」
「ちょ、俺に言うな!!」
「あ、ディアス先生、それうちの子にも影響あるんでやめてください。その子まだ首すわってないんですよ」
「ところでシャナは?」
「(旦那は無視か)あぁ、ついさっきシェールが帰ってきてね。みんなで引き籠ったわ」
「あ、だからアイリスちゃんをシャンティが羽交い絞めしてるのか。でもそれじゃあ、じゃあしばらくは戻ってこないかな」
「耐久レースって言ってたわよ」
「五人相手に耐久レース……シャナ、がんばれ。超がんばれ。大丈夫、人間、七日くらいなら、何とか耐えられるから。ちょいちょい記憶飛ぶけど……!」
「(それはあんただろう、っていうのは言わぬが花、かな)」
「それにしてもさ、シャンティさんや」
「何よ」
「そろそろアイリスちゃんを解放してあげたら? 落ちてるよ?」
「あ、しまった。ついいつもの癖で力入れすぎちゃった」
「うん、一体どんな時のどんな癖なのかは、聞かないでおくね」
「ところであんた、いつまで先生なんて他人行儀な呼び方してんのよ。つい先日、ようやく、本気でようやくだけど、ちゃんと結婚したんだから、もっと他に呼び方もあるでしょう」
「え、あ、う、いや、その、だって」
「だって、なによ」
「その……だって、20年も先生って、呼んでたんだよ? 今更呼び方変えるとか、そんな、急に、は、無理……」
「(あらら、顔真っ赤)」




