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『次元融合』〜ゲームに侵食された世界【不屈の冒険魂ISAO外伝】  作者: 漂鳥
第3章 行進

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23 完了

 


 父たちと合流後、俺たちは共に「ミース」を目指すことになった。父が引き受けた〈開通クエスト〉の完了が目的だ。


 それが済めば、「ミース」・「クウォント」の2つの街の間を、自由に行き来できるようになる。


 さらに、βテストでは、これから「ミース」で起こるイベントをクリアすると、「エヴリン」・「ミース」間を、船で行き来できるようになるクエストが発生していた。


 おそらくこの世界でも、同様のクエストが発生するんじゃないか? それを期待している。




 現在、「クウォント」にいる人々。そのほとんどが《次元震》以前にはアカウントを持っていなかった「非プレイヤー」と呼ばれる人たちだ。


 街の周囲のモンスターが強かったせいもあるが、彼らは、《次元震》以降の約1カ月、ひたすら街の備蓄を消費するだけだった。今もそうだ。ハルたちに狩ってもらった食料を食い潰しているだけで、積極的に動いている人はあまりいない。


 あのままにしてはおけない。確かめたわけじゃないが、父なら、そう考えていると思う。


「エヴリン」は、大きな河川の中流域にある牧歌的な街で、周囲には広い畑や牧草地が広がり、農業や牧畜など、非戦闘系のプレイをするのに最適な場所らしい。


「クウォント」では無理でも、「エヴリン」でなら彼らも自立できる。


 ……そう見込んでの行動だ。


 もちろん、「ミース」で起こるイベントが厳しいものなら、速やかに撤退するつもりでいる。



 *



 ずっと続いていた登り斜面が下り坂になり、とうとうなだらかな盆地に出た。



「見えたぞ! 街だ!」



 遠くに目をやると、かすかに街壁のような人工物が目に入る。その街壁は、ここから見ても横に長く広がっているように見えた。


 かなり大きな街かもしれない。


 目標を発見したことで、移動ペースを上げた俺たちは、陽が暮れる前に無事に街へたどり着くことができた。



 *

 *

 *



「ミースの街へようこそ。ハンターの方たちですね。歓迎致します」



 外壁にある大きな街門には守衛がいたが、ハンター証を提示したら、すぐに通ることができた。このまま、まっすぐに進めば、ハンティングギルドのある広場に着くらしい。


 しかし、街の様子が変なことに、俺たちはすぐに気づかざるをえなかった。



「なあ、店じまいするの、早くないか?」



 まだ陽暮れまでしばらく時間があるのに、いくつかの商店はもう片付けを始めていた。完全に戸締りが済んでしまっている家も少なくない。


 人通りは少なく、おそらくメインストリートだろうこの大通りに活気が見られない。通りすがりに見た街の人々の表情は一様に不安げで、片付けを焦っているようにも見える。



「とりあえず、ハンティングギルドへ急ごう」



 *



 ハンティングギルドは、広場に面した大きな建物だったので、すぐ分かった。


 中に入ると、広々としたギルドホールがあり、そこにいた何人かのプレイヤーが、全員、俺たちを見て驚いた顔をした。



「もしかしてあんたたち、よその街から来たのか?」



 プレイヤーの1人が声をかけてきた。



「ああそうだ。『クウォント』の街から、山を越えてきた」


「話をしたいんだが、いいか?」


「クエストの完了報告が終わってからなら、ある程度の時間が取れると思う。それからなら大丈夫だ。俺たちも聞きたいことがあるしな」


「クエスト? 一体何の?」


「まあ、待てよ。大事な報告なんだ」


「分かった。邪魔して悪かった。この辺りで待ってるから、終わったら声をかけてくれ」


「ああ、後でな」



 ギルドカウンターに全員で向かい、クエストリーダーである父が受付に報告をするのを待つ。



「クエスト報告だ。よろしく頼む」


「ギルド証を確認しますのでお願いします」



 受付にいるのは、相変わらずウサギだ。綺麗な水色をしている。非現実的な色を眺めていたら、縁日で売られていた彩色されたヒヨコを思い浮かべてしまった。



「お預かりします。……受注されているクエストは、特殊なものですので、奥の談話室で完了手続きをします。クエスト受注者の方々だけ、こちらへおいで下さい」



 4人が案内されていくのを見送り、俺とレオはギルドホールで待つことになった。ドロップ品の精算でもしておくか。


 クウォントで一旦精算したが、山を越える間に、またドロップ品が溜まっていた。それに、これもあるしな。



「ちょっと聞きたいんだが、『懸賞首カード』というのは、どこに持っていけばいいんだ?」


「当ギルドが支払い代行をしておりますので、ここで精算が可能です。精算致しますか?」


「よろしく頼む」



 亜空間収納に直接ドロップしていた「懸賞首カード」5枚と「ハンター登録証」を、ギルドカウンターに提出した。



「確認致しますので、しばらくお待ち下さい」



 受付のウサギが、席を外す。隣のカウンターでは、レオが精算中だ。



「お待たせ致しました。お預かりした『懸賞首カード』5枚の内訳は、クラスDが4枚、クラスCが1枚でした。クラスDは1枚 15万Y(イェール)、クラスCは1枚 30万Yですので、合計で90万Yになります」



 結構まとまった金になったな。



「今回の功績により、ギルドランクが『シルバー』に上がりました。おめでとうございます。ギルドカードに『シルバーキー』が登録されました。今後、ギルド内の『シルバーキー』対象の部屋をご利用できます」


「シルバーキーで利用できる施設ってなんですか?」


「資料室[中]とギルドダンジョンになっております」


「ギルドダンジョンとは?」


「訓練用のダンジョンです。アイテムはやお金はドロップしませんが、何度も挑戦して頂くことによりスキルを取得できることがあります」


 へえ。それは気になる。


「どんなスキルが取得できるんですか?」


「その件につきましては、、お答えできません。ご自分でお探し下さい」


 残念。教えてはくれないのか。


 そうしている内に、父たちが戻ってきた。

 どうやら、〈開通クエスト〉は上手くいったようだ。


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