うちの優しい猫
うちの猫が、前より少し優しくなった気がする。
触ってもあまり怒らなくなった。
夏バテでぐったりしているあいだ、僕がからだを触りまくっていたので、ボディータッチに慣れたのかもしれない。
あきらめたというほうが近いのかもしれない……。
うちの猫がソファーに横たわっているのを見つける。
さっそくおなかをわさわさと撫で回していると、うちの猫がぽんっと前足を乗せてきた。
僕の手を押さえつけて、触るのをやめさせたいようだ。
ぐぐぐ、と力を入れている。
――前なら「クワー!」と威嚇してた状況ですよね……?
気にせずに触り続けようとすると、ちょっと爪を立てる。
手を動かすのをやめると、爪を引っ込める。
触るのをやめて、そのままじっとしていると、「それでいいのよ」というふうに目を細める。
前足は僕の手の上に置いたままだ。
ちょっとかための肉球で押さえつけて、ゴロゴロとのどを鳴らしている。
僕が動こうとすると、ちらっと目を開く。
じっとしていると、だんだん目が閉じて、眠ってしまう。
ふとももの上に乗せることにも成功した。
以前はふとももに乗せてもすぐに逃げていたのだけれど、何度も繰り返して、これにも慣れてきたらしい。
ここまで来るのには苦労をした。
最初は持ち上げるだけで「ウゥー」と唸っていたのだ。
いまはソファーに座っていると、足と足のあいだに挟まってきたりする。
からだを伸ばして、隙間になっているところに納まろうとする。
僕に背中を向けて、ひざの位置に頭を乗せる体勢がお気に入りのようだ。
ちょうどいい場所を見つけると、じっとして動かない。
――落ち着いているみたいだし、触ってもいいですよね。
僕が手を伸ばす。
自分でふとももの上に乗ったくせに、からだを撫でようとすると、ぽんっと前足で押さえてきた。
撫でるのはダメなようだ。
――ここならどうですか?
手を伸ばして、うちの猫の頭を指先でなぞると、抵抗をしない。
頭を撫でるのは問題ないらしい。
そのまま撫でていると、どんどんたまらなくなってくる様子。
落ち着かなくて、体をくねくねさせている。
ふとももの上でぐるりと回転して、おなかを上にして寝転んだりもする。
最終的には僕の両ひざを前足で抱きかかえるようにして、ひざとひざのあいだに頭を突っ込むスタイルに落ち着く。
「なんてところに顔を突っ込んでるんですか……」
そう言ってぽんとお尻を叩くと、頭を突っ込んだまま、からだをもぞもぞさせる。
ひざとひざのあいだから、ゴロゴロという声が聞こえていた。
こうなってくると、もっと触れ合いたくなってくる。
床にへばりついているうちの猫を見つけて、隣に僕も寝転んだ。
じっと見つめあう。
――このまま近づいて、顔をすりすりしたい……!
そう思って僕が動くと、うちの猫にはお見通しだったようだ。
前足を伸ばして、僕の顔を押さえつけてきた。
ほっぺたと鼻に肉球が当たっている。
――こんなの、ご褒美にしかなりませんよ!
気にせず顔を近づけようとすると、うちの猫も前足を突っ張って、全力で抵抗してきた。
なかなかの力で、近づくことができない。
こう着状態のなかで、うちの猫の表情が変わってきているのに気づいた。
瞳孔が開いて、ひげが横に広がっている。
毛皮もふわっと広がっているように見えた。
――これは……本当に怒ってるときのやつじゃないですか。
慌てて顔を離すと、「クワー!」と威嚇しながら僕の周りをしばらくうろうろしていた。
何度か僕の足にパンチをして、ようやく気が済んだ様子で去っていった。
――顔をすりすりは無理でしたか……。
それでも僕の顔を引っかかなかったうちの猫は、やっぱり優しくなっている。
――また挑戦してみよう!
と思った。




