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こほうぎそなたってどなた?
こほうぎどなたのバイトする温泉旅館に彼氏と泊まりに来た姉のそなた。
しかしどなたは姉を覚えていなかった。
病気ではない。記憶喪失でもない。
デフォルトである。
「どなた! 見つけた!」
そなたは彼氏を背中に隠しながら、言った。
「みんな探してるのよ? 家に帰りなさい」
「どなた?」
どなたは言った。
「そなたはどなた?」
「覚えてるじゃない! その、そなたよ! あんたのお姉ちゃんでしょ!」
「どなた? は、どなたの娘? そなたの娘?」
「何言ってるのか意味わかんない! こなたお姉ちゃんも心配……してることにしておくから、帰っておいで!」
「こなた? どなた? そなた? あなた?」
そなたの彼氏がそなたの頭の上からひょこっと顔を出して、言った。
「そなたちゃんの妹かい?」
背の高いフツーのイケメンだ。
どなたが聞く。
「どなた?」
「はじめまして。そなたちゃんとお付き合いさせていただいています、仏野活男と言います」
「あの……ね、どなちゃん」
そなたの顔が赤くなった。
「私達、お忍びの旅行だから……ね? 内緒にしてて……ね? あんたは一人で自発的に家に帰りなさい」
それだけ言うと、姉のそなたは個室露天風呂に消えた。




