第7話「あんたは照れてる!」第三部
コンクリートのベンチは足の下で冷たく、午後の日差しが肩を温めるのとは対照的だった。ここが、彼の聖域だった。学問の世界の喧騒が、蝉の音の壁によってかき消される、学校の忘れられた一角。彼の前には、緑の濃い海のように森が広がり、遠くには、山の堂々たるシルエットが地平線に浮かび上がっていた。
(平穏だ)
ついに、静寂。彼が何よりも重んじる孤独。朝の騒動、隠された対立、そして逃走の後、ここが彼の防御を再充電する時間だった。彼はすーっと深呼吸し、新鮮な空気が肺を満たすのを感じ、膝の上の弁当箱のわずかな重みを感じた。
(モブキャラから脇役Bへのこの昇進は、耐え難い負担になりつつあるな…)
だが、彼の思考は平穏ではなかった。教室での光景が、心の中で繰り返される。彼女の顔に浮かんだ表情が。
彼は正しいことをしたのだろうか?秋山さんにあんな話し方をしたのは…正しい決断だったのか?別に彼女が嫌いなわけじゃない。それどころか。彼女のエネルギーは遠い太陽のようだ。観察するのは面白いが、近づきすぎるとあまりにも痛々しい。
(僕は、ひどい言い方をしただろうか?彼女を、傷つけただろうか?)
森田先生の命令――(『そんなこと、絶対に彼女に言うなよ、三浦くん!』)――が頭の中で反響し、彼の孤立への欲求に苛立たしく対抗する。彼は命令を果たすのに失敗したが、自身の目的を達成するのにも失敗した。彼女を完全に拒絶したわけでもなく、受け入れたわけでもない。結果は、悲惨な中途半端だった。
(それに、なんで…なんで、こんなことが気になるんだ?)苛立ちが胸の中でふつふつと沸き上がった。珍しく、そして望まない感情。無気力は彼の鎧であり、その鎧にひびが入り始めていた。
「三浦くん、見ーつけた!」
彼女の声が、蝉の鳴き声を切り裂いて、水晶のように澄んだ音符となって響いた。竜斗はゆっくりと顔を右に向け、中庭に通じる廊下の開口部を見た。そこに彼女は立っていた。光を背に、あまりにも無防備に見えるほど純粋で誠実な笑みを浮かべて。彼女の赤みがかった茶色の髪が、太陽の下で炎の反射のように輝き、熱に逆らうかのようなワインレッドのカーディガンが、彼女を周囲から際立たせていた。
一瞬、世界は再び音を失い、ただ彼女だけに焦点が合ったように見えた。
(どうして?どうして彼女は僕を追いかけ続けるんだ?)
「ねえ、こんな隠れた場所で何してるの?」彼女は、彼が必死で保とうとしている距離を縮めながら、無邪気な好奇心に満ちた声で尋ねた。
(頼むから…僕を放っておいてくれ)その願いは、彼の心の中の静かな叫びだった。
「真琴ちゃん、何してるの?遅れちゃうよ!」彼女の友達の一人の声が廊下から彼女を呼んだ。
それは、ほんのわずかな隙だった。一瞬の油断。真琴は後ろを振り返り、友人に手を振った。「今行くってば!あれ?」
その隙こそ、彼が必要としていた全てだった。彼女が振り返った瞬間、竜斗の自己保存本能が支配権を握った。怯えた動物のように、彼は動いた。思考はなく、ただ行動あるのみ。彼は立ち上がり、道の脇にある茂みの濃い葉の中に飛び込んだ。制服がガサガサと葉に擦れる音は、彼女の友人の呼び声にかき消された。
真琴が唇に笑みを浮かべて振り返った時、そこには空っぽのベンチと、サラサラと静かに揺れる葉があるだけだった。少年は、消えていた。
◇ ◇ ◇
二階の廊下を歩きながら、竜斗はいつもの仮面を保っていた。虚ろな顔、無気力な眼差し。しかし、その心には小さな憤りがあった。彼はあのベンチに、自分の弁当を忘れてきてしまったのだ。
逃走は彼の心臓をわずかにドキドキと高鳴らせ、苛立たしい感覚を残した。かつては匿名の避難所だった学校が、今や地雷原と化していた。
角に近づいた時、彼は女性たちの笑い声を聞いた。その声の一つ、特に、紛れもなかった。水晶のようで、エネルギッシュで…あまりにも聞き覚えがありすぎた。
考えるまでもなかった。躊躇なく、竜斗はくるりと踵を返した。戦術的、そして本能的な後退。彼の足は、ちょうど真琴とその友人たちが楽しそうに話しながら角を曲がったその瞬間に、今来たばかりの廊下を引き返させた。
彼は遠くから彼女たちを観察した。真琴は笑い、身振りを交え、会話に完全に夢中になっているように見えた。だが彼女の目…彼女の目は落ち着きなく動いていた。レーダーのように、廊下を端から端までキョロキョロと見渡している。
彼女は、彼を探していた。
◇ ◇ ◇
屋上へ続く階段は、たいてい人気がなかった。時間を潰すには良い場所だ。階段を上っていると、竜斗は上から、こちらに向かって下りてくる足音を聞いた。普段なら、彼の完全な好奇心の欠如は、何も考えずに単に引き返させたことだろう。だが今日、パラノイアが彼に上を見ることを強制した。
手すりの隙間から、彼はそれを見た。動きに合わせて揺れる、赤みがかった茶色の髪の滝。彼女だった。
彼は残りの姿を見るのを待たなかった。抜き足差し足で、今上ったばかりの階段を下り、彼女の足音に自分の足音をかき消した。下の階に隠れ、彼は彼女が通り過ぎるのを見た。今は一人だ。彼女は踊り場で立ち止まり、廊下の両側を見て、唇が不満そうに小さく尖ってから、再び歩き続けた。
狩りは、まだ続いていた。
◇ ◇ ◇
トイレのドアが彼の後ろで閉まった。竜斗は鏡の中の自分の反射を見つめた。虚ろ。無気力。疲労困憊。彼の教室は、敵対的な領域ではあるが、今や最も安全な場所に思えた。彼は、真琴がすぐにはそこに戻らないことを知っていた。彼女は学校をパトロールするのに忙しすぎた。
諦めて、彼は外に出て、自分の教室に向き直った。少なくともそこでは、脅威は予測可能だった。
彼が二年生の教室の前を通りかかった時、声が彼を呼んだ。
「三浦くん?」
彼はピタッと止まり、体が硬直した。教室のドアに立っていた少女は、オレンジがかった色の、長いストレートの髪をしていた。彼は、彼女が先ほど真琴と一緒にいて、からかうような笑みを浮かべていた友人だと認識した。夏川由美だ。
「あなた、真琴から逃げてる―」
バンッ!
彼女は瞬きする暇もなかった。一瞬の動きのブレの中で、竜斗は横っ飛びに、先輩たちの教室のドアをグイッと押し開け、中に滑り込んだのだ。
訪れた衝撃の沈黙は、ただ混乱した囁き声によってのみ破られた。竜斗は閉まったドアに背をもたせ、胸をハアハアと急速に上下させ、目を見開いていた。彼は、驚きと面白さが入り混じった表情で彼を見つめる、二年生で満員の教室を見渡した。
彼の眼差しは、猫からの必死の逃走の末、ライオンの巣穴に迷い込んでしまった、追い詰められたネズミのそれだった。
(隠れる場所がよりにもよって…ここかよ…)その思考が、哀れに、彼の心に響いた。




