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第2話「なんで照れないの?」第二部

 一日の終わりを告げるメロディーが鳴り響く。ほとんどの生徒にとって、それは次の活動への移行を意味するだけの合図だ。教室のざわめきは、リュックが閉められ、椅子がガタガタと引かれる整然とした混沌へと変わる。運動部や文化部の計画について、活気のある声が飛び交う。それは、僕が意図的に加わらないエネルギーの流れだった。(そもそも、なんで僕が部活なんて)


 いつものように、三浦は待った。自分の机に寄りかかり、彼は人の波が引いていくのを眺める。人の波を避けるための、日課の五分間の儀式。他の生徒たちの間を無理やり進むのは面倒だった。避けられない肩のぶつかり合いや、呟かれる謝罪の言葉を感じるのが。徐々に広がる静寂の方が、ずっと快適だった。(さて、家に帰らないと。夕飯の準備を…)


「ねえ、三浦くん、街の中心にできた新しいカフェ、一緒に行かない?」


 その声は彼の方へ飛んできたが、すでに義務の地図を描き始めていた彼の心には届かなかった。(…夕飯と、家の片付け、それに咲の弁当の準備。全部、賢進が仕事から帰ってくる前に。…)


「三浦くん…」


(まだ勉強もしなきゃ…咲の宿題も見てやらないと…今夜は忙しいな)


 足音が彼の思考の線を断ち切った。それは何気ない足音ではなく、重く、急いだ音。靴底がニス塗りの床を、注意を引くようにタン、タンと叩く。一つのシルエットが彼の視界に現れ、道を塞いだ。夕日が窓から差し込み、その光を捉えるかのように赤黒く染められた髪の少女が、腰に手を当てて彼を睨みつけていた。


 彼女はぐいっと身を乗り出し、彼のパーソナルスペースを不躾な自信で侵犯する。その顔は、社会的に許容される距離よりもずっと近かった。「人を無視するなんて、ひどいじゃない、三浦くん!」


 彼は瞬きをし、頭はまだその中断を処理しようとしていた。秋山さん、その少し攻撃的な姿勢と尖らせた唇を見て、ただ混乱を感じた。(待て、彼女は僕に話しかけていたのか?三浦くんにじゃなくて?)彼の目は、今や空っぽになった廊下をキョロキョロと見回した。誰もいない。ただ二人だけが、静まり返る放課後の学校に取り残されていた。


「もしかして…僕に話しかけてる?」彼は、不確かな細い声で尋ねた。


「そうよ!あんたに!」彼女は、苛立ちを隠さずに答えた。


「ごめん。三浦くんに話してるのかと…」


 意地悪そうな笑みが、彼女の顔から不機嫌さを消し去った。「ふふん、なんであたしが彼がいなくなるのを待ってたと思う?」彼女は、大きな秘密を明かすかのように言った。「それにしても…あたしのこと無視したでしょ…」


「…ごめん」その言葉は、彼がどんな状況でも使う社会的潤滑油として、反射的に口から出た。


「なんであんたはいつも謝るの?」彼女は朝と同じ質問を繰り返し、純粋な好奇心から首を傾げた。


「分からない…」彼は答えたが、それは紛れもない真実だった。


「ま、いっか」彼女は姿勢を正し、話題を変えた。「街の中心にできた新しいカフェ、一緒に行かない?」


「行けない。家にやることがたくさんあるんだ」それに、これはきっと何かの罰ゲームだろう。その考えが、冷たく論理的に彼の心に浮かんだ。(僕みたいな人間に、こんなことは絶対に起こらない。僕みたいな人間は、いきなり誘われたりしない。僕の社会的トラブル回避率100%は、単純なルールに基づいている:関わらないことだ)


「それじゃ、失礼す―」


 彼が立ち去ろうとする動きは、携帯電話の甲高い着信音に遮られた。**ピリリリリ!**一瞬の安堵。彼はそれを取り、相手を見ずに応答した。聞き覚えのある男性の声が向こうから聞こえる。『竜斗、味噌買ってきてくれ。今朝言うの忘れてた、悪い』


「分かったよ、賢進…」三浦、いや、竜斗は、諦めたようなため息と共に答えた。


「ミソ?それなら街の中心のスーパーに行かなきゃじゃん、へへ」秋山の声が、すぐ耳元で聞こえた。彼が顔を向けると、彼女は携帯の反対側に耳をピッタリとくっつけ、全く悪びれずに会話を盗み聞きしていた。彼女の近さは、頬の温かさを感じるほどだったが、彼の脳は、その日の気温を記録するのと同じ無感動さでその事実を記録した。


「スーパーに行くだけだから…」彼は通話を終えながら、彼女にというよりは自分自身に言った。


「それでいいよ!じゃあ駅まで一緒に行こ!それで十分!」彼女は、大きな交渉に勝ったかのように、勝利の笑みを浮かべて宣言した。「ていうか、賢進って誰?お兄さん?」


(賢進は兄じゃない。母さんと結婚してる。厳密には、彼は僕の義理の父で、本当の父じゃない。本当の父には会ったことがない。母さんの話では、僕がすごく小さい時に亡くなったから、何の記憶もない。でも賢進は…物心ついた時からずっと一緒にいる。僕は彼を「お父さん」とは呼ばず、名前で呼ぶけど…心の奥では、僕にとって…)


 彼は彼女を見上げ、その複雑な感情の家系図を、一つの単純な文章に要約した。


「父さんだよ」


「はぁ?あんた、お父さんのこと呼び捨てなの?行儀悪いわね!」彼女は、彼の腕を軽くポンと叩きながらからかった。


「ただの癖だよ…」彼は視線を逸らしながら呟いた。「気にしないで…」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 電車のドアがプシューと音を立てて横に滑り、乗客たちを駅の喧騒へと解き放った。竜斗はバス乗り場とスーパーへと続く右へ、秋山は左へと、それぞれ自動的に体を向けた。


「それじゃ、僕はスーパーに寄ってくから…」彼は、別れの挨拶というよりは、自分自身への確認のように言った。


「オッケー!あたしは友達と合流するから!」彼女も同じくらい自然に答えた。くるりと背を向けると、彼女は素早く、しっかりとした足取りで歩き始める。竜斗も同じように歩き出したが、人混みに紛れる前に、彼女の声が彼を捕らえた。「三浦くん、また明日ね!」彼女は肩越しに手を振っていた。その笑顔は、周りの空気を照らすかのように明るかった。


 一瞬、竜斗はためらった。それから、機械的に手を上げ、小さく、ほとんど気づかれないような仕草で手を振り返した。(どうやら、今日の背景から脇役Bへの昇格は、まだ続いていたらしい。正直、ちょっと疲れるな)


 長野県、松本市。その中心街は、本質的に田舎であるこの地域の脈打つ心臓部だった。谷に囲まれ、雄大な日本アルプスの山々が常に地平線にそびえる、静かな街。多くの地方都市がそうであるように、物と物の距離が離れている。そして、彼の家も例外ではなかった。賢進の森林警備隊員という仕事のせいで、彼らは学校から見えるあの堂々たる山の、向こう側に住んでいた。結果として、家の近くにはコンビニもスーパーも、何もない。何かを買う必要があるときはいつも、この中心街への旅が避けられなかった。ある意味、それは好都合でもあった。学校近くの店は主要なバス停から遠いが、中心街に来ればターミナルから直接バスに乗れる。それに、ここには…ここだけが、彼が本当に好きなものがある場所だった。


 彼の足は、ほとんど本能的に、一軒の専門店の前へと向かった。そのカラフルな外観は、周りの地味なビルとは対照的だった。オタク向けの店だ。彼の興味は漠然としたものではない。アニメや漫画全般というわけではなかった。カランコロンとドアベルの音に入店を告げられながら、彼はまっすぐガラスの棚へと歩いていく。そこに、彼女はいた。長い茶色の髪、馬の耳と尻尾を持つ少女のフィギュア。一本だけ白いメッシュが、彼女の顔に繊細にかかっている。(まだ君を買うお金が足りないんだ)彼は、ガラスに触れんばかりに手を伸ばしながら思った。(いつか、君は僕のものに…)


 竜斗はお馴染みの敗北感を肩に背負い、店を出てスーパーへ向かった。空はすでに深い茜色に染まり、夜の影が街に伸び始めていた。(早く行かないと、咲がうるさくなる…)


 味噌と、いくつかの安いお菓子――おそらく遅くなるであろう自分の帰宅に対する妹の機嫌をなだめるための、予防的な戦術――を買った後、竜斗はようやくバス乗り場へとたどり着いた。(やっと、家に帰れる)


 その時、彼は声を聞いた。女性の声、甲高く、パニックの色を帯びている。竜斗はさりげなく、横目で見た。そして、彼女を見つけた。秋山。彼女は二人の年上の男たちに囲まれていた。服装と横柄な態度からして、おそらく大学生だろう。彼らは彼女の道を塞ぎ、無理やり一緒に来させようとしていた。竜斗の胃の奥で、不快な胸騒ぎが渦を巻いた。(僕に何ができる?)その問いが、冷たく、合理的に彼の心に響く。(あそこに行ったら、半殺しにされる。僕には力も、勇気もない)彼は彼女の顔を見た。あれほど生き生きとしていた笑顔が、今は抑えられた絶望の仮面に変わっている。(でも、僕にはできないことも…本当にそうか、竜斗?僕が?僕に何かができるのか?)答えは、苦く、そして即座に返ってきた。(いや…僕には何もできない…)


「離してくださいって言ってるでしょ!」彼女の声が、震えながら響いた。


「なんだよ、いいじゃん。固いこと言うなって」


「俺たちと来いよ、楽しいぜ」


「嫌です!」


「じゃあ、力ずくで―」


「何かご用ですか?」落ち着いた、低い男性の声が緊張を切り裂いた。肩幅の広い、背の高い男が近づいてくる。その見た目は、長い髪を結び、スタイリッシュな服を着た、派手さと美しさの混合物だったが、その立ち姿、その眼差しには、静かな脅威を放つ何かがあった。二人の大学生はカチンと凍り付いた。


「いや、俺たちはただ…」


「彼女に用は無い、ですよね?」彼の口調は問いかけではなかった。命令だった。その声の重圧は、肌で感じられるほどだった。


「に、逃げるぞ!」


 二人は文字通り駆け出し、濃くなる闇の中へと消えていった。脅威が去ると、秋山はへなへなと崩れ落ち、膝から地面に着地した。喉の奥で嗚咽が詰まっている。その瞬間、彼女の友人たちが現れ、彼女に駆け寄り、恐怖で動けなかったことを泣きながら謝った。


「て、手伝いを呼んでくれてありがとう!」秋山は、友人たちを見ながら、しゃくりあげて言った。


「あたしたち、呼んでないよ、真琴ちゃん!」友人の一人が、困惑して答えた。


「え?」


「いやいや」男が、今度は優しく、安心させるような声で答えた。「君たちのお友達が、僕を呼んでくれたんだよ」


「友達?」三人の少女は、声を揃えて尋ねた。


「そう。君たちの友達だろ?君たちと同じ、南安曇学園の制服を着てた。彼が僕に合図して、こっちをそっと指差して、そのままバス乗り場の方へ歩き続けていったんだ。もう行っちゃっただろうけどね」


「誰だったの?」友人の一人が、周りを見回しながら尋ねた。


 男は考え込むように頭を掻いた。「短い茶髪で…少し垂れ目で、顔が…なんていうか、虚ろな感じの少年だったな」


「虚ろな顔?」友人の一人が、理解できずに繰り返した。「そんな人、知らないけど」


 友人たちは憶測を続けたが、秋山の耳にはもう何も入っていなかった。彼女の思考は、そこでピタリと停止し、ただ一つのイメージに集中していた。


 短い髪…虚ろな顔…


 彼女は分かっていた。感じていた安堵と恐怖の最中で、新たな、そして衝撃的な確信が彼女を襲った。


(それが誰なのか、はっきりと分かった)

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