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勇者が不死身すぎてつらい  作者: kurororon
第1部 勇者が不死身すぎてつらい
52/153

第24.4019936142587999……話 彼は何者だったのか


 声が

 きこえた


 どこも動かせない

 なにも感じられない

 思い出がすこしずつ消えていく

 だけど

 そのきれいな声は

 今もきこえている


 ぼくはきっと死んだんだ

 だからいろんなものが無くなっていく

 だけど失いたくなくて

 必死に思い出す


 ぼくはどこから来たのだろう

 神父様は天から舞いおりたって言ってた

 でも他のみんなは親にすてられたって言ってた

 どっちがほんとうなのか

 わからない


 ずっと神父様といっしょにくらしてた

 楽しいこともいやなこともあったと思う

 あんまり

 思いだせない

 他のこどもたちとは仲良くできてなかったと思う

 でも走るのも力くらべも魔法も

 ぼくは誰にも負けなかった

 だから神父様はたくさんほめてくれた

 ような

 気がする


 ある日

 きれいな声がきこえた

 きれいな女の人が夢の中にでてきた

 そして

 ぼくが勇者だって

 魔王をたおして世界がめちゃくちゃになるのを防ぐんだって

 そう教えてくれた


 次の朝

 ぼくは神父様といっしょに王様に会いにいった

 王様も神父様もぼくが勇者だって言っていた

 女神さまがそう言ったんだって

 きっと夢にでてきたきれいな人が女神さまだったんだ

 ぼくは自分が選ばれたことが

 とても

 とてもうれしかった


 それから

 いろんなことがあった

 みんながぼくに優しくしてくれた

 たいせつな仲間もできた

 わるい魔物をたおしてみんなを助けて

 みんながよろこんで

 すごくうれしかった

 魔王を倒すためだったけど

 とってもたのしい旅だった

 ような

 気がする


 でも

 なにか

 とてもつらいことがあった

 気がする


 いやなことはわすれちゃった


 たのしいこともどんどんわすれる


 きっとなにもなくなって


 ぼくもきえる




 でも

 きこえる

 

 きれいなこえが

 ぼくをよぶ

 

 きれいなこえが

 ずっとまえに

 ゆめできいたときよりも

 おおきく

 ちかく

 ぼくをよんでいる


 きれいな

 めがみさま


 ぼくをえらんでくれた

 ぼくをしあわせにしてくれた

 めがみさまのために

 ぼくは

 たたかいたい


 ぜんぶなくなってもいい

 めがみさまのためなら

 ぼくがきえてもいい

 

 きれいなこえが

 きこえる


 こえがするほうに

 ぼくは

 いく


 きれいなこえが

 ひかりが

 

 ――ああ

 

 うん

 たたかうよ


 めがみさまと

 いっしょに


 ずっと


 きれいなめがみさまのために


 ずっと


 たたかって

 

 たたかって

 

 たたかって

 

 たたかって


 たたかって――――――――


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