表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者が不死身すぎてつらい  作者: kurororon
第1部 勇者が不死身すぎてつらい
40/153

第21話 魔王は危険なものを懸念するのか

 危ない物を持っている奴は、あぶない。包丁を見せながら街中を歩く奴がいたらそいつの人格を疑うのは当然である。同様に、家の中に拳銃を持っている奴はちょっと怖いし、爆弾なんて持ってる奴は周囲の人間のことを考えない危険人物だと思える。

 そんなわけで危ない物をはさっさと処分するか安全な場所に保管しないとダメだぞ!



 いつもの部屋のいつものタタミの上。コタツは早くも仕舞われた。そしてテーブル越しに見えるのは膝枕してるされてるバカップル。魔王と姫様はなんというか、他人の前で恥ずかしいことをしている自覚は無いのか。ねぇな。


「ねぇ悪魔さん」

「なんだバカ」

「悪魔さんはどう思う?」


 いよいよバカ扱いもスルーですか魔王様。親密になったみたいでちょっと嫌だ。


「何がだ?」

「爆縮魔力結晶兵器のこと」


 膝枕されている金髪バカ青年が急に破壊兵器の話題を振ってくる、この奇妙な感じ!


「大魔王や女神を倒せる有力な兵器だ。使うしか無いだろ」

「だけど、本当にアレをたくさん作っちゃって良いのかな」


 いつになく神妙な顔で魔王が言った。コイツは滅茶苦茶なくせに、何故か聡明な側面を見せやがる。


「なにか気になることでもあるのか」

「うん……もしさ、人間の国や他の魔王が爆縮魔力結晶兵器の存在に気付いたらどうなるかな」

「そりゃ、その技術を盗もうとするか……いや、友好関係を築いて安全を確保するか。もしくは、使われる前に攻め込んでくるだろうな」

「友好関係は成り立たないと思うんだ。だって、ボクらの方が絶対に優位に立つから」

「となると諜報員が送り込まれるか軍隊が送り込まれるか……どちらにしろ不穏だな」

「だよね。だったら、持たない方がいいんじゃないかな、って」


 考え方としては間違っていないだろう。爆縮魔力結晶兵器は某兵器と違って人体に有害な物質を飛散させないとはいえ、街を焦土に変える力は十分にある。そんなものを持っている魔王軍を、世界は野放しにしないだろう。


「俺の世界でも似たような兵器を開発した歴史はあるんだが……」

「悪魔さんの世界ではどうしたの?」

「2つの大国が互いにその兵器を量産して、世界が滅ぶ量の兵器が出来た」

「それって危なくない?」

「ああ。片方がその兵器を使ったなら、もう片方も対抗してその兵器を使うような状態が続いた。それが加速して世界が滅ぶことは自明だったから、お互いその兵器は使えなかったんだよ」

「作った意味無いよね」


 魔王の言葉に姫様も頷いた。歴史の愚かさを異世界の住人に指摘されるのは、どうにも情けない気がする。


「結局、お互いが話し合ってその兵器の削減を進めることになった。それでもある程度は残ってしまったらしいが」

「ふ~ん……それならやっぱり、爆縮魔力結晶兵器もあんまり作らない方がいいのかな」

「かもな。大魔王と女神を倒すのには使えるが、それ以外の用途には少し威力が強すぎる」


 少しどころじゃないかもしれない。オーバーテクノロジーの領域だぜ、あれ。


「確かに使い道無いよね。戦争とかしたくないし」


 平和主義にも聞こえる魔王の言葉だが、面倒臭いとかもったいないとか消極的な理由で戦争したくないんだろうな、コイツは。いのちをだいじにとかそういう思考じゃなさそうだ!


「それに、爆縮魔力結晶兵器は保管するのも怖いんだよね」

「どういうことだ?」

「間違って爆発したら困るな、って」

「……」


 え?


「ちょっと待った。爆発しないよう、安全装置とか付いてないのか」

「もちろんあるけど、絶対じゃないよね」

「つまり、何かの間違いで保管してある爆縮魔力結晶兵器が暴発して、魔王城が消滅する可能性があるってことか?」


 やべぇ。


「魔王城には保管してないから大丈夫だよ。大魔王様も女神様も魔界にいるわけだし、作るのも原料がある魔界の方が良い」

「ああ、女神って魔界にいるのか」

「知らなかったの?」


 うん。


「なんにしても、魔界で保管してるなら安心だ」

「安心なのは悪魔さんだけだよ……もし魔界にあるボクの領地で爆発したら大変な被害だし、他の魔王がそれに乗じて領地を奪いに来るかもしれない」

「なるほど、大魔王と女神を倒してる場合じゃなくなるな」

「だからやっぱり、大魔王様と女神様を倒すのに全部使った方が安心かもね」

「だな」


 危険物を保管するのは大変ということか。全部使ったとしても、この世界で大魔王と女神以外にこの魔王に勝てる存在などいないだろうから、特に問題は無いだろう。


「ホント、大魔王様と女神様を倒すのは大変だよ……」

「文句を言うな。倒せる可能性があるだけでも、運が良かったと言えるんだからな」

「そうだけどね……強大な存在って、本当に迷惑だよ」

「……」


 いや、この世界で今一番強大で迷惑な存在は多分、お前だからな!


「やだね~、姫~」


 膝枕に頭を擦り付けながら魔王が姫に甘える。嫌なのはお前だ、お前だからな!


「平和でのんびりが一番だよ、うん」


 それを脅かす危険物を作ってるのはお前、お前なんだよ!?


 大魔王と女神が倒れても、このバカのせいで世界が滅亡しそう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ