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勇者が不死身すぎてつらい  作者: kurororon
第2部 勇者が不条理すぎてつらい
136/153

第72.5話 特別編『勝田是ガールズと秘密基地の部屋・番外編「フォトン・バカ」』

 ここは皆さんご存知の勝田是ガールズの溜まり場、超喫茶「フォトン」である。

 人気メニューは遠赤外線調理パンケーキと紫外線キャッサバミルクラテ。オシャレでナイスーな女の子に話題のお店なんだ。


「そういえばマモさん」

「何かしら愛華さん」

「この前テレビで知ったんですけど、カルテットって4人組って意味だったんですね」


 ガバッ、という音が出るくらいの豪速で揚巻ちゃんと咲夜が衛を見た。衛は気まずそうな顔になり、茜は何も聞かなかったフリをしながらタピオカミルクティーをぐびぐび飲む。


「どういうことだよ、オイ……」

「落ち着いて、咲夜さん」

「これが落ち着いていられっか! アタシたちのチーム名を決めたの、マモだろ!?」

「この中に一人、プリティ・マジカル・カルテットじゃない魔法少女がいるということね」


 茜の言葉に、愛華と咲夜は揚巻ちゃんを見た。


「え、あたし?」

「……ふざけんなよ、マミ!」

「本当に落ち着いて、私は衛よ。マモさんよ」

「マモさん、本当に揚巻ちゃんを仲間外れにしているの……?」

「誤解よ、愛華さん。私がそんなことするわけないじゃない」

「ギャバヘッドバブフラワー!」

「お客様、他の方のご迷惑となりますので、申し訳ありませんが変身はおやめ下さい」

「あ、すみません」


 店主に諫められた揚巻ちゃんは人間に戻る。


「他に客なんていねぇじゃねぇか」

「あぁ? やんのかクソガキ?」

「やめてよ咲夜ちゃん。すみませんでした」

「いいのよ愛華ちゃん。私もそういう頃があったもの。思い出すなぁ、チェンソーで悪者を倒してさぁ」

「コイツ、警察に通報しなくていいのか?」

「やめときなさい。きっと時効か、さもなくば余罪が増えるだけよ。私たちの命でね」

「いやだわ、もう。証拠が無ければ犯罪じゃないのよ」

「これ以上追及するのは危険よ。話を戻しましょう」


 茜の言葉に、愛華、咲夜、元半魚人の3名は衛へと向き直った。


「それでマモさん、どうしてカルテットなんですか? 5人組を英語でどう言うかわからなかったんですか?」

「5人組はレンジャーに決まってんじゃん!」

「違うわ」

「5人組はクインテットよ、咲夜さん」

「知ってんならどうしてホーンテッドにしなかったのさ!」

「ピキャバッチャガガジー!」

「お客様」

「すみません、つい」

「貴女ってほんとバカね」

「あんた、相変わらずムカつくわ~」

「やめなよ揚巻ちゃん、茜ちゃん。仲良くしないとダメだよ」

「愛華がそういうなら、仲良くしましょう」

「あんたさぁ、急に満面の笑みになるの気持ち悪いんだけど」

「それより、どうしてマモさんが揚巻さんを仲間外れにしたか、その理由を聞きましょう」

「……違うの」

「何が違うのかしら?」

「揚巻ちゃんは、カルテットに入っているわ」


 喜びの雄叫びを半魚人が上げ、店主のメニュー手裏剣が頭のトサカを切り裂いた。

 痛みに暴れる揚巻ちゃんだったが、彼女は治癒の力が強いのですぐに傷を治し、大人しく椅子に座った。


「ちょっと待てよ、オイ。コイツが仲間外れじゃないとしたら、あとは……一人だけ学年が違うマモか?」

「自分から仲間外れになるなんて、そんなの絶対おかしいよ」

「違うマモよ」

「だとしたら、咲夜かしら。転校生だし、年上のマモさんに敬語も使って無いマモね」

「昔なじみだから敬語なんて必要ないのさ。なぁ、マモ」

「……」

「マモ! アタシはカルテットだよな!?」

「言葉づかいには気を付けて欲しいけど、あなたもカルテットよ」

「やったマモー!」

「そうなると……まさかマモさん、貴女、愛華を……」


 茜が左の手のひらに出現させたリリカル人面疽を衛に向ける。


「やめ、やめて茜さんっ! わかった、正直に言うわ。カルテットに入れてないのはね、茜さん。あなたなの」

「…………ふぇ?」


 予想外の言葉に、茜の表情と人面疽がふにゃふにゃと脱力した。


「どうして茜ちゃんを仲間外れになんてしたんですかっ!?」

「愛華が私のために怒ってくれてる……ウフフ……」

「その……本当にごめんなさい。実は私、人面疽が苦手で……」

「そうなんですか。それじゃあ仕方ないですよね」

「愛華!?」

「バッキャオスバッバー」

「お客様」

「はい、すみません」

「ちょっと待った。半魚人は大丈夫なのかよ?」

「可愛いから良いのよ」

「いや~、やっぱり揚巻ちゃんは超絶美少女ってことですな~」

「あまり調子に乗らないでくれる?」

「怒んなよ、茜。アタシはその人面疽、別に嫌いじゃないからさ」

「私も怖くないよ。でも、怖いって言う人がいるのも仕方ないと思う」

「あたしはあんたに興味無いからどうでもいいんだけど、いつも助けてもらってるし、その、ベラッキャボギー!」

「お客」

「マジカルすみません」

「みんな……ありがとう」

「私はごめん、無理。生理的に無理よ」


 茜の人面疽がマモさんの時間を魔法で操作する。


「マ、マモさん、顔が大人っぽくなってるよ!?」

「や、やめて茜さんっ!! 今度からちゃんと5人組にするからっ!」

「……約束よ」

「あっ、顔が元に戻ってる。やっぱり優しいね、茜ちゃん」

「ウェヒヒありがとうウェヒヒ」

「やっぱコイツやべーな……仲間外れでもいいんじゃねぇか?」

「咲夜、そんなこと言ってると次はあんたが歳を取らされるわよ」

「そいつはごめんだね。いっそマモを仲間外れにすればいいんじゃないか?」

「マモさんは悪くない! 悪いのは人面疽を受け入れられない闇のマモさんの方だっ!」

「闇のマモさんって誰だよ……」

「とにかくみんな、今度から私たちは『プリティ・マジカル・カルテットと人面疽クソ少女』の名前で活動するわよ」

「おー! ってちょっと待てよマモ!?」


 マモさんの頭部がみるみる時間経過し、30歳くらいの見た目になる。


「ごめんなさいごめんなさい! クインテット、クインテットにするからっ!」




 俺は本を置き、一息つく。

 …………なんでこんな本読んでんだ、俺。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] ......なんでいうかすみません。 いえ、確かに、確かに『魔法少女じゃなくて半魚人みたいなのに変身する体質になったからって(中略)』とは書いていましたけど......ごめんなさい。 で…
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